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「維新の会」の躍進をネットメディアはどう見たか(まとめ)

先の第49回衆議院総選挙における維新の会の躍進は、野党共闘の失敗と相俟って全国的にも注目を集めた。
ネットには様々な言説や論考がアップされ、メディアやSNS上でも活発に議論されている。

大阪における「維新圧勝」の予測はかなり早い段階からあったので、私はある程度の覚悟はしていたが、大阪の小選挙区で全敗という結果には率直に驚きを禁じ得なかった。

このような選挙結果を招いた理由について私個人の見解はいくつも挙げられるが、それは長年に渡り「維新政治」と対峙してきた反維新側の主観的な意見に過ぎない可能性がある。

今後の対応を考察する上では、「なぜ維新がこれほどまで世間に支持されたのか」を、努めて客観的に理解しておく必要性があると感じていた。

そこで、この度の「維新躍進」に関してネット上の論考がある程度出揃ったところでそれらを渉猟し、複眼的に全体像を捉えておこうと考えた次第である。

今回、維新を直接論じたものではない記事も含めると約40本くらいの記事や投稿を読んだと思う。その中で、個人的に新たな視座を与えてくれたり、刮目すべき内容だと感じた記事を以下にまとめた。

すべての執筆者の皆様、編集者、媒体関係者の皆様には、心から敬意を表します。

なお、時間の経過によってリンクが切れたりするものもあるかと思いますがそこはご容赦いただければと存じます。

維新の躍進は予想通り? 「ポピュリズム」という評価は的外れ? 大阪で自民党が全敗した理由

https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/ishin-2021
「維新支持の分析」著者の善教将大・関西学院大教授へのインタビューが中心の記事。
保守でも革新でもない「地域代表」という維新の特異性が、「左右」の既存政党をまとめて打ち倒した構図が浮かび上がる。
善教教授「維新は自身の政党ラベルに「大阪」の代表者という価値を付与することに成功した」
早稲田大学・遠藤晶久准教授らの研究は「40歳以下の世代が維新を「革新」政党と認識している実態を実証的に明らかにしている」が、一方で維新が「革新政党」であるという認識と、維新所属の政治家への支持が、強く相関していないとも述べている。

〈右の維新〉vs〈左のれいわ〉が日本政界の新しい対立軸だ! 自民vs立憲の二大政党時代の終焉を告げた衆院選

https://samejimahiroshi.com/politics-ishinreiwa-20211101/
先の記事と強く関連する論考で、深くうなずかされた。
小泉以降、安倍・菅に至る新自由主義の流れを岸田が転換し、一方でその影響を受けてリベラルも存在意義を低下させてしまう。今後は、ネオリベ路線を全開にする維新が台頭し、立憲は野党第一党から滑り落ちる可能性がある。
「かつて野党第一党の新進党が衆院選敗北で求心力を失って解党し、第三党だった民主党にその座を譲ったのと同じパターン」が生じるかもしれないという予測には読んでいて慄然とさせられた。

「野党優位の状況だったのに…」維新は大躍進を遂げて、立民が惨敗した決定的な違い

https://president.jp/articles/-/51552
前と同じ著者の記事である。既存政党が政策面で存在感を発揮できなければ、左右の新興政党、維新・れいわの台頭を許し、混沌とした多党時代が到来するという内容。

維新躍進、大物議員の落選…“安心感”なしの岸田政権 「所得倍増」「再分配」はどこに?

https://times.abema.tv/articles/-/10004960
岸田自民党と立憲がともに存在感を発揮できなかった中、うまく対立軸を作ってみせた維新が勢いに乗ったという内容。
岸田内閣の示す方向性に合致した具体的な政策が見えなかったという指摘にも同意させられる。

なぜ自民がそれほど負けず立憲が負け維新が躍進したのか

https://news.yahoo.co.jp/articles/d10f537abae6bb8b30a9483ac86a9125393a7efa
投票行動から分析した立憲埋没の理由と維新の躍進について解説する動画記事。2009年政権交代時に「民主党に投票する」と答えた無党派層は38.5%、対して今回「立憲に投票する」と答えた無党派層は10.3%にとどまった。

維新に投票したのはどんな人? 比例区の投票、年代からわかったこと お年寄り頼みの政党は〝退潮〟

https://news.yahoo.co.jp/articles/a366cdcefa094880b45b180abcd47b1098c05b1c
年代別の投票行動の分析。
維新とれいわは圧倒的に支持者が若かったというデータが示されている。
60歳以上の高齢層が支持者に占める割合は自民47%、公明49%、立憲56%、共産58%に対し、維新は40%、れいわは21%(!)。

辻元清美氏までも敗北 維新が大阪を中心に4倍増の躍進を果たした背景は

https://news.yahoo.co.jp/byline/oohamazakitakuma/20211101-00266074
自民党が改憲・外交安全保障で右傾化を避けられない一方、立憲は共産党との共闘で左傾化を強めたことで、維新が中道にうまく収まったという指摘。結果や状況から導かれた論評で、やや根拠に乏しい印象を抱いた。

