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「大大阪経済圏構想」について

前堺市議会議員の野村ともあきです。
大阪ダブル選挙、統一地方選挙の投票日が4月9日に迫りました。
私の住む堺市においては大阪府知事、大阪府議会議員、堺市議会議員の選挙が行われ、私も連日多くの議員の元へ伺っておりますが、タイプの異なる3つの選挙(大阪市内では大阪市長選挙もあり4つ!)が同時に行われる難しさを痛感しております。

首長は予算執行権という大きな権限を持っており政策に関する意思決定権があります。
一方の議会議員は、強大な権限を持つ首長を複数人の目でチェックするための機関です。(これを二元代表制と言います)
つまり政治家として同じような主張をしていても、首長と議員では政策の実現力が天と地ほど異なるのです。
ですから、首長には自らの思想や理想、ビジョンに基づいた政策と強いリーダーシップが必要なのです。

客観的な各種統計や指標を見れば、この10年以上、大阪府政、大阪市政を預かって来た維新の政治は「完全に失敗」だったと言わざるを得ません。

府内総生産、府民所得、企業倒産件数、地価など多くの経済統計指標で他の大都市圏に水を開けらており、大阪経済の退潮は明らかです。
学力も全国最低水準から回復していません。不登校生徒数、児童虐待通告件数も全国ワーストです(人口あたり)。
刑法犯認知件数、少年の大麻所持摘発件数、交通事故死亡者数も全国ワースト(人口あたり)。
新型コロナによる死者数も全国ダントツのワーストだったことは広く知られるところとなりました。イソジンや大阪コロナ大規模医療センターなどのパフォーマンス政策や、身を切る改革の結果です。

何をどう見れば大阪が成長していると言えるのでしょうか。大阪は間違いなく衰退しています。しかも最悪に近い水準で。

このことをもって「維新政治の批判」をすることは容易です。先に説明したようにチェック機関である議員であればそれでいいかもしれません。
しかし首長(候補)は違います。

もちろんおかしなことはおかしいと言わなければなりません。
しかし、自治体を預かろうという候補者であれば、どのようにして経済を回復させるのか、どうやって子どもたちの教育環境を改善するのか、社会秩序を守るためには何をすればよいのか、を示す責任があります。
有権者もそこに期待をしていますし、選挙は絶好の機会であると言えます。

今回のダブル選挙で大きな争点である大阪IR、カジノ、夢洲開発については、カジノを批判するばかりではなく、ではカジノ以外の経済成長戦略について「対案」を示す必要がありました。

私自身は候補者ではないので「対案」を示す必要はないのですが、それでもカジノを批判すると「じゃあ夢洲はどう活用するんだ」「パチンコや競馬はいいのか」という判で押したような反論が飛んできます。これらについては過去にすべてお話し済みなのですが、それらを全部読んでくれとは言えないので、このあたりはSNSの難しいところだと感じます。

私は、大阪ダブル選挙に備え「提言」という形で「夢洲活用」の対案を示していました。「大大阪経済圏構想」というものです。
私はダブル選挙の候補者ではないので、発言に対するプレッシャーは候補者の比ではありませんが、それでも首長候補者を経験したこともありますし、現在も「公職の候補者」の立場にあるので、発言にはそれなりの責任が伴うと思います。

この「提言」が絵空事や放言ではないことは(選挙中の発言でもありますし今後のこともありますので)、選挙の最終盤ではありますが一応書き記しておこうと思います。

また、この構想を貫く「考え方」や「方向性」のようなものは、私の「まちづくり」に対する普遍的な「思想」に裏打ちされたものだと思いますので、それは堺市政やあるいは日本の国土建設にでも当てはめていくことは可能かと思います。私自身、多忙を極めてはおりますが、今ここで説明しておくことは意義があると考えます。
事情をご賢察いただき乱筆乱文はご容赦ください。

「大大阪経済圏構想」概略図

まず誤解のないように述べておきますが、「大大阪経済圏構想」は夢洲開発の対案として立案した「経済成長戦略」です。教育や福祉や安全安心などは間接的には関連しますが、単独の施策として盛り込まれていないのはそういう理由です。それらの政策は別枠になります。

「大大阪経済圏構想(以下、本構想という)」の各項目は私が適当に思いついたものではありません。各項目はそれぞれ、国家プロジェクトであったり、自治体の計画であったり、地域からの要望であったりするものです。各項目の詳細はとてもここにすべて書ききれるものではありませんが、ご関心のある方は検索などしてみてください。

