40代発達障害者が引きこもりから復職してWebエンジニアとして働いた2年以上を振り返る

はじめに

IT業界未経験のアラフォー無職引きこもりから
完全在宅勤務のWebエンジニアになって2年以上経ちました。
備忘録も兼ねてざっくり振り返っていきます。

雑にWebエンジニアになるまでの経緯を振り返り

  • 大学中退後、就職できずアルバイトや派遣社員で20代を過ごす

  • なんやかやで発達障害と診断される

  • 障害者向けの職業訓練校に通う

  • 障害者雇用で事務系の仕事に就く(契約社員)

  • 在職中に抑うつ状態になりながらもなんとか働き続ける

  • しばらくして退職

  • 退職後、再就職できず引きこもる

  • 数年経った後、就労移行支援事業所でプログラミングやらを勉強

  • 40代IT業界未経験から、受託開発企業に入りWebエンジニアの仕事に就く(非正規、障害者雇用)


Webエンジニアになって最初の数ヶ月

未経験からITエンジニアになった人のブログなどを見ると
「はじめは研修期間があるから未経験でも大丈夫!」みたいなことが
書いてあったため「そんなもんか」と思っていたのですが…

環境構築でいきなりつまづく

蓋を開けてみれば研修期間なんてありませんでした。
いきなり現場に入れられて初日から環境構築をさせられました。
いや仮想環境?全然分からん!
ほぼ独学でやってきたこともありましたが
仮想環境で開発環境の構築はしたことがなく、いきなりつまづきました。
この環境構築は初心者がつまづきやすいポイントです。

それに加えて、最初から在宅勤務だったこともつまづく原因でした。
出社なら隣の人にすぐに見てもらえたかもしれませんが
在宅勤務だとそうはいきません。
何かエラーが出て、先に進めないときには
分かりやすく人に伝えることが求められます。
在宅勤務においてこうした説明力、文字で伝える力は重要だと思います。
特に新人のうちは人に質問する機会が多かったです。

仕事の進め方を覚えた時期

環境構築が終わると、すぐに仕事を任されました。
まずはテキストの変更や、簡単な不具合の修正など。
そうしたことを進めながら、
仕事で使うツールの使い方を覚えていきました。

  • Github(バージョン管理)

  • Backlog、Pivotal Trackerなど(プロジェクト管理)

  • AWS(Webサーバー、ストレージなど)

  • Zoom、Google Meetなど(ビデオ会議)

  • Slack、Chatworkなど(チャット)

Gitコマンドについては事前に学習はしてましたが
Githubの操作(Pull Requestの作成など)は分からないことが多く
先輩エンジニアに教えてもらいながら覚えました。
ビデオ会議ツールの画面共有機能を頻繁に使いました。


3、4ヶ月目〜1年 覚えることが多い時期

この辺りから新機能の開発などを任され始めます。

クライアント企業とのやりとり開始

受託開発企業の仕事はクライアント企業の依頼から始まります。
開発の流れとしては

  • クライアント企業から新機能の開発を依頼される

  • ヒアリングしながら細かい仕様の取り決め、合意を形成

  • 取り決めを元に設計。見積もりする

  • 見積もりOKが出たらコードを書く

  • 完成したらチームメンバーに見てもらう

  • チーム内でOKが出たらクライアント企業に見てもらう

  • クライアント企業のOKが出たら実装

大体ですがこんな流れです。

Webエンジニアになる前の学習段階ではほとんどプログラミングの勉強しかしてこなかったのですが
この流れでプログラミングは「コードを書く」のところだけです。
それ以外の部分は実務の中で覚えていきましたが、
覚えることが多く、毎日必死でした。

非エンジニアの人はなんとなく「ITエンジニア=プログラミングする人」のようなイメージを持っているかもしれませんが
実際はプログラミングだけをやっているわけではなく、
むしろプログラミング以外のことをやっている時間の方が長いです。