関西人視点で「維新が大阪で強い理由」を整理し、これからの日本における「改革」を考える【あたらしい意識高い系をはじめよう】

https://finders.me/articles.php?id=3107
「維新を支持しているのは愚か者だ」「維新は血も涙もない政党だ」というよくある批判から一歩距離をおいて「維新の政策的に知的な部分を評価しよう」という主張の記事。
反論したくなる部分は各所にあるが、それこそフィルターのかかった脊髄反射的行動じゃないかと反省し、時間をかけて読んだ。
私とはかなり見解を異にする記事ではあるものの、「維新躍進」という事実を事実として真摯に受け止め、メタな部分で課題意識を持たなければと感じさせられた。

維新の躍進を「大阪府民がアホやから」で片づけてはならない(限定記事)

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2021110300006.html
前述の記事と着眼点は異なるが同スタンスの記事。
個人的に維新に投票したという若い有権者の声が刺さりました。
(引用)
「維新に任せたらすべてがうまくいくとは思ってません。でも、失敗してもいいからいろんなことに挑戦しようとしているところに共感してます。都構想はだめになったけどIRは進めてほしい」
 「私は消去法で決めました。自民はもう古いし嘘が多い気がする。立憲はなんかエエかっこしーで好きになれない。共産党と公明党は体質的に合わない。で、残ってるのが維新。維新でええかっていう感じです」

維新「第3党」の裏で何が 「吉村人気」だけではない底力と限界(限定記事)

https://mainichi.jp/articles/20211101/k00/00m/010/076000c
大阪で維新の選挙を間近で見ていると実感する「維新の強さ」を裏付ける組織選挙について克明に著した記事。
選挙区ごとに地元の議員を組織化、約260人を実動部隊として総動員するピラミッド型の態勢を党本部主導で構築した。輪番制で連れ回しを行い、街頭演説、チラシ配り、期日前投票所前での運動、接戦が伝えられる選挙区には担当する選挙区に関係なく所属議員を集中投入した。
対峙した自民党議員も「維新の選挙はすごかった」と舌を巻くほどの組織戦を展開。

【取材記者ノート】大阪で維新が“圧勝”その理由は? 京阪神“3都調査”から考える ABCテレビ×JX通信社

https://news.yahoo.co.jp/articles/124512565721b5aaf6c0f2471097d8f64f574f44
事前の世論調査が「こうだった」という紹介記事。維新が支持された理由に関する独自の考察等は特に書かれていないが、調査結果に関心のある方はご一読を。

【論文】維新政治の本質―その支持層についての一考察―

https://www.jichiken.jp/article/0097/
2年ほど前の冨田宏治・関西学院大学教授の記事。
厳しい競争にさらされる現代社会においては、経済格差や社会的弱者への差別が「分断」を生んでいて、優しさよりも厳しさ、共生ではなく排斥、許容よりも不寛容が支持される。それをポピュリズムとして利用しようとする政治勢力は洋の東西を問わず存在する、という内容。
やや扇動的な記述が目につくが、この10年に渡る「維新政治」の本質を突いていて、総選挙後に読むと考えさせられる。今の政治における方向修正の必要性を強く感じる。

自民が議席を減らした理由は維新の躍進ではない

https://anond.hatelabo.jp/20211105032250

本当に2021年の選挙では維新が躍進し立憲民主党が失速したのか?

https://wpmu.hidezumi.com/?p=19168

今回の総選挙における立憲について分析、論考した2つの記事。
過去と比較して今回、立憲は議席を伸ばしており、野党共闘で票が減ったわけではないのは比例票の増加を見れば明らかで、前回は、希望の党が維新と立憲から議席を奪い、今回維新はそれ以前の水準に戻ったに過ぎないという分析。
以下は私の意見だが、記事の分析は数字上は正しく多くのことに気付かされるが、大阪に限って言えば、維新は合従連衡で議席を水増しした過去の選挙と決定的に異なり、今回はほぼ生え抜きの議員で議席を確保していることが脅威であると感じている。

■なぜ維新が大阪(と関西)で勝つのか?

https://anond.hatelabo.jp/20211101232942

■大阪にいると維新が議席を取るのは当然だけどな。「維新に入れるのだけは無い」というヤツが原因だけども。

https://anond.hatelabo.jp/20211101150842

最後に、はてな匿名ダイアリーに投稿された匿名の記事を2本。
文体はカジュアルだが、匿名のゆえか「維新の強さ」について生生しく鋭い指摘が突き刺さりました。
読んでて辛かったですが、今後に生かしていかなければという使命感は湧きました。

以上です。

改めて、様々な知見を与えていただいた執筆者の皆様に感謝申し上げます。

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