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サイバー衣装/メカヘッドの思いつき方・造り方 ③設定からコンセプトを抽出して効率的に創作をしよう!

はじめに

 特にSF(サイバー)創作において、全く設定を考えずに魅力的な作品を作れる人間というのはかなり限られてくると思います。更にサイバーパンクというジャンルにおいてはより説得力が重視されるので、見た目のカッコよさだけでサイバーパンクを表現できる人はさらに少ないと思います。

 とはいえ、設定だけ考え続けても実物はできあがりません。更に設定を考えるという作業は、ある程度のところで意図的に切り上げないと楽しくなって無駄に細部までいろいろ妄想してしまうものです。

 漫画や小説などストーリーがあるジャンルの創作物であれば綿密な設定を練るというのも必要ですが、衣装を作るということに注視するのであればある程度のところで手を動かし始めなければなりません。

 個人的には実際にモノを作って、一目見て説得力のあると思わせるには設定の濃さではなくコンセプトの明確さが必要だと思います。

1とりあえず設定を考えてみよう

 設定を考えずにいきなりコンセプトを決める…というのも難題だと思うのでまずは設定から決めようと思います。

1:ジョン(名前)
2:探偵(職業)
3:全身サイボーグ,競技用をベースにしたカスタム義体(本人の体の詳細)
4:ナントカ重工の◇×拳銃を使う(本人の持ち物の詳細)
5:先の〇▽戦争で身体を失い,ナンチャラ博士によって改造される(出生,過去)
6:酒豪,嫌煙家(好き嫌い)
7:〇〇は殺さない主義(本人の信条)
8:テーマカラー

主にTwitter上で一次創作衣装を作って遊んでいる人でよく見る設定の傾向を見るとこれくらいが多いと思います。

ここから外見に関する情報とそうでない情報を分けることが衣装作製においては重要だと思います。

2設定からコンセプトを抽出する

 上記の設定から、優先度を分けて考えていこうと思います。

1:名前
 順番としては一番最初に書いていますが、個人的には一番最後に考えた方が良いと思います。
・名前そのものだけでは外見に強い影響を与えられないため
・ほとんどの名前は外見等にちなんで名づけられるため
というのが理由です。名前を外見に活かせる方法といえば例えばロゴを作る等でしょうか。

2:職業
 非常に重要です。職業というのは当然ですが外見に直結しますので、優先的に決定しましょう。ここで重要なのは、該当する職業の現在の仕事道具をしっかりと調べるということです。
 例えば探偵だとすると、現在の仕事といえば人探しや行動調査(尾行や監視)だと思います。ということは必然的にそれらの道具であるカメラや変装道具等を進化させて未来を表現すると効果的だと思います。

 例:カメラ付きドローンを監視に使う→現在のマルチコプターではなくその先の未来の形を想像してみるというのが重要です。
 ・鳥型、昆虫型のロボット
 ・超小型ロケットで人工衛星をいつでも撃ち出せるキットを携帯している
等です。

3:本人の体の詳細
 これに関しては外見に直接影響する要素ですので恐らく最初に決めることになると思います。サイバーの衣装を作る,ということを前提とすると多くの場合ある程度サイボーグ化されていたりある程度戦えそうな要素を持つと思います。
 この場合重要なことは、サイボーグ化されているという要素に加えて何のために作られたサイボーグであるかを決めることです。わかりやすくするために車で考えてみようと思います。世の中にある車というのは大きく分けると
・乗用車
・レーシングカー(F1カーやラリーカー等)
・工業用商業用の車(トラックやショベルカーなどの重機)
・軍用車(戦車や装甲車等)

サイボーグというものはほとんど車と同じ立ち位置だと思うので同じように考えることができます。
日常用サイボーグ
 人間に似ている、色が派手、形状に丸みがある
競技用サイボーグ
 流線形、軽量化されている(カーボン等)、企業の宣伝ステッカーが大量に貼ってある、日常には不便そう
・工業用サイボーグ
 
直線的な形状、強度を優先した構造(補強リブ、強固なボルト、頑丈なケーブルやコネクタ等)、視認性を向上した色(ショベルカーやダンプトラックは多くの場合黄色やオレンジですよね)、警告ステッカー
・軍用サイボーグ
 
多くの要素が工業用と同じですが、実際の軍用の物は大前提として視認性が下げられています。これは、単に迷彩を使うというだけでなく同じ警告マークであってもより彩度を下げた色合いになっています。例えば low visibility flagで検索してみると、視認性を下げつつ自分の所属を示すために作られた低視認性国旗の画像がいくつか見つかると思います。多くの軍用品が黒やグレー、緑色(アースカラー)が使われているのも同じ理由です。
 まとめると見た人が一目で軍用であると強く認識できる外見というのは丈夫そうで色見が地味ということになります。

4:本人の持ち物の詳細
 
これも外見に関することですので最優先で決定したいです。何度か書いていますがSF創作として説得力のある未来を描くというのは現在の最先端を知っていることが重要です。例えばわかりやすく銃で考えてみます。

・P90
 いかにもSFという見た目で大変人気があります。ところがP90の発表は1988年で採用は1991年からです。さらに現在にいたるまで主要なサブマシンガンの座を奪うほど使われていない事実があります(ただし30ヵ国ほどで採用された実績はあります)。この銃が数十年後の未来で使われているか?というと不安になりますよね。

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wikipediaより引用https://ja.wikipedia.org/wiki/FN_P90

