見出し画像

少女の世界

毎日が色づいていたあの頃、それでもなお死にたいと思っていた時、今思えば誰よりも何よりも、私は輝いていた。
今になってみると、教室の椅子と机はもう小さくなったけど、あの床と擦れる音は何も変わっていなくて、ただ私の足音が変わってしまっただけだった。
あの時入れなかった扉の先も、今は未知で満ちていなくて教科書の中の世界になってしまった。
あの時抱いていた感情も、使い慣れたシャンプーで、なかなか変えられずにいる。
何も知らなかった私は、何かを知った私になって、何かを知っていたあなたは、何かも知っているあなたになった。
一生追いつくことのないかけっこは、夜になっても朝になっても続ける気でいるのだろうか。
朝も夜も知らなかった私は、どちらも知った。
でも、かわりに昼を知らなくなった。
夕陽なんてもってのほかで、眩しすぎて見れない。
月の光だけだと、暗くてものが見えづらいし、朝日だと目を背けてしまう。
あなたを知っていくはずが、あなたを知れなくなっていく。
少女から女性へと変わってゆく。
私は今、世界を知る。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?