そして、これらの各項目の多くは15年間の私の政治経験から盛り込まれたものです。過去に所属していた自民党の勉強会や、政策立案作業や、議員としての視察や、有識者の提言や、独学などで見聞した内容ですので、まったく荒唐無稽なものというわけではありません。もちろん「四国新幹線」のように現状、実現するのははるか先の未来であろうものも含まれます。

本構想において最も重要なキーワードはリアル(フィジカル)な「ものづくり」です。(ものづくりには工業製品の他に広い意味で第一次産業製品も含めます)

現在の大阪、あるいは日本も、なぜか「観光偏重」の政策を非常に好みます。
しかし私はもう何度も何度も何度も繰り返してきましたが、観光というのは他に売るものが何もない、技術も知識もない国や地域の産業であって、災害や戦争や紛争や国際情勢や外交問題や疫病や事故などに強く影響される非常に足腰の弱い脆弱な産業です。
国民の知識レベルが極めて高く、かつては高い技術力を誇り、製品には強い国際競争力のあった日本が取るべき国家戦略ではありません。

かつて日本が強かった頃、国は「技術立国」を国家戦略として掲げました。それが現在は「観光立国」が経済政策の柱です。非常に情けない気持ちにさせられるのは私だけでしょうか。
念のため言っておくと私は観光産業を捨てろと言ってるのではありません。
国や地域の基幹産業にすべきではない、と主張しているのです。
その国のプレゼンスが高まれば観光客は勝手に来ます。観光客が増えれば適宜、対応していけば良いだけの話です。

閑話休題、ものづくりは重要ですが、かつての家電や自動車など日本のものづくりは急速に競争力を失ってしまいました。しかしそれらの産業が消滅したわけではありません。家電にはアップル、自動車にはテスラなどの企業が存在しています。

必要なのはものづくりの次世代化です。そしてそのために必要なのは高度な知識です。かつてのものづくりは職人による技術が重要でした。もちろん職人技のような技術の重要性は今も変わりません。が、現代ではそれに付加価値を与える「知識」がさらに重要となりました。技術と知識の融合こそが新時代の産業として最も求められる進化であると考えます。

新たな時代の資源として最も重要な知識は容易に移動するという特徴を持っています。知識人材は快適で便利で待遇が良く安全な場所へ簡単に移動してしまいます。大阪に知識を集めるためには、大阪の町が快適で、便利で、知識の習得に適していて、安全であることが重要です。残念ながら先に示した指標の通り、大阪はそのすべてで後れを取っています。
さらに悪いことに、大阪のカジノは町の快適さや居心地、学習環境や知的な交流、安全などをさらに後退させる可能性が高く、大阪からの人材流出は避けられないでしょう。そしてそれはすでに始まっています。

知識の獲得には移動の便利さも重要です。構想に掲げた国土軸に結節する新たな交通インフラを早期に整備することと、大阪が起点となる新たな国土軸、経済圏を構築することには大きな意義があります。
もちろんこれらは非常に大規模なプロジェクトなので大阪だけではできません。また数十年という長い事業期間も必要です。
国との協力が不可欠ですが、今の大阪の政治情勢では国との連携や事業進捗は期待できません。
現在の大阪は独立国のような状態で、野党である維新が好き放題に予算を使っています。この10年で夢洲開発や都構想に消えたヒト・モノ・カネのリソースを、内陸部のインフラ整備や港湾機能の強化に振り向けられていれば大阪はもっと発展していただろうと思うと残念でなりません。

国際競争力のある製品や企業や産業が育てば大阪から域外、海外に向けて出荷できます。
現在、大阪港は輸入品は入ってきますが輸出品が少ない状態が続いています。要するに売るものがないので外貨(域外貨)が入って来ないという状況です。そのため国土交通省をはじめ多くの団体やシンクタンクが「創貨(貨物需要の創出)」の重要性を提言しています。創貨は三次産業やデジタルでは実現できません。絶対にものづくりでないとダメなんです。

現在、国際的な物流需要の高まりとともに国際港湾の競争が激化しています。港湾機能の強化は急務ですが輸入ばかりでは経済が回りません。府内製造業次世代化を支援し、新たな製品を生み出し、創貨によって域外貨を稼ぎ、港湾機能を強化し、さらに物流を促すという経済の好循環を生み出すことが、不況や外的要因に影響を受けにくい足腰の強い産業や企業を大阪に根付かせることにつながり、100年先まで続く大阪の経済成長を実現する端緒となると考えます。

大阪には100年企業がゴロゴロあります。今ここで、次の100年企業を生み出すための環境整備が商都としての自治体・大阪に求められています。

夢洲に日本の博打客を集めて65年間一事業者に儲けさせるビジネスでは「絶対に」大阪は発展しません。
今一度踏みとどまって考え直すべきではないでしょうか。

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