クリス ベクター
 
P90にとって代わって近年のフィクションに引っ張りだこの最近はやりの銃です。独特の機構はまさに未来を先取りした銃に思えます。が、実際のところ拳銃と同じ弾を使うくせにデカい、さまざまなレバーがバラバラの位置についており使いにくい、独特の機構も特に効果がない等様々なレビューによって軍用として採用した国は聞いたことがありません。アジア諸国で限定的に使用された写真はありますが、その程度です。THE見かけ倒しという感じの銃です。ちなみにこの銃も最新っぽい雰囲気出してますが2006年から売られています。最新かというと微妙です。

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wikipediaより引用https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9_%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC

 このように、良くSFに登場するアイテムや未来っぽいとされるアイテムはちゃんと調べると、本当は未来のアイテムどころか結構古い物だった…ということは良くあります。(特に銃でこの現象が多いのは、意外なことに銃本体の進化というのは結構遅かったりするためです)
 アイテムというのは衣装の出来を左右する重要な物であり、これを軽視することはできません。そのため、重要なのは進化しやすい物とそうでない物を見極めて、進化しやすそうな物を未来っぽくするという作業が効果的です。
 多くの場合、進化しやすい物は電子機器と材料そのものです。引き続き銃で例えます。
銃本体を構成する材料の進化をざっくり説明すると
金属と木材(400年くらい続く)

金属と樹脂(だいたい100年弱くらい前から:木材が樹脂に)

樹脂の進化(数十年前:樹脂がベークライトからFRPに)

未来では????

始まりは電子機器ではないですが、銃に載っているスコープ等の照準器の進化は銃とは比べ物にならない進化の速さです。
レンズを組みわせたスコープ
(ダヴィンチが銃に望遠鏡を載せたとする逸話が本当なら数百年前から、ちゃんと使える物は西部開拓時代くらいからなので150年前くらい?)

ドットサイトという電子的な照準器が登場したのがおよそ100年前で,実際に普及しはじめたのが1970年代から90年代ほどで、その間にどんどん小型化されていきます

現在では相手との距離を測り爆発する弾が正確な距離で自爆する、敵味方を判別する、照準があった時に自動的に引き金を引く等様々な機能が研究されています

さらに未来の照準器では?(透視、衛星とリンクetc)

 つまり銃本体よりもそれを作る材料、それよりも更に速く銃についている照準器等が進化していくということです。銃は古くても載っている照準器がSFっぽければ効果的に未来を表現できます。この方法を最も効果的に行ったのがエリジウムという映画で、AKMという1959年の銃に未来のデバイスを載せた魔改造銃が登場します。AKMという銃はベストセラーで膨大な量が作られたはずなので2154年の未来でも手に入るだろうと思いますし、貧乏な主人公がそれをベースに改造した銃を使うのも頷けます。(敵は対照的に最新の銃を使います)

5:出生や過去
 
この要素は、衣装や立体造形を作るにあたって非常に扱いにくい要素です。過去という時間の流れを表現するには物語などのストーリー性が必要ですが、それを衣装や立体造形だけで表現するのは至難の業だからです。これらは基本的後回しでよいと思いますが、何個も作る場合は出生や宗教性を決めることでデザインの方向性を大きく変えることができるので効果的だと思います。

6:好き嫌い
 これらの設定も基本的には衣装や立体造形のための設定というよりかはオリキャラの設定に向いているという気がします。例えば酒好きならスキットルを持つ。スキットルを持つなら未来のスキットルを持つことでSFを表現する…といった活用方法はあると思うので、好き嫌いを決めてからアイテムの方向性を決めていっても良いと思います。

7:本人の信条
 今回挙げた中ではもっとも扱いにくい要素だと思います。この要素を表現するためには恐らくストーリー性が必要になり、小説や漫画などに起こす必要があるからです。小説や漫画を描きその登場人物を実際に作ってみる、という表現をしている方も結構いますしそういった方向性でない場合は後回しでよいと思います。

8:テーマカラー
 テーマカラーを決めて衣装を作るというのは多くの方がやられているように見えます。特にサバゲーのアーマー装備などでは黒赤や黒オレンジとったテーマカラーを決めてそれを徹底している方も多くみられます。これらのテーマカラーはキャラ性の強化やヒーロー性の強化には非常に効果的です。しかしながら、説得力やリアリティを重視する場合はある程度のところで踏みとどまらなけらばなりません。現実には変えることができな色というものが存在するためです。

 世の中の色を大きく分類すると
・自由に変えれる色
・ルールで変えることができない色
・構造上変えることができない色

の三種類です。テーマカラーに固執すると下二つを忘れてしまうため、ヒーローっぽいけどリアリティはない…という状態になります。変えることができない色を表現に加えることは説得力の向上と差し色という二つの相乗効果を得ることができます。

具体的に車で例えますと
・ボディカラー:自由に変えれる色(1色以上)
・ライト:ルールで変えることができない色(白赤黄色の3色)
・窓ガラスやミラー:構造上変えることができない色(透明、銀色)
・タイヤ:構造上変えることができない色(黒、ただしコストをかければタイヤもカラフルにできます)

とざっくりわけても5色以上存在します。テーマカラーをきっちり決めて、○○色しか使わない!と決めるのも良いですが、説得力の観点でみれば全て自由に変えれる色で構成されている→装備に対する必然性がないと見れます。大半をメインのテーマカラーで構成しつつ、要所要所に差し色として様々な色を加えることで全体の印象を維持しつつ説得力を大幅に増すことができます。

シャアザクですらヒートホークやマシンガン、ロケットノズル、モノアイはパーソナルカラーではなく通常のザクⅡS型と同じです。

まとめ

 今回書いたことは、創作の分野では良く言われることではあります。単純にまとめると"設定を練ることはとても楽しいことなのでどんどんやって構わないけど、適度なところで切り上げて物作りにシフトしないと完成しない"ということですね。

 コンセプトが決まったので次はキーアイテムを考えます

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