維新躍進の票はどこから来たのか
第49回衆議院総選挙が終わった。
全国的には自民党が単独過半数を確保し、岸田政権は続投の信任を得た。
しかしここ大阪では、小選挙区で日本維新の会が「全勝」するという衝撃的な結果が出された。
自民党はもちろん、共闘に失敗した野党も、大阪においては解党的な出直しを迫られるだろう。
この維新躍進の原動力はどこから来たのであろうか。
分析のために、下記に第48回(2017)衆議院総選挙と第49回(2021)の大阪府選挙区別の得票率を表にまとめた。大阪府の投票率(小選挙区)は前回(2017)48.39%から今回56.2%と上がっているので、票数の比較ではなく「得票率」で比較を行った。
これを見ると際立った維新の強さが理解できる。
維新は、ほとんどの選挙区で前回より得票率を10%以上上げており、多くの選挙区で得票率は50%前後に達している。
残りの50%を他党が分け合ってる状態なので、維新以外の候補者が小選挙区で勝つのは至難の業である。
自民党は多くの選挙区で10%以上得票率を下げており、そのほとんどは維新に流れたと思われる。
が、驚くべきは、維新が伸ばした得票率は自民党から“のみ”奪ったものではなく、立憲民主党や共産党からも少なくない割合を削り取っている(としか考えられない)ことである。
例えば、9、10、11区では民主系が、14、15、17区では共産党が野党統一候補であるにも関わらず、前回より得票率を減らしている。野党共闘戦略が失敗だったのは明らかだが、そこで減った票はどう考えても維新に流れているとしか思えない。
以前、維新は「現状破壊系革新政党」であると指摘したが、「共産党支持者ではないが改革を好む左派層」をも一定取り込んでいるのは間違いない。
今回の選挙で、維新はさらに改革色を強く打ち出していたが、それ自体は今に始まったことではないので、今回さらにその領域を拡大したということである。
よく、自民党の票が維新に流れている、自民党は支持者を固めきれていないという指摘がなされてきたが、今や維新は左派や共産党支持層すら切り崩してきているのである。
今後は、このことを前提として受け止め、対抗策を練ることが求められるだろう。
(エクセルデータご入用の場合は、面識のある方に限り、この件について私と雑談をしていただけることを条件に、差し上げますのでご連絡ください)
以下は各選挙区の短評。
【1区】
自・立・共ともに得票数にはあまり変化がない。都心部1区の特徴か、投票率上昇分がほぼ維新に流れている。左派票は2%が流出。
【2区】
自民11.4%、立民4%が維新に流出している。この選挙区の過去の傾向からは考えにくい変化である。
【3区】
公示前に混乱のあった選挙区。公明から9.4%が流出、恐らくほぼすべて萩原仁へ流れている。
【4区】
立民の立候補により自民の得票が減少したが、非維新票合計でも計7.9%が維新側に流れている。
【5区】
左派票の割れ方が変化しただけで構図は変わらず。公明が得票率を上げているのは他の公明選挙区にない動きである。
【6区】
完全に星けんたろうが保守層と反公明の受け皿となったと思われる。割と驚異的な得票数。
【7区】
左派票の合計はそれほど変わらず、共産、立民、れいわに割れただけだとすれば、維新が自民の票を大きく奪ったと考えられる。
【8区】
自民から12%、左派からも8%弱、維新が票を奪っている。自民は直前に候補者の変更があった。
【9区】
維新が前回から得票率を10%伸ばした。無所属候補は恐らく保守系で、社民から流出した3.5%は維新に流れていると思われる。
【10区】
最も不可解な選挙区。辻元清美から9.4%を維新が奪ったとしか考えられない。
【11区】
10区に非常に近い傾向。自民の3.6%、立民ベテラン平野博文の11.2%が維新に流出。
【12区】
ほぼ間違いなく、維新が自民票を10%以上削った。
【13区】
自民が前回の得票率を死守、得票数では増。前回の無所属は西野弘一で今回は維新支持に回っていた。よって左派票は6%ほど維新に削られたと思われる。
【14区】
自民から10%、共産からも5%が維新に流出。長尾たかしは公明の推薦受けず。
【15区】
自民新人かのう陽之助の票を維新が大きく奪った。共産からも2.5%ほど削っている。
【16区】
公明が得票率を落としたが、立民が伸びたわけではなく森山ひろゆきも得票率を下げている。まさかのN党が反公明と反左派の一部の受け皿になっている。
【17区】
自民から7.1%、共産からも3%が維新に流れている。維新が革新票を食っていることが最もわかりやすい選挙区。
【18区】
自民は13.3%と大きく得票率を落とした。維新と前回候補者がいなかった立民の両方から票を削られた格好。
【19区】
大阪で維新が得票率を下げた唯一の選挙区。維新と自民の票数は前回と大きく変わらず。落選したが長安たかしの得票はこの情勢下では驚異的な数字である。
以上