コードレビューでダメ出しされまくる

開発チーム内でコードをチェックすることをコードレビューといいます。
プログラミングして完成したコードは必ずチーム内でレビューを受けます。
チェック内容は概ね以下の通りです。

  • コードに間違いがないかどうか

  • 製品としての品質をクリアしているかどうか

  • クライアント企業の要望を満たしているかどうか

このコードレビューを通過しないと仕事が終わりません。
独学の段階では、「プログラミングは動けばそれで良し」と思っていましたが
業務レベルとなるとそうはいきません。
どこに出しても恥ずかしくない品質であるかどうか。
ここはもっと簡単に書けるとか、変数の名前が分かりにくいとか
レビュー時に何度もダメ出しされたこともありました。

一度実装されたコードは何年にも渡って使われ続けることもあります。
ダメなコードを書くとそれに関連した部分にも影響が出るため
長年使われ続けるとその分影響が大きくなっていきます。
チームの現場でクリーンなコードを書けるように意識しだした時期でした。

ダメ出しが多いとメンタルが辛くなってきますが
苦労した分、終わった時の達成感は大きかったです。


2年目 

私が最初に所属したプロジェクトは未経験の人が入ってくることが多かったです。
また、ある程度経験を積んだら他のプロジェクトに移動したり、
フリーランスに転向する人もいます。人の入れ替えが多い現場です。
そうなると、所属歴1年くらいでも在籍期間が長い方になります。
私としてはまだまだ新人気分だったのですが、
この辺りからだんだん後輩エンジニアの質問に答えることが増えてきました。
教えられる立場から教える立場に転換していく時期です。
ただ質問に答えればいいわけでなく、
ゆくゆくは自分で解決できるように促すのが理想です。
とはいえ、そんな風に教えるのは難しく、まだまだ力不足を感じています。


完全在宅勤務の環境について

  • 通勤がないのは最高

  • 出社環境と違い、周りの様子に気を取られることなく集中できる

  • ビデオ通話する機会が結構あるため、メイクや服装はそれなりに気を付ける

  • 仕事用の机や椅子など、仕事場の環境は自分で整える必要がある

  • 部屋の片付け、掃除を以前よりするようになった

周囲が気になって緊張したり、集中できないといったことはなくなりましたが
仕事場の環境は自分で整えないといけないため自己管理能力が必要です。

あとは、職場の人間関係に悩まされることが格段に少なくなりました。
全くのゼロではありませんが、
ストレス要因を概ね解決できたのは嬉しいポイントです。


職場環境について

ITエンジニアの採用選考は若い人の方が圧倒的に有利です。
そういった背景もあり、周りはほとんど20代とか30代です。
男女比は体感ですが、男性7割、女性3割くらいです。

コミュニケーションについて

チームメンバーとはチャットツールでのやり取りが多いです。
クライアント企業とはビデオ会議ツール、
プロジェクト管理ツールやチャットツールでやり取りします。

プロジェクトによりますが、週1くらいでビデオ会議ツールを使った
ミーティングがあります。

基本的に文字でのやり取りが中心ですが、
在宅勤務だと相手の顔が見えない状況が多いため
顔が見えるビデオ会議によるコミュニケーションが重要になります。

また、仕事の進捗などのこまめな連絡も重要です。
相手からの声がけを待つよりも、自分から発信できる人が歓迎されます。

あとは、ITエンジニアもビジネスパーソンです。
ビジネスマナーは重要です。
クライアント企業とのやり取りでビジネス的な対応ができないと
会社の信用問題にも関わってきます。
返信などで迷ったときはチームメンバーに確認します。


引きこもりから社会復帰したことについて

2年以上仕事を続けてこれているので
社会復帰するという目標は果たせたと思います。

引きこもっている間はほとんど物欲がなく、
収入がなかったことも原因ですが
それまでよく買っていたCDやら漫画やら服やらを
全然買えず無気力状態でした。
仕事を始めてしばらくして、ようやく自分の好きなことにお金を使えるようになりました。

