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IoTのビジネスモデル

IoTのメリット?

バズワードとなっていますIoTですが、これはInternet of Thingsの頭文字をとったものです。これは、さまざまな「Things=モノ」をインターネットに接続する技術のことで、最近急速に注目を集め、幅広い分野での活用が期待されています。

この技術がもたらすメリットとして、一般的には以下のようなものが考えられると指摘されています(ビッグデータの利活用は、収集し終えた情報の取り扱いに関するものなので、ここでは割愛します。)。

①コスト削減(管理のための人材やスキルが不要になる)

② 製品開発やサービスの改善につながる

③ 顧客との関係を強化できる

これらのメリットが(理論上は)認められる点について異論はほとんどないものと思われます。しかし、これら3つのメリットはいずれも表層的なものであって、IoTの本質をついているものとはいえないような気がしてなりません。

これら3つのメリットに通底するIoTの本質は、実は、「フィードバックとしての情報の流通を確保できる」ところにあるのではないでしょうか。

情報の流通の重要性

情報の流通の重要性について、ドネラ・H・メドウズは、「世界はシステムで動く」において、次のように指摘しています。

システムでうまくいかないことの大半は、情報が偏っていたり遅かったり欠けているからではないかと思います。

ここでのシステムとは、 一連の要素や部分が整然と組織され、相互につながったもので、多くの場合「機能」または「目的」と称される、特徴的な一連の挙動を生み出すパターンや構造を持つものを指しますが、平たく言えば、何らかの「仕組み」のことです。

そしてドネラは、同書において続けて以下のようにも指摘しています。

情報の流れを混乱させることで、システムをめちゃくちゃにすることができます。

つまり、情報の流れを恣意的に操作することで、システムは破壊されるというのです。

システムは正確な情報により機能する

そもそもシステムは、基本的には情報を媒体とするフィードバックを通じて機能しています。ある要素から他の要素への情報の伝達を通じて、全体が合目的的に作動することができるのです。この点については、スポーツチームや企業という組織をイメージしても、精密機械をイメージしても、直感的にわかるところだと思います。

また、このようなシステムで虚偽の情報が流されたり、著しく古い情報が流されたりした場合、組織や精密機械が正常に作動しないことも、同様に直感的に理解できます。情報公開法や、ゴルバチョフが実行したグラスノスチなども、このような前提に沿って設計されているものです。

このように、情報の取り扱いに恣意性が加わると、システムは機能しないのです。逆に、取り扱う情報が豊富になると、システムはより効果的に機能しうるのです。したがって、システムが正常に機能するようにするための一つの工夫は、必要な情報を、正確に、漏れなく、タイムリーに、適切なところへ届けることにあるのです。

そのための極端な(究極の)処方箋のひとつが、「情報を人間に取り扱わせない」というものです。情報の検知・入力・送信という作業は、これまでは人間に頼らざるを得ませんでした。そのため、伝達される情報は不正確になり、漏れが発生し、遅れが生じてしまうことも多々ありました。必要だと思っていた情報の収集も諦めていました。

ところが、ここにきてIoTへの期待が高まってきたのです。

情報を人間に取り扱わせない

IoTによって、ありとあらゆるデバイスから情報を機械的に収集して、これを漏れなく必要なところにタイムリーに届けることが可能になります。「情報を人間に取り扱わせない」ことで、情報のフィードバックの豊富さ、正確性が劇的に高まることが期待できるのです。これはすなわち、システムが正常に、より効率的に作動することが期待できることと同義です。

この点、「危険運転履歴」という人間による自己申告がおよそ期待できない情報を収集して、保険システムの作動を正常化・効率化を試みる「コネクティッド・カーによる変動型保険サービス」( テレマティクス保険)は、これをとてもよく体現しているものだといえます。

以上のとおり、冒頭で紹介した①コスト削減、② 製品開発やサービスの改善につながる、③ 顧客との関係を強化できるというメリットも、根本的には、人間を介在させない形での情報の流通が実現されることによる副次的なものだといえます。

IoTの本質

このように考えると、IoTは、人間を介在させないことで、必要な情報を豊富に正確に集めることのできるフィードバック技術なのであって、実は特に目新しい概念でもないことがわかります。IoTの源流となるICT技術は、テレマティクス保険、POSシステムやコマツのKOMTRAXですでに実現されているのです。

Internet of Thingsというのは実はミスリーディングで、Data of Everythingと称したほうが実態に即しているかもしれません。IoTというバズワードに踊らされることなく、その機能の本質を意識して、従来から存在する技術を補助線として考えることで、さらなる広い分野においてIoTを効果的に活用することができるのではないでしょうか。

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