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ワインの価格はどう決まるのか?5つの要素を押さえておこう!

ワインは1本数百円のものから1万円、10万円、挙げ句の果てには100万円を超えるものまで存在するお酒です。

ブドウのみを原料としているところは同じなのに、なぜここまで価格の差が生まれるのでしょうか。

ここでは、ワインの価格の違いについて学んでいきましょう。

ワインの価格を決める要素5つ


ワインの価格を決める要素は、一般的に下記の5つと考えられています。

  • ブドウの量やワイン生産量、品質

  • 醸造や規則、保管

  • ワイン生産地

  • 希少価値とブランディング

  • 熟成年数や当たり年

これら要素以外にもさまざまな要素がワインの価格を決めていますが、まず上記の要素を解説していきましょう。

ブドウの量や品質

ワインの原料はブドウであり、ブドウが収穫できる量、また品質によって価格がワインに転嫁されています。

一般論としてブドウの収量が多ければそれだけ多くのワインを造ることができるため、少ない収量だった場合と比較してワインを安く売ることができるでしょう。

大量に流通させることを目的に数万トンのブドウを収穫してワインを大量生産するか、愛好家や一流レストラン向けに厳選されたワインを売る目的にブドウを厳選して収量を落としてわずかな数のワインを生産するかによってワインの価格が変わってくるのは理解できるのではないでしょうか。

大量のブドウから多くのワインが造られる場合は安く、少量のブドウからわずかな生産量のワインが造られる場合は高くなる。

上記が、ワインの価格とブドウの収量、生産量の関係性の基本です。

ただし、ワインにおける原料ブドウと価格の関係性は複雑であり、そこに品質が伴うため一概に上記の内容が当てはまるとは限りません。

例えば、1haあたり150kgのブドウを収穫した場合と15kgのブドウを収穫した場合を考えましょう。

ワイン1本あたり、1.5kg前後のブドウが必要とされているため、単純計算すると15kgであれば100本、15kgであれば10本の計算になります。

ただし、150kgのブドウを栽培する生産者が最新設備を投入したり凄腕の栽培家を雇ったり、本来はその数倍の収量が期待できるブドウ樹があるものの、厳選してブドウを栽培していたりした場合、高価なワインとなる可能性があるでしょう。

古木の貴重なヴィエイユ・ヴィーニュでブドウ栽培が行われていた場合、収量が減る上に手もかかるため、それらコストがワインの価格に転嫁されます。

一方、1haで10本しかワインを生産しないとなると希少性は高まりますが、放置状態でたまたま収穫できた低品質なブドウからワインを造ったとなった場合、価格が安くなる可能性は考えられます。

つまり、収量もポイントですが、そこにブドウの品質が掛け合わさることでワインの価格が決まってくると考えるのが良いでしょう。

醸造や規則、保管

ワインにおける醸造や規則、保管も、ワインの価格に影響を与えます。

少量のワインを醸造家がこだわって1人でじっくりと醸した場合と、最新鋭設備を整えて一度に数万本以上のワインを醸造できるメーカーの醸すワインであれば、やはり前者のワインが高くなる傾向です。(設備代などが価格に転嫁されることもある)

さらに高級な新樽を大量に使用するのか、ステンレスタンクか、従業員がどれだけいるかといった要素もワインの価格に影響を与えます。

また、シャンパーニュをはじめとした有名産地の場合、その地域の名を冠するワインを販売するためには厳しい規則(ワイン法)を守る必要があります。

その技術や手間、さらに収穫したブドウや仕上がったワイン全てその基準を満たすとは限らないため、規則をクリアしたワインはよりブランド価値が高まるでしょう。

そして、保管もワインの価格を決める要素のひとつです。

ボージョレ・ヌーヴォーなどの新酒、一部の白ワインは収穫・醸造の後にすぐに瓶詰めして販売できますが、一般的な赤ワインや熟成を必要とするワイン、規則で熟成年数が決められているワインの場合、ワイナリーで保管しなければなりません。

1本のワインを売りに出すまでに5年以上かかる場合もあり、それらワインは価格が高くなる傾向です。

ワイン生産地

ワインの生産地もワインの価格に影響を与えています。

ワイン生産地とワイン価格の差は、フランス ブルゴーニュを例に挙げるとわかりやすいでしょう。

ブルゴーニュには、ユニークな「AOC(原産地統制呼称制度)」が設けられており、地域名・ 村名・一級畑 ・特級畑といったピラミッド式に区分されています。

地域名とは広域アペラシオンのことで、ブルゴーニュAOCといったかたちでその地方内で造られたワインとして売り出すことが可能です。

一方で特級畑、つまりグラン・クリュのブドウのみを使用して醸されたワインは、〇〇グラン・クリュAOCと名乗ることができ、よりブドウの出どころの範囲が狭いことから価格が一気に跳ね上がります。