慣れた在宅の環境のおかげで、
無理せず仕事を続けていけていると感じる一方で
出社の仕事を選ばなかったことで、
外に出る機会が少なくなってしまったとも感じています。
社会復帰はできたと思いますが
外に出て活動的に仕事している人たちに対する劣等感とか閉塞感は未だに残っています。


前職との違いについて

前職は障害者雇用の契約社員での事務系の仕事でした。
事務系とはいっても一般の社員の事務の仕事とは違い、
発達障害の人向けに切り分けられた仕事でした。
仕事内容は主にデータ入力、書類やファイルの整理、郵便物の仕分けなどです。
単純作業ばかりでスキルアップやキャリアアップの機会はなく
契約社員でしたが最低時給のアルバイトと給料は大して変わらず
3年働いて一度も昇給も昇格もボーナスもありませんでした。

現職では覚えることは多くて大変さはありますが
その分スキルアップ出来ている実感はあります。
給料は何回か上がりました。


前職を辞めてから

前職を辞めてからずっと無気力状態で、
引きこもりのまま数年過ごしました。
今思えば、抑うつが治りきってなかったのかもしれません。
うつ病ほど酷くはありませんが、
その分「軽い症状だから大丈夫!」と甘く見て
自己判断で通院しなかったことが
引きこもりが長引いた原因と思います。
自己判断は危険です。

通院しなかった理由は複数ありますが、
一番の理由は病院の先生が苦手だったからです。
なので、思い切って病院を変えました。
就労移行の利用を始めたことと、
病院を変えたことから状況が変化していったので、
環境を変えることは重要だと思いました。

最後に

私はプログラミング学習ができる就労移行支援事業所に通い、
そして運よくWebエンジニアになれました。

就労移行支援事業所とは、就労を目指す障害者のために
就労に向けてのスキル習得や就職サポートをする福祉サービス施設のことです。
ここ5年くらいの間で「ITスキルを学べる」と謳った事業所が増えてきていると感じます。
特に発達障害者向けの事業所でそういった傾向があるようです。
しかし、ITスキルを学んだからといっても、必ずしもIT業界に就職できる訳ではありません。

今のIT業界は人手不足を拗らせた結果、未経験者を歓迎するムードがなく
即戦力となるIT経験者でないと就職が難しい状態です。
それに加えて、障害者雇用の求人は単純な事務作業や軽作業の仕事が大半を占めています。
(特に精神、発達障害向けの求人で)
昔と比べればそうした傾向は見直されつつありますが、
未だに障害者雇用は単純仕事、という考えは根強いように感じます。

単純仕事以外の障害者求人も増えてきてはいます。
ですが、ITエンジニア求人は多くが経験者採用です。
就労移行支援事業所を利用していた時、
事業所の利用期限が過ぎても就職できず、
泣きながら事業所を去っていく人を見送ったこともありました。
その事業所はプログラミング学習はできますが、
それがIT業界への就職に繋がるとは限りません。

私がWebエンジニアとして働き始めるまでは
その事業所の利用者の中で
IT業界未経験でITエンジニアになれた人はいませんでした。

発達障害者が障害者雇用枠で仕事を探すと事務作業や軽作業が多いため、
適性が低いにも関わらず、
それらの仕事に従事せざるを得ないことがあります。
私の前職もそうでした。
発達障害者は得意なことと苦手なことの差が大きく、
仕事にも向き不向きがあります。
しかし、障害者雇用枠では職種選択の幅が狭いため、
得意な能力を発揮できる環境にいる人は少ないです。
向いている仕事をしたいと思っても、そもそも募集が少ないからです。

私がWebエンジニアになれたのは、単に運が良かっただけだと思います。
IT技術に優れていた訳ではありませんでした。
学歴も職歴もありませんでした。
それに加えて、40代未経験での採用はまずあり得ません。
ですが、運よく年齢学歴職歴不問の求人を見かけて、
運よく採用されました。
そんな運を掴むことができたのは求人があったおかげです。
働く機会をくださった今の会社には感謝しています。

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