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『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

友人が便りの中で、よかったよ と言っていたので手に取った。

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いわゆる " エリートコース " を選ばず、地元の元底辺中学生に通い出した息子の、身の回りで起こること、それに対する思索と選択がストーリーの主軸。それらが母である著者の視点で切り取られている。タイトルの「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」も、息子のノートの落書きを著者が見つけて拝借したものだ。
舞台はイギリス、著者は福岡出身の日本人、令和3年発行。

中学生らしい情緒や価値観、立ち止まって考える姿、前に進んでいく姿には、リアリティがあって、未来があって、こちらもなんだか謙虚な気持ちにさせられる。無数にあるうちの確かにあるひとつの事実として、人種差別、格差社会など、昨今よく耳にする世界的な社会問題の一側面を感じ取れる本だ。
イギリス特有の制度や事情を具体例とともに説明してもらえるので、迷子にならず話に入っていける。帯や解説に「親子で読みたい」と書いてあるのも納得。
勝手に長編作品だと思っていたので、ジャンルがエッセイで少し拍子抜けしたけど、(「60万人が泣いて笑って感動した」の謳い文句も共感できず、、)いろんなテーマが散りばめられていて読み手の思考の余白は大きいと思う。

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個人的には無知は罪なり〜など大層なことは思わないし、むしろあらゆる一個人と可能な限りフラットに接していたいくらいに思っているけど、知らないことが原因でだれかを傷つけたり、要らぬ論争を引き起こしたりするのは嫌だし、分かり合えるチャンスを減らすのはもったいない。

知るということが課題解決の第一歩ともよく聞く。

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「知ること」、それから、「誰かの靴を履いてみること」←作中より。英語の言い回しらしい(Put yourself in someone’s shoes = その人の立場で考えること)、面白い表現だなあ


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