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7/1、フライドポテトは正義

 今日は出勤日であった。8時半過ぎに会社へ着くよう最寄り駅に向かうと、エスカレーター付近からすでに人の多さを感じる。ここ最近にないほどの、混雑の気配。明らかに先月より乗客が増えている。7/1から平常運転に戻そう、と決めた企業が多かったのだろうか。それにしたって画一的だ。

 ちなみに私の勤務先は、ここのところの感染拡大も踏まえ、引き続き在宅勤務を継続することとなった。当番で出る必要はあるのだが、それでも毎日通勤しなくて済むのは世間的にはマシな方なのかもしれない。

 この日は第一営業日の繁忙でスケジューリングに失敗してしまい、ランチ時間をしっかり確保できなかった。おまけに、久しぶりにたくさんの人と直接会い、さらにはスピーカーとなる機会も多かったためかすっかり疲弊しきった。

 決して人嫌いではないけれど、がっつり向き合うのはどうも苦手……。社会人になって20年もたつのに何を言っているのか、とお思いでしょうが、そういう社会人もいるのです。そしてそういうの、わりと隠しながら仕事をそこそこきちんとこなしている人、世の中には多いと思うのです。だから定期的に疲れが溜まるという、無限ループに陥りやすい。さすがに社会人歴もベテランの域に達し、セルフコントロールの術も身についてはいるけれど。

 帰りの電車で、何を食べようかなあと巡らす。自分を喜ばせる方法なんて簡単だ。こんなときは思いっきりジャンクにいきたい。うーん……フライドポテト一択だな! マックでテイクアウトだ! ついでにサイドメニューのハンバーガーも買っちゃおうかなあ(って、こういう人もそこそこいますよねきっと)。

 私はフライドポテトがものすごく好きである。しかし夫から、ジャガイモは野菜じゃない、と言われるため普段は食べるのを我慢している。だから、食べる理由が見つかったときはかなり嬉しい。買いに行くまでの道すがらもつい浮き足立ってしまう。まあ、大人なので好きなときに買っても良いとは思うのだが、たまに食べるからこその良さもある。

 振り返ると、フライドポテトとの距離が縮まったのは大学生のころだ。比較的遅いファーストフードデビューである。それ以前にももちろん行ったことはあったけれど、「マックでも行く?」みたいなノリで気軽に何度も足を運べるようになったのは当時、友人がマックでアルバイトをしていたからだと思う。あのころは本当によく食べていた、フライドポテト。Lサイズを2人ではんぶんこして、いつまでも喋り倒していた。

 幼少期はファーストフードというものに、ほとんど連れていってもらえなかった。覚えているのは5歳くらいのころ、母と病院へ行った帰りがけにマクドナルドに寄って、ハンバーガーとポテトを食べたこと。そのお店の敷地内にすべり台やらキャラクターの遊具があり、ちょっとだけ遊んでみたが道路から丸見えなので恥ずかしくなり、そうそうに席に戻ったこと。
 なぜ鮮明に記憶しているかというと、後にも先にも、その1回しか連れていってもらっていないからである。人って、嬉しかったたった一度の出来事は、何十年たっても覚えているものだ。

 ずいぶんしょうもない思い出なのですが、ドナルドの絵がプリントされたビニールのバッグ(紐付き)をもらったことも覚えていて、私は初めてのファーストフード体験にとにかく興奮し、そのビニールバッグを畳んで大事に持ち帰った。たしかそのバッグの中にハンバーガーとポテトが入って提供されたような気がするのだが、さすがにうろ覚えである。80年代半ばのメニューなので、もはや頼りは自分の記憶しかないのだが、これ、わかる方いるだろうか。ネットで調べてみたけれど、ビンゴ! と言える情報はキャッチできなかった。昔のメニューを調べられるサイトがあれば、確かめてみたい。

 その後、ことある毎にマックに行きたいと頼んでみたが、母が連れていってくれることは二度となかった。かなり昔の人間なので、慣れないスタイルの食事であることや、添加物とか身体に良くないとか、おそらくそういう固定観念があったのだと思う。ずいぶん年を取ってからは、私がテイクアウトしてきたハンバーガーを喜んで食べるようになったので、時代の流れを受けて多少は柔軟になったのかもしれない。

 フライドポテトを食べると、そういった結構しょうもないことをしみじみ思い出すのだが、やはりいつ、どんな状況で食べてもこのうまさは正義だよなーと感心する。

 もちろん世の中にはもっと美味しい食べ物だって存在するけれど、例えば仕事で疲れてフラフラになって、頑張った自分の空腹を満たしてやりたいが、早く家に帰って寝る時間も確保したいし……というときに、もしもドラえもんがいて、のび太的な私に四次元ポケットから出してくれるとしたら、それは間違いなく揚げたてのフライドポテトなのである。

 そんなこんなで、CMで知った大塚のMicroMagic(レンジでチンする~のアレ)、スイミングスクールの帰りに見かけたハンバーガーの自販機で売っていたポテト、懇願したけど結局買ってもらえなかった。幼かった私にはどれも叶わなかったのだ。

 頑張ったと認めたいときにふと、自分で自分にフライドポテトを食べさせてあげたくなるのは、幼いころの嬉しかった体験と、なかなか口にできなかった故の憧憬が入り交じった食べ物だからかもしれない。

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