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生成AIとCAE

 noteを始めて、この2月で1周年となります。月イチペースを目標に記事を更新してきましたが、気がつけば今回を含め26本。計画比200%以上と、まずまずの進捗だったようです。ほとんど愚痴ばかり書いてきたような気もするけど(汗
 
 記事のなかでもっとも多く読まれたのが生成AIに対する警鐘というか、ぼやきと言うかをつらつら綴った「生成AIとCAD」という記事。

 AIに仕事を奪われそうな業種の中に「CADオペレーター」も含まれているそうで、気にされている方が多いという事でしょうか。どうやらnoteのユーザー以外からのアクセスが多いようで「いいね」も非会員の方から幾つか頂戴しています。
 
 昨今、巷を賑わせているのが「AI失業」なるワード。生成AIの台頭で、主にホワイトカラーの何割かが職を失うというものだ。指摘されているのは作家・イラストレーター・漫画家・音楽アーティスト、果てはグラビアアイドルなど、これまで羨望を受けてきた職業に対して警鐘というか当てこすりを文章にしている。生成AIの進歩は確かにそれを感じさせるものだけれど、なんというか夢がない。どうせならヒトのできない領域へ進出して欲しいところだけれど、何故にイヤガラセのようなところにしか浸透して来ないのだろう?
 
 この最新のテクノロジーに対して、私には期待している分野がある。
 CAE、構造解析の機械化である。
 
 実はCAE、ノウハウと応用事例のカタマリで一朝一夕には身に着かないのが悩みのタネとなっている。これこそコンピューターを利用した支援システムなのだから、AIとの親和性が高いだろうし是非とも開発していただきたい。なにしろ計算精度を追求するあまりに条件付けが複雑になってしまい、どうにもまとまりに欠いているのが現状なのだ。
 
 CAEはソルバーと呼ばれる計算プログラムの中に厳密な方程式が組み込まれていて、作業者は正確なモデル情報をソルバーに伝える事で正しい計算結果が返ってくる、と思われがちだが実情はそうではない。条件のモデル化にはコツがあって、正確な情報どころか場合によってはソルバーのご機嫌にあわせて内容を改変しなくてはならなくなる。カット&トライの繰り返しの中で、エンジニアは正解に計算結果が近づくよう解析モデルを組み立て直す必要に追われるのだ。

 厳密な方程式なんてモノは、実際のところ世の中には存在しない。例えば、皆さんよくご存じの「万有引力の法則」について考えてみよう。

 万有引力の法則とは、17世紀にアイザック・ニュートンが発見した物理法則です。 
 F=G・Mm/r^2
万有引力の法則は単純な式で、質量をもつ物質間に働く力を計算で導き出すことを可能にしましたが、新たに大きな謎も残しました。

・この力はどのように伝播するのか?
・質量とはいったい何なのか?

万有引力とは、物質が視えない何かで繋がって互いを引き寄せるという、目の前で当たり前に行われているがとても不思議な現象だったのです。
 
 20世紀に入って、その謎を解き明かす人物が登場します。アルバート・アインシュタインです。
  Gμν + Λgμν = κTμν
アインシュタインは質量とはエネルギーの塊で時空を歪ませる作用があり、この時空の歪によって物体は引き寄せられるように近づいていく、という理論を導き出しました。アインシュタイン方程式と呼ばれています。
 
 と、言うことはニュートンの万有引力方程式は厳密には間違っていて、アインシュタイン方程式で計算した方が精度の高い計算結果が得られるんじゃないか?と考えられますが、21世紀の現代においても変わらず万有引力方程式は用いられています。何故って、この方が簡単に計算できるから。しかも誤差の少ない結果を、です。
 
 万有引力方程式とはいわゆる「近似式」で、計算精度を「万有引力定数」と呼ばれる補正値で補っているのです。似たような事例はたくさんあって、例えば
 
 摩擦による力 F=μN:μは摩擦係数、Nは抗力
 バネによる力 F=kx:kはばね定数、xは伸び
 
などの物理現象も近似式による計算が使われています。

 有限要素法:FEMもまた正確な運動方程式ではなく、オイラー法と呼ばれる近似解の計算手法が使われています。
  F = k・X 
Xとは剛性マトリクス、即ち行列演算です。これこそ計算機が得意とする分野なのです。
 
 FEMがオイラー法による計算手法であるなら、オイラー法の特性もまた色濃く受け継いでいます。
 
 陽解法:前進オイラー法
 陰解法:後進オイラー法
 
 FEMを扱うエンジニアなら陽解法・陰解法と言う言葉を耳にしたことがあると思いますが、これはオイラー法から引き継いだ言葉です。それぞれの計算の特徴が解析結果に反映されます。

 ・陽解法は結果が発散しやすい。しかし微少時間の振る舞いを観察するには適っている。動解析に向いている。
・陰解法はSTEP毎に計算収束するので誤差が少ない。しかし収束条件がセンシティブな場合、扱いにくい。静的問題に向いている。
 
 ケースバイケースでソルバーを変え、尚且つ収束条件となるようにモデルをアレンジする。組み合わせは多岐に渡り、見つけにくいエラー要素もしらみつぶしに炙り出す。ケアレスミスもあればせん断ロッキングなんてイミフな不都合とも格闘しなきゃならない。やっと計算収束するモデルを見つけたら、今度は計算結果の整合性を吟味する。

 存外、ムズカシイ事のようですがコツさえ掴めばルーティン作業となります。但しノウハウを積むのに時間がかかる。一人前のCAE技術者になるには5年は覚悟、なんてことも言われています。トーゼン人材育成にそこまで時間をかけていられませんから、ナカナカ手が出せずに悶々としている企業も多いのではないでしょうか。

 これらをまとめ上げて対話形式で最適解へ導いていく、そんな便利なツールがあれば皆さん飛びつくと思うのです。さらに習熟度に合わせてテクニックの底上げもしてくれたら、もう最高!
 
 生成AIだったらきっと、それができる筈だよ。ムズカシイことを機械がやってくれれば、ニンゲンはCADで図面引くくらいのお手伝いはしますから。
なるべくカンタンな方をやらせてくれよ、ねぇってば?(笑

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