長い歴史の中で、ほかの産地よりも品質の高いブドウが収穫できると指定されている場所は、同じブドウ品種で同様の醸造をしたとしても価格が高くなるのがワインの世界です。

一方で、今までは無名の産地であっても、「この場所から生まれるワインは素晴らしい」と何らかのきっかけで世界中に知れ渡った場合、急激にその産地のワイン価格が高騰することも起こりえます。

どの産地のブドウを使い、どこで造られたワインか。

これもワインの価格に大きな影響を与えているのです。

希少価値とブランディング

希少価値の高いワインは、高額になる傾向です。

ただし、希少価値の高さだけではなく、そこには密接にブランディングもかかわってきます。

最もわかりやすい事例を1つ紹介しましょう。

それが、1本100万円を超える超高級ワイン、ロマネコンティです。

生産量は少ないヴィンテージで4,000本、多くても7,000本と言われており、世界中のロマネコンティを手に入れたいと考える愛好家の数と需要と供給のバランスが大きく崩れています。

まず、ロマネコンティの歴史や栽培方法、醸造方法などはある程度は世に出回っているものの、完全な中身を知る人間はほとんどおらず、ある意味で謎に包まれたドメーヌと考えることもできるでしょう。

ロマネコンティは完璧な球体と表現されたり富裕層の証と認識されていたり、投資に利用できると考えられたりしていることから、価値が下がることはありません。

完璧なブランディングのもと、飲みたい・入手したいと渇望する人間が年々増えていく上に、生産量は年々変わらずわずかな数量。

結果的に、価値が高まり驚くべき価格で取引されることになるのです。

ここで理解したいのが、希少価値が高いだけでなく、そこにブランディングを絡ませることで価格がワインに大きく転嫁されるといったところにあります。

無名の名前も知らないワイン初心者がワインを10本生産したとしたら、生産量は年間10本なのでワイン自体の希少価値が高いと言えるでしょう。

しかし、とくに名前も知らず宣伝もしない、ネットでこっそりと売っているといった場合、高額な価格をつけても販売するのは難しいかもしれません。

一方で、神の畑、ビオディナミ、ブルゴーニュで10年トップ生産者として働き父の跡を継いだ新進気鋭の醸造家が手がけた、海外の超有名評論家が絶賛したワインとなった場合、当初1本1,000円で販売したワインが10万円でも販売できる可能性があるのです。

ブドウ、醸造、生産地もワインの価格に関連しますが、一方で生産者のブランディングや希少価値がそれを上回る価値を生み出すこともあります。

熟成年数や当たり年

ワインの価格に影響を与える要素が、熟成年数や当たり年です。

熟成年数は上記でもお伝えしたように、ワインを瓶詰めした後に熟成させる工程を経ているため保管におけるコストがワインに転嫁されます。

一方、10年、20年の熟成に耐える高級ワインや規定を大きく上回るこだわりの熟成を経たシャンパーニュなどの場合、保管コスト以上に、“ワインの価値”が高まることで価格が変化していきます。

とくにワインには優れた気候条件などが揃った、“当たり年”と呼ばれるヴィンテージがあり、そのヴィンテージに造られたワインは通常のものよりも市場価格が高くなる傾向です。(あくまで高級ワインの場合)

当たり年の高級ワインは、そうでないヴィンテージのワインと比較して長期熟成能力が高く、飲み頃を迎える頃にはより高額な価格となっていることがほとんどでしょう。

さらに当たり年の高級ワインは市場でも人気が高まるため品薄になるため、正しく長期熟成を経て市販される本数はより少なくなっていき、希少性が高まります。

当たり年のワインが長期熟成され、さらに希少性が高まっていくに連れて価格もどんどん高額になっていくと考えることができるでしょう。

しかし、ここで注意すべき点として、“熟成年数が長い=価格が高くなる”ということではありません。

熟成を経たワインの中には単純に出荷されなかったもの、ピークを過ぎたり、もともと希少価値の高いわけではないカジュアルなワインもあります。

さらにワイナリーが意図して長期熟成させたのではなく、出荷後にワインショップで売れ残ったことで長期熟成となったというワインの場合、価格は出荷時と変わりません。(むしろ安くなっている可能性あり)

あくまで、ワイナリーの意図で熟成させた高級ワインの場合、それらコストや価値が価格転嫁される、さらに長期熟成と希少価値が増したことで需要と供給のバランスによって高くなるといった構図を理解しておきましょう。

ワインの価格設定は複雑

ワインの価格は、非常に複雑な要素が絡み合って決まっています。

さまざまなコストを算出した上で価格が決まっているワインもあれば、生産者の哲学とブランディングによって決められているもの、また市場の需要と供給によって決まることもあり、大変複雑です。

しかし、基本的なポイントとして本記事でまとめた内容がワインの価格を決める要素になっています。

基本を押さえた上で、ワインの価格についてあらため考えてみましょう。