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日々新又日新〜映画『PERFECT DAYS』鑑賞日記

日々新又日新

124分
この映画をずっと観続けられる。
なんならもっと観ていたい。
そう思わせる映画の魔法がここに宿っているからだ。

東京のトイレ清掃者である平山さんの日常を延々と淡々と描く。
それだけなのにこんなに面白い。

そして日々の生活の大切さを教えてくれる。

毎日同じような生活といえど、大小いろいろなことが起こる。
心もざわめき、揺れ動く。
それをやりくりしながら、日々の小さな楽しみや幸せを見つけながら、やさぐれず肯定的に生きる平山さん。

彼の過去や事情は一切説明されない。
彼の所作や読んでいる本、姪や妹とのやりとりから想像するしかない。

また、何よりカセットテープから流れる音楽センスよ♪

彼なりの人生に対する後悔や反省、鬱憤もきっとあるだろう。

しかし彼は、不平不満を漏らすことなく、寛容な態度で生活している。
自分の役割をきちんと果たす。
足るを知っているのだ。

草木を愛し、空を仰ぎ、木漏れ日の写真をモノクロで撮る。
毎日同じようでいて、一日一瞬たりとも同じことはない。

四季の変化やうつろいを日々感じているだろう。

日々新又日新

そういう丁寧な生活を私たちはしているだろうか。

平山さんの禅的アナログな暮らしぶりを見つめながら、いかにこの世の中で心穏やかに丁寧に、日々を慈しみながら生きていけるか。

「今度は今度、今は今」

いたずらに今後のことに期待し過ぎたり、不安になり過ぎたりせず、今をきちんと生きろ。
そう言われている気がした。

平山さんのような者に私はなりたい。
(宮沢賢治風)

そう思わせる役所広司の演技と監督の演出、撮影、音楽。

映画の魔法にかけられた124分であった。

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