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誕生日

母の小言を聞いていたら日付が変わった。

今日は私の誕生日なのに、母は最後までブツブツ文句を吐きながら寝室へ消えていった。

私が欲しいものはケーキでもなくプレゼントでもなく、おめでとうの言葉でもない。
私の話に少しでも耳を傾けて、理解しようとしてくれる母親が欲しい。

3年前の今日、私が母親からもらったのはお祝いの言葉ではなかった。

「穀潰し」

そう言って母は、誕生日を迎えた私にサンダルと台拭きを投げつけた。

私はその時高校受験の大詰めを迎えていて、下校してから夜遅くまで塾にこもっていた。そのため母から頼まれていた風呂掃除が母の帰宅に間に合わなかったのだ。

受験勉強のために 手伝いもせず食事のためだけに家に帰るような私を、母はタダ飯食らいの役立たずと罵った。
母親の怒号の中で、私には理由を説明する余地すら、与えられなかった。

その年以来、母が私の誕生日に祝いを述べてくれたことは無い。
私は母からの祝福を望んでいないし、母は口を開いても小言しか出てこないらしい。

「手伝いをせずに塾に行ってごめんなさい。でも、受験本番が近くて今が頑張り時なんです。受験が終わるまでの間だけでも、お風呂掃除を代わってくれませんか」

3年前、こう説明できるだけの時間と彼女の譲歩があれば、今年の誕生日は心穏やかに祝って貰えたのだろうか。

18になった私は鬱で引きこもりで、滅多に手伝いをしなくなった。
母はもう私に対して諦めがつき、ストレスの捌け口として扱うことがほとんどだ。

虚しく寂しい 18歳最初の夜だ。

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