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「町内会加入率の低下」を疑ってみた。

 まちづくり活動支援者界隈では、「町内会加入率が下がっているから向上させるべきだ」という話題は、日常的に聞かれるところであるし、各自治体でも様々な支援策を行っていることはよく知られている。

 一方で、この町内会加入率というものの扱いをどう考えるか、という話は議論の種にもなってきた。そもそも加入率を明らかにする試みといっても、その調査は町内会長へのアンケートという、かなりバイアスのか買ったものになりがちで、実際問題その地域に住んでいる人のどれくらいが、いわゆる町内会という組織に加入しているのか、あるいはしていないのか、ということはあんまりよくわかっていない。なので、この加入率低下という命題も、果たして日本全国どこでもそうなのか、それとも違うのか、そうだとしていつからなのか、ということは実はよくわからないことが多い。

 例えば、全国の町内会に調査を行った辻中豊 他『現代日本の自治会・町内会-第1回全国調査にみる自治力・ネットワーク・ガバナンス』木鐸社(2009)によれば、町内会をその設立時期と地域に応じて、村落型、非都市新型、都市旧型、都市新型4つのクラスタに分けて説明しているが、いずれのクラスタでも加入率は90%~100%と回答しているところが最も多い。加入率、低くないじゃん。そんな中でも、80%未満の加入率だと回答するケースもあるが、村落型(6%)、非都市新型(10%)、都市旧型(20%)、都市新型(20%)と全体で見れば少数派だ。加入率低下は明らかに都市部の現象として見ることが出来る。

 加入率という数字をどう考えれば良いのか。そもそも町内会という組織体の状態の把握にあたって、加入率という数字が適切なのか。

 同じような疑問を持った人はいないのか。探してみた。例えば、善教将大『政治参加としての自治・町内会参加者の実証分析─ なぜ自治・町内会活動への参加者は増加したのか─』は、以下のように記している。

いくつかのデータはこのような「常識」とは逆の「現実」があることを明らかにしている。たしかに、戦後期と比較すると現在の自治・町内会活動への参加者は減少しているかもしれない。ところが、今日における自治・町内会活動への参加者は、1980 年あるいは90 年代のそれと比較すると、減少しているどころか逆に増加しているのである。その他の参加形態への参加率が停滞ないし減少傾向にある中で、なぜ自治・町内会活動への参加者のみ増加しているのか。
 本稿は、この自治・町内会活動への参加者の増加の原因を、自治・町内会活動の内容の質的な変化に求める。すなわち、自治・町内会の活動内容が、行政の下請け事業のような活動のみならず、地域における問題を解決するような活動も行うように変化したことによって、自治・町内会活動への参加者が増加したと考える。

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 つまり、加入率はよくわからないが、町内会活動への参加率は、2000年代に入ってから急激に向上している、というのだ。活動への参加率を見る限り、町内会の市民への求心力が下がっているようには見えない。

 むしろ、90年代以前は町内会への参加率は10%そこそこと、極めて低かった。かつては高かった求心力が年々下がっている、という「神話」を信じる我々からすれば、意外なデータではなかろうか。この点について以下のように説明されている。

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