![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/112994223/rectangle_large_type_2_5cca370e80d09fa16f9e467bd03709c8.png?width=1200)
野に、咲く。17
野に、咲く。 第十七話
「ゴリラ屋事件」完結
ロケット花火は発射台に設置完了し、何が起きても自分らには関係ないと
公園の隅に隠れて見ている同級生たちと、泣きじゃくる木戸を見て
一年前の出来事を思い出した僕は手持ち花火をじっと見ていた。
大人たちはいつもぼくに聞いた。「なんでこんなひどいことした?」
「なぜ、問題を起こすの?」「どうして、ひとに迷惑をかけるの?」
いつもこの問いに困る、、、理由は、特にないからだ。
人を困らせようとして、する訳ではない。遊んでたらこうなったのだ。
なぜか理由がすきな大人たちにはもうウンザリだが、お前らのお好み通りの答えを言って
終わらせてやろう。
『ゴリラ屋のババアには罪はねぇ、ただこの襲撃はあくまで僕の、いや俺の個人的
復讐に過ぎない。許せババア お前の罪は俺が裁く!!!!』
と、心の中で叫んだか叫んでないかわからないが、点火した。
ヒューン、ヒューンと言いながらロケット花火はゴリラ屋目掛けて飛んでいく
商店の入り口から店内に、住居にと次々に打ち込まれていく。
ロケット花火の数はなんと500本、甲高い音を鳴らしながら休む間もなく打ち込まれていった後
けたたましく破裂音が鳴り響いた。
騒然となるゴリラ屋前の公園には、やはり泣き叫ぶ木戸、隅に隠れて見ていた同級生たちは逃げ去った後だった。
(木「逃げよう! また捕まったら殴られるよ(泣)」
やったのは僕だとバレるに決まっている、やってなくても僕のせいにされる。
すぐチクる、自分だけを守るために、あいつらみんなそうだ。裏切るための友情に
なんの意味もないのに、群れたがる。
引っ張って僕を連れていく木戸は「夏休みなくなるから」と言い一旦引くことにし
その日は施設に帰った。
次の日は登校日で学校へ行くと、そそくさと逃げていった同級生たちがまるで自分たちの
武勇伝のように昨日の襲撃を教室で話していた。
(同「おい!先生にバレたらどーすっとや?」(僕「お前らは逃げたから関係なかろが」
彼らは何も言い返せず、校庭で平和集会が始まる。
灼熱の夏の日に校庭での集会は地獄、平和の歌を歌っていると蜃気楼の奥から学校側に歩いてくる人影が見えた。
ゴリラ屋のおばちゃんが‥‥ 来た。
僕の夏が終わった‥ 殴られて怒られ、また保護司の林さんちに通う日々が始まると悟った。
(ゴ「‥あいつ!!!」ゴリラ屋のおばちゃんが僕に指差しそのまま職員室へ連行され
警察、消防、が来て親も来て、いろんな大人たちが来て長い時間が過ぎた。
連発のロケット花火はゴリラ屋を集中射撃し、店内、住居で破裂、その際に傘立てに刺さった花火から出火、
木戸と僕が逃げた後に騒動となりゴリラ屋のおばちゃんは怒り狂っていたとの事
復讐であれ多くの人に迷惑をかけた僕は転校という処分で福岡の学校を去ることになった。
あれから40年近く過ぎた今もあの夏の日のことを忘れたことはない。
反省や後悔などという綺麗事ではなく、最後まで自分を信じてくれた保護司の林さんと
泣きながら僕を守ってくれた木戸にありがとうと言えなかったことを。
ほとばしる汗と高く青い空が記憶を蘇らせる。
つづく
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?