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懐古趣味を満たすミニPC8001

 昨日書いた機械学習専用ハードウェアの性能は数100TFlops|Tops とか、毎秒1000兆回=ペタ級の演算能力をもち、超高速メモリ数100GBという水準です。これに対し、発売40周年のNEC初のパソコンPC-8001 は、CPU がintel8080互換の、Z80Aで周波数が4MHz 。メモリは16KByteでした。メモリ容量は、私がメタデータ社で使っているテキスト解析AI用のサーバ1台(2.4GHz 64bit CPUが64個 )で搭載している320GB の200万分の1です。上記現有サーバの購入価格は中古だったので、PC8001の定価とほぼ同じです。

 PC8001 の超ミニ版が、最新ノートPCのおまけに付くと聞いて、少しぐらっと来ました。小さくともエミュレータで昔のソフトが16本ちゃんと動く。 

hdmi, uUSB, uSDスロットというモダンなインタフェースなので、いつでもどこでも手軽に使えるようです。リンク先にある「平安京エイリアン」など、16本のソフト名をみていると、1980年~の大学生時代を懐かしく思い出します。PCなど高価過ぎて学生の身にはとても手が届きませんでしたが。貧弱なハードでも、テキストVRAMという発明で日本語の複雑な文字を快適な表示を実現したことで、その後、半16bitのIBM JX等を性能比で駆逐する、などの優れた遺伝子を備えていました(後にそれが仇となってWindows対応が遅れたりしたのですが)。

 もう一つ、NEC PC 40周年で懐かしいお名前を目にして感動。1984年4月にNECに入社したときには、雲の上の支配人だった渡邊和也さんです。お元気に語ってらっしゃる! 

 半導体グループがコンピュータ部隊に殴り込みをかけた歴史が日本のパソコン誕生秘話でした。電電ファミリーのお堅い大企業内で、やりにくかったはずのベンチャービジネスが誕生した画期的な出来事だったといえるでしょう。

 8 bitから16bitの時代に移る際に、「これは洒落にならない。日本のビジネスを変える業務用計算機を半導体屋なんかに任せるわけにはいかない」とコンピュータグループが16bit機PC-98を生み出し、それ以前から16bitの個人向けPC-100を出していた半導体グループは、トップの裁断で8bitに戻りました。この際、「(仕事でない)一般個人、素人には低性能のコンピュータで良い」という致命的な判断ミスを犯しています。※自ら計算機に歩み寄れない素人にこそ、玄人向けより高性能なマシンが必要、という論理でなく、感覚で判断してしまったのでしょうか。

 その後、自由闊達なNECは、知財・法務部門が、短期の手柄を誇るのを優先してか、インテル互換CPUチップVシリーズを、32bit以降は非互換にするという致命的ミスを犯し、パソコン用汎用CPU市場を失い、上記理由からか家庭用PCも、同時期のMacや、それをぱくったWindowsに、逆にハードウェア側が完全支配されていく運命が決まって、面白い創造的な仕事が出来なくなっていきます。

 それ以前の汎用機でIBM PCM (Plug Compatible Manufacturer) として日立・富士通を死守したように、通産省の幹部がNEC vs Intelに介入して互換チップをAMDのようにずっと作り続けていたり、Windowsにも対抗馬として、軽快なジャストWindowを普及させ(DOSソフトだけでなくMS Windowsソフトもエミュレーションさせ)輸出も行い、仕様面でもMS Windowsの独占を許さないよう、猛スピードでかじ取りすることは不可能ではなかったと思います。

 この敗戦の教訓は、その後も活かされず、2000年代に、SNS、微博、検索エンジン、巨大ECなどで、中国が見事にことごとく米国発グローバル企業のGAFAに対抗できた際にも、再び痛烈な敗戦を喫したことで、学習能力がなかった、とみなされているかもしれません。いまから10数年前であれば、中国の何倍かのGDPで経済規模、資金面で対抗力がまだまだあったはずですが、それが適切に使われなかった。金よりも何よりも頭脳、先見性、ベンチャー、改革志向の欠如が問題だったのでしょう。

 ミニPC8001の素晴らしさに感慨を覚えつつ、上記のようなことをつらつらと思いだしました。3,40年後に、現在のAIを支える数100TFlops、超高速メモリ数100GBのマシンが、同じように、手のひらに載る、懐古マシン、おもちゃとしてリリースされるでしょうか。その頃主力の、今より100万倍高速な計算機で、より強力な道具というだけでなく、人間に近づいた「強いAI」が実現しかけているでしょうか。確率は低いものの、断層の進化(NEC元会長の関本忠弘様から最初に聴きました)は予見不可能だし、必ずしも予算規模によらずに起こるので、全否定はしません。ただ、AI応用アイディアを豊富に出し、それらを実証するミッションを担った自分の仕事ではない、ということで、クールに眺めています。


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