スケートボード
昨日、川沿いを1人で散歩してた。先を歩く2人組の男女。男の靴に見覚えがあった。穴が空いた白のコンバース。スニーカーに穴が空くのはスケボーを練習した証。少し近付いて声が聞こえた。君だとわかった。隣の女の子は「ごめんねぇ〜酔っぱらいで〜」とふわふわしながら彼の腕を組んでいる。私から離れて、幸せになってほしい人の話。
なんでも良かった時期、アプリで出会った山添くん(仮)の話。アプリが示した君との距離は100m以内。話が進んで、電話をして、同じ最寄りでドがつく程近所に住んでる1個下の子だと知った。
欲望が渦巻くあの媒体の中で、君はただ友達を探してたらしい。嘘でも本当でも良かった私は君の誘いに乗って近所の散歩相手になった。寒い11月頃だったけど、近所の川沿いをずっと歩いて、適当に喋って、帰る。そんな感じだった。
君の好意に気が付いたのはいつだろう。知っていながらそれを無視していたのはいつからだろう。
あの時の私は、温かい居場所が欲しかった。君と行けるのは寒い冬の夜の川沿い。私が欲しかったものとは違ってたんだと思う。結果的に私がこの時に選んだものは間違いだったけど。
山添くんは中学高校と苦労をしてきたらしい。家族関係と、人間関係においてどうも運が悪いようで。祖父母の元に引き取られてここへ引っ越してきていて、ここから大学進学を目指して浪人するつもりで頑張ると言っていた。
「暇だと寂しくなっちゃうんだよね」という私の呟きに
「暇なら勉強しよって俺は思う 勉強するから暇じゃないって」と返した君には関心したよ
運動しようって約束で君と集合した。公園でなわとびとフリスビーをした。20歳近い2人がするような遊びじゃないよと思いながらも、結構楽しかった。帰りは君のスケートボードに乗った。君に手を引っ張ってもらう形で、何度も転びそうになっては君の手をすこしわざとギュッとした。
ふとそんな自分に嫌気がさした。どうして私は今わざとこの子の手をギュッとした?私はこの子とは付き合えないのに。これ以上近付いちゃいけないと思った。これまで十分たくさんの人に傷付けられてきた君を、これからも傷付ける人間になりたくなかった。
そこから君からの連絡を無視した。他の人みたいにブロックしちゃえばよかったんだけど、それはなんかできなかった。
3月、「卒業したよ!」とLINEが来た。これまでたくさんの未読無視をしてきたことをさらに無視して「卒業おめでとう!」とだけ返した。君の次の春は晴れだといいな。
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