見出し画像

⭐️音楽は時間芸術

例えば発表会でピアノを弾く時、
ステージに一歩足を踏み出したその瞬間から
音楽は始まる。
「静かな曲から始まる時は、その曲の雰囲気を
まとって静かにステージ袖から出ていくの。
鍵盤に手を置く時も、そうっとね」
と、以前先生から教わったことがある。

そして、最初の一音を出した瞬間から
もう後戻りは決して出来ない。何があっても
最後まで歩みを前に進めなければならないのだ。

音楽は常に時間と共に流れてゆく。
音楽家は本番のたった何分かのために
何ヶ月も何年も前からこの日のために毎日地道な準備を重ねてくるのだ。
その点では夏のオリンピックのアスリート達と
全く一緒なのである。ある一点を目指して日々努力するのみだ。

そして、音楽には必ず終わりがくる。
終わりがあるからこそ、そこまでの物語が愛おしく、時に切なく魅力的なのだ。

茂木健一郎氏は著者『全ては音楽から生まれる』で次のように述べている。

〜私たちが音楽を愛するのは、それが生命のあり方に似ているからだろう。ある場所と時間のうちにしかそれは成立しない。片時も留まることなく、常に変化し続ける。時には、ひそやかに伏流して、やがて大きくふくらんでいく。
そして、最後の響きが鳴り終える時に、音楽というかけがえのない体験は終わりを迎える。私たちの命も、同じである。いつかは終わりがくると判っているからこそ、その途中の道筋で出会う美しいハーモニーや、軽やかなリズムが愛おしいのである。(p.186)

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?