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短編SF小説「壁に向かう」

 私の父はYouTuberだった。私が父の姿で覚えている一番古い記憶は、父が誰もいない壁に向かって熱心に何かを話している後ろ姿だ。

 今にして思えば、壁に立てかけたカメラに向かって話しかける動画を撮影、あるいは、ライブ配信をしていたのだろう。

 おかげで私は、人というのは、大人になったら誰もいない場所に向かって話しかけるようになるものなのだ、と思って育った。小学生になる頃には、大抵の大人はそんなことしない、と気づいたが。

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