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#10 音のない夜

『音のない夜』

ひんやりしたシーツのうえ 
乾いた体で仰向けに寝転ぶ
ヘッドホンをつけたまま
ぼくはきづかず目を閉じていた
目を開けるとぼくは夜の海にいたんだ 
ゆらゆら浮かんでる
もしかしたらあふれでた涙が
海になっているのかな

ぼくはそのなかに沈んで沈んで沈んでゆく…
あなたも知らないここだったら
今の自分を捨てて新しい自分になれる気がした

青に飛び込んで青に染まるぼくは
あなたのいない夜を夢見る


夜の海は冷たくて 
ぼくは何も見えないなか泳いだ 
小さい泡がぼくのまわりを
囲んでどこへゆく
月明かりが静かに水面をてらした
綺麗だなぁ、とつぶやいた
でもぼくにはまだまぶしすぎて
そっと目をとじた

するとまたぼくは部屋のベッドの上で
そこにはほのかに体温残ったシーツ
その偽物のぬくもりを感じながら
音のない夜に溶けてゆく

あなたの輪郭がぼんやりと見えた気がした

青に飛び込んで青に染まるぼくは
今日もまた夜の海をさまよう魚
あなたのいない夜を夢見たはずなのに
ぬくもりもとめてまた目をとじる



2020.2 に完成した曲。
けど、ギリギリ今回のアルバムには収録している。
私の一番のお気に入り曲です。


今回もDadd9 のオンコードで作成。とことん好きみたい。
(コード詳しいものは、時間ができたら追記していく)


この曲は作曲した一年以上前から、頭の中のイメージ映像だけは出来ていて、ずっと作りたいなぁと思っていた。
Instagramでコラボされていた、サカナクションのシーラカンスと僕、がモデル。

今まで、作ってきたオリジナルは、最後には少し救いというか、希望が見えるようなもの、を作っていたのだけど、
この曲ではじめて救われない曲を作った。
もがき続けながら終わる。

だから、なんとなく少し不安だったけど、
最後の最後に作ったイントロが、すごく気に入っていた。
決められた小節の間でどんなイントロメロディにしよう、と適当にピアノぽちぽちしてたら、おお、なんかいい感じかも〜と、嬉しくなったのを覚えている。

この曲はサビの歌詞とメロディが一番最初にできた。サビから曲が出来るのは、私の曲作りにはあんまりないことで。突然、歌詞とメロディが同時に降ってきた。
(だいたい、歌う順番に曲ができるから、Aメロからできていくのがいつも)
なので逆にサビ以外にとても苦戦し、たぶん作り上げるのに5ヶ月くらいかかったかもしれない。

誰も待つことのない部屋
見上げた天井が
車のライトを映し出して
影を落としては消える
今日も一人だ、
心臓が狭くなっていく感覚とともに
手には冷たいシーツの温度と
いつかのあなたの感触

それをかき消すかのように
僕はヘッドホンのなかに没入して
今日も深い闇の中へ沈んでいく

音のない夜
ただゆらゆらする水面が綺麗で
息をすることも必要ない
いつも何かに惹き寄せられているような
気がするけれど
からだは反対の向きをむいて
僕は僕じゃないような感覚を覚える
あの日の感触はどこにも落ちていない
ただ涙と同じ成分のこの中に
溶け入ることができる
この世界だけが
それだけが僕の唯一の救いだった




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