大好きって、言ってみて



サークルの先輩へ送る色紙に、先輩のことが大好きです、と書かれていた。

私の一つ上の女の先輩から、私の二つ上の男の先輩へのメッセージ。


私は、その大好きです、という言葉に、ちょっと動揺してしまった。

こんなオープンに、大好きですなんて言っていいの、という気持ちと。

それが、恋心じゃありませんように、と願う気持ちと。


私は、一つ上の女の先輩が大好きだった。

でも、もしそれが恋心だったら、素直に応援できない気がした。

まだ、その頃の私は、自分の恋心に気づいていなかったけれど。


送る会が終わって、帰る途中。

色紙を受け取った先輩と、帰り道が同じだったから一緒に帰っていた。

大好きですって、ちょっと軽いよね。と先輩は言う。
もらったばかりの色紙のことを言っているんだな、と思いながら、どうしてですか、と尋ねる。

大好きです、は誰にでも言えるじゃん。
好きです、は本当に好きな人にしか言えないよ。

と言われて、ふーん、そういうものなのかな、と私は半分納得する。

恋愛に興味がなさそうに見えるこの先輩も、そういう恋愛感情の機微を理解できる人だったのかと、ちょっと意外にすら思った。

でも、納得していない半分は、そうは言いつつも、きっと嬉しいんじゃないかなって、ソワソワしていた。


その人に、私が好きですと言う日が来るとは、思いもしてなかった。

好きだと伝えてから、かなりの月日が流れたけれど、彼はいまも私に対して大好きとは頑なに言わない。

大好きは軽い、と言って。


私は、そうかなぁと納得できずにいる。

だってさ、大好きは、好きよりも、もっと好きってことだよ、と説明する。

ちがうよ、好きが一番上で、大好きは軽いんだよ、と彼は言うから。

私は、大好きだけど、大好きって言わない。


でも、彼は、たくさんお願いすると言ってくれる。

ものすごーく、照れながら。

ふむふむ、これは気軽に言わないからこそよいのかもしれない、と思う。


さて、次はいつ大好きをおねだりしようかな。