見出し画像

日本を代表する白ブドウ品種「甲州種」を知る!甲州ワインの特徴も押さえよう!

近年、急成長を遂げているワイン産地といえば、「日本」。

令和4年におけるワイナリー数は450場を超えるなど、今や日本全国でワインが造られている状況にあります。

そんな日本のワインを代表するブドウ品種が、「甲州種」です。

甲州種から造られる甲州ワインは繊細さとエレガントさ、奥深さが表現された、日本ワインを代表する存在として知られています。

ここでは、日本ワインで最も有名と言っても過言ではないブドウ品種、甲州種について学びます。

甲州種は日本を代表する白ブドウ


甲州種(甲州ブドウとも呼ばれる)は、日本を代表する白ブドウ品種のひとつです。

ワイン用としてだけでなく生食用と兼用されている品種で、甲州ワインとしてだけでなく、青果店やスーパーマーケットなどで、“生食用ブドウ”としても販売されています。

甲州種は白ブドウですが、果皮が藤紫色の、“グリ系品種”であり、灰色っぽい色合いをしているところも特徴です。

甲州種は白ワインの原料として日本で最も多く仕込まれており、山梨県がその生産量の9割を占めます。(島根県、山形県の生産量も多い)

日本ワインを多く生産する山梨県の主要品種であることから、甲州種は日本を代表する白ブドウと認識されています。

甲州種の歴史


甲州種はヨーロッパが起源の白ブドウであり、生食用も兼ねていますがシャルドネなどと同様にワイン用ブドウ(ヨーロッパ系品種)、“ヴィティス・ヴィニフィラ”であることが証明されています。

ヴィティス・ヴィニフィラとヴィティス・ダヴィーディ(中国の野生種)のDNAを持っており、シルクロード経由で何千年も年月をかけて日本へと渡来したと考えられているようです。

甲州種が初めて発見されたのは山梨県の勝沼だと言われており、そこには2つの説が存在します。

それが、行基説と雨宮勘解由説です。

それぞれ下記で解説します。

行基説

718年、奈良時代の僧であった行基が修行中、右手にブドウを持つ薬師如来の夢を見たとされています。

その薬師如来の姿を木彫りとして制作し、柏尾山大善寺へ安置。

その頃にブドウ樹を発見し、それを薬草として育てたことで村人に知られるようになり、甲州種になったという説です。

雨宮勘解由説

山梨県勝沼の雨宮勘解由が1186年、山ブドウとは違う蔓植物を発見し、それを自宅の庭で育てたものが、「甲州種」だったという説。

どちらの説もあくまで、“伝説”として語り継がれている内容ですが、古くは甲州種の栽培は山梨県のみに許されていたこと、献上品として利用されていたことなど、勝沼を中心に山梨県が甲州種の主要産地であることは揺るぎない事実です。

甲州種の特徴


甲州種は、高温多湿な日本の気候条件に適応する白ブドウ品種で、耐病性に優れたブドウとして知られています。

樹勢が強いため多くが棚仕立てで栽培されていますが、垣根仕立てで栽培されることもあり、生産者が目指すスタイルによってもその栽培方法はさまざまです。

甲州種から造られる甲州ワインは香りがなく、“水っぽい”と低く評価されていましたが、生産者や関係者の努力と生産技術の向上、科学的アプローチなどから、現在では驚くほど品質が向上するようになりました。

一般的に甲州ワインは透明度が高い美しい色合いで、香りは柑橘や青リンゴ、ジャスミン、ユリの香りがあり、酸味が穏やかで後味にほのかな苦味を感じます。

非常にエレガントな仕上がりで、世界からも香りやボディをパワフルな感じられる輸入ワインとは別のスタイルとして注目される存在です。

また、研究によって甲州種にはソーヴィニヨン・ブランに含まれている3MHなどの香り化合物が含まれていることがわかり、中にはグレープフルーツを思わせるフレッシュな香り最大限引き出した甲州ワインもあります。

さらに、甲州ワインはその繊細さから下記のさまざまなアプローチで造られています。

樽発酵→樽由来の成分が溶出、ヴァニラの風味などが付与されたリッチな甲州ワインになる

シュール・リー→一定期間、ワインと澱を一緒に置いておく製法で、より厚みとフレッシュ感が増した甲州ワインになる

スキンコンタクト(オレンジワイン)→グリ系ブドウである甲州種は、一定期間果皮と果汁を接触させることで、ほんのりオレンジがかったオレンジワインに仕上げることもできる(コンポートなど、甘い香りを感じる)

ピュアな甲州ワインだからこそ、さまざまな醸造アプローチとの相性が良く、個性的な白ワインが生み出されます。

和食との相性が良い


甲州ワイン最大の特徴は、“繊細さ”です。

ボディの強いタイプの甲州ワインもありますが、香りや口当たり、風味、後味を総合的に見ると、輸入ワインとは違う、“やわらかさ”を感じることができるでしょう。

ワインと料理のペアリングと言うと洋風な料理をイメージしますが、甲州ワインは和食と合わせやすいワインとして広く知られています。

料理の味わいを邪魔せず、さらに魚介類の臭みなどを増幅させないことから、刺身や寿司、魚介類の出汁を使った和食と良い相性を示します。

味噌や醤油といった日本が誇る発酵食品とも喧嘩せず、日本における日常の食卓に使いやすいところも魅力です。

甲州種、甲州ワインは日本の誇り

ヨーロッパを起源に持つ甲州種。

数千年の歴史を経て日本へと渡来し、山梨県勝沼で広く栽培されたことで、今や日本のワインを代表する白ブドウ品種へと成長を遂げました。

年々注目度が高まる日本ワインを知る上で、まずは代表的な白ブドウ品種である、“甲州種”、そして甲州ワインの基本を押さえておきましょう。