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野に、咲く。16

野に、咲く。 第十六話

「ゴリラ屋事件2」

前回のあらすじ 小学3年生の夏休みに爆竹をバラして遊んでいた僕は

人差し指と親指の爪を負傷、近くにある商店のおばちゃんに処置してもらったが

絆創膏2枚で200円を支払うことに‥


同級生の木戸も店の前で爆竹を鳴らしたということで200円払わされた。

無言のまま西陽に照らされた暑い日のことだった。

その夜、僕は計画した、 ゴリラ屋襲撃作戦を。


次の日、朝から木戸を呼び出し計画を話すと(木「怖いよぅ、やめとこう」

(僕「お前、200円取られて悔しくなかんな?」(木「全然、、あのおばちゃん怖いし」

怖気ついた木戸を説得し、人手がいるため公園などに行きゴリラ屋を襲撃するメンバーを

スカウトしに行くと、出るわ出るわ、ゴリラ屋に恨みを持った同級生たちからの証言が

(A「俺もあのおばちゃんから怒られたことある、店の鉛筆落としたら中の芯が折れたから、買えって!」

(B「お店の中で塗りたてのセメント踏んじゃって、1000円払わされてゲンコツされた」

(C「取ってないのに万引きしたって言われて親まで呼ばれて、お母さんが怒鳴らた
親が怒鳴られるとこ見るのが辛かった‥取ってないのに。」

キリがないくらいみんな被害に遭っていた。

その中から今回のゴリラ屋襲撃作戦で使う道具を買うために資金を

総額で8,000円ほど集めた、 襲撃メンバーと資金を手に入れた。

花火購入班と竹切り班に分かれ、計画を進めていった。

ホームセンターでロケット花火を買えるだけ買い、竹林へ行き細身の竹を数十本切り

その後ゴリラ屋前の公園にメンバーが集結した。


ここで「ゴリラ屋襲撃計画」についてご説明しよう。

まず竹の節を鉄の棒などで貫通させ公園のブランコの柵に斜めに固定し

ロケット花火の発射台を作る。 ずらっと並んだ竹製の発射台にロケット花火を設置

手持ち花火で次々と点火させて連発のロケット花火をゴリラ屋目掛けて集中射撃する。


僕以外の同級生は公園の遊具の裏に隠れ、今か今かと待っている。

首謀者は僕だが、皆に最初の勢いはなく怖気ついた様子。

昼の一番暑い時間、照りつける太陽と大合唱の蝉の声、武者震いする僕とは

正反対に、今から起きる出来事にビビってしまい木戸は泣いてしまった。

泣き顔を見て僕は、一年前の冬の火事を思い出していた。



燃え盛る建設中のマンションを見て木戸を始め皆、号泣していて警察や消防の人たちが

呼ぶ方へ皆で走っていくと、僕だけ殴られた。 皆は保護され親たちと共に車に乗り
話をしていた。

火の熱とオレンジ色の灯りの中、消防と警察にひたすら殴られ叩きつけられ蹴られた。

鼻血を出しても口が切れても腹を殴られて息ができなくても、二人をずっと睨んでいた。

「鬼の子が、、、不吉やからって風呂場に捨てられたとやろ!」と警察が言う

噂とは怖いもので離島から福岡に引っ越しても情報は流れるもので、

(消「悪いことしたとやけん、ごめんなさいやろ?泣くまで叩くぞ!」

僕は唾を顔に吐き、(僕「なくかーーー!」と叫んだ後、さらに殴られた。

僕が原因で火事になったマンションは建設中ということもあり誰もおらず周辺も空き地だったので、けが人や被害者などはいなかった。


その後、保護司の林さんが警察まで来てくれて
(林「痛かったねぇ、冷やしてやるけんね、  子供相手に大人が二人がかりでもうよかやろ、俺が連れていくけん」

林さんは僕をおんぶして家に連れて行き、泊めてくれた。

何も聞かず打ち身の箇所を冷やしてくれて、どん兵衛を食べさせてくれた。

すする、だし汁は傷だらけの口に滲みることはなかったが、

あったかいどん兵衛と林さんの優しさが、       


痛い。


つづく



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