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⭐️大人のピアノとの向き合い方③〜暗譜が出来なくなってきたら…

 学生時代の私は、一つの曲を練習して最後まで弾けるようになった頃には自然と暗譜も出来ており、発表会で暗譜で弾くのが不安だという気持ちはさほどなかった。

 それが今は時間をかけて練習をし、弾けるようになった段階から、更に様々な角度から〝覚える“という作業を行わねばならない。これまた時間がかかるのである。
十分練習をし、時間をかけて暗譜の練習も完璧にやったと思っていても本番でミスをすることもある。〝暗譜で弾かねばならない“と思うだけで体はこわばり、緊張は高まる。

 これは私だけに限る問題ではなく、大人の生徒さんも皆、初めて発表会に出る際、必ずと言っていいほど「先生、本番は暗譜なのでしょうか?」と最初に質問する。私は「大丈夫ですよ、大人の方は皆さん楽譜を見て弾かれますよ」と言うと、決まって皆さん「良かった〜」と安堵の笑みを浮かべる。

 子ども時代は楽に出来ていても、年齢がいってからはそう簡単に出来ない事も当然あるのだ。
ピアノ演奏に関して言えば〝暗譜“がそうである。

 室井摩耶子氏も著者「毎日、続ける〜97歳現役ピアニストの心豊かに暮らす習慣」で次のように書いている。

〜私自身は、「楽譜を置かない」ことに、それほどこだわりをもっていません。楽譜を覚えて弾くか、見ながら弾くかは、演奏の本質とは関係のないことだと思うからです。実際、世界的なピアニストの中にも、リサイタルで譜面を置いて演奏していた人はいます。「楽譜を覚えられないところを見せたくない」というプライドを捨てれば、記憶力が低下しても、ピアノの演奏活動は続けられるはずです。(中略)年をとれば、「できないこと」が増えるのはやむをえないこと。でも、「できないこと」をさらけ出すことを恐れずに、工夫をすれば「やりたいこと」ができるはずです。(p.128)

「ピアノの発表会は暗譜が当然。」
日本人は形に囚われやすい気質をもっているせいだろうか。せめて大人の発表会は、もっともっと自由で良い、と私は思っている。

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