M-1グランプリ2021で、まだ見ぬ「大好き」を発掘しようよ【全ネタ感想】
ファイナリスト9組が決定した瞬間から「波乱」と呼ばれた『M-1グランプリ2021』。終始ワクワクが止まらなかった本大会の感想を、敗者復活戦から大会の総括まで、異常な熱量で綴っていきたいと思う。
■敗者復活戦
作り込まれた過酷な環境下で行われる敗者復活戦。たしかに私は漫才師の親でもなんでもないが、「どうにか暖かい場所で漫才をしてほしい」という気持ちが制作側に届く日は来るのだろうか。
とかなんとか考えている間に番組は開始して、私は漫才師本人でもなんでもないのに、謎の緊張を抱えながらテレビに向かう。
1.キュウ
トップバッターであるキュウの漫才が始まった。冒頭で静かに与えられる違和感と法則。システムが分かってからもどんどん予想だにしない方向に広がって、次が気になって仕方なくなる漫才だ。
決してトップバッターで盛り上げ役という雰囲気を持つコンビではないものの、「いよいよ始まった」と、心のボルテージがかなり上がった。
最終的な順位は16位/16組。
2.アインシュタイン
続いて登場したアインシュタインは稲ちゃんの顔を生かしたネタ。彼の顔の持つポテンシャルはいわずもがな、明るい口調で不気味さが際立つ独特なキャラクターは、切れの良いツッコミと相性がよくて気持ちいい。
ただ、これまでの準決勝/敗者復活経験数の分、過去の彼らと比べてしまう部分がないと言ったら嘘になる。
最終的な順位は、7位/16組。
3.ダイタク
彼らのネタ「葬式」は準決勝でも大いなる盛り上がりをみせていた印象。本当にテンポと聞き心地の良い漫才で、双子ならではの設定を生かした特殊な内容も個人的にとっても好きだ。彼らはもうストレート決勝に手がかかっているのではないだろうか。
しかし3番手といえどまだまだ序盤。客席はまだそこまで盛り上がりきっていないのかもしれないという印象も受けたり受けなかったり。
最終的な順位は、14位/16組。
4.見取り図
彼らのネタを見て、最初の感想は、「勝ちにきているな」だった。客席の共感を呼ぶ掛け合いや大きな動き、なによりボケのテンポや畳み掛けがより意識されているような気も。
圧倒的な貫禄と、勝ちに行く貪欲な姿勢には勝手に熱い気持ちになった。
最終的な順位は、4位/16組。
5.ハライチ
テレビスターとしてのオーラがにじみ出る、ラストイヤーのハライチ。掛け合いの多いネタではないが、澤部さんの嘆きのパワーたるや。また、誰よりも過去の自分達と比べられてしまうはずなのに、永遠に新しいものを発信できる部分に圧倒的な強さを感じた。
これまでの功績や本人たちの熱い想い、いろいろな積み重ねがピッタリと重なった復活だったのではないだろうか。
最終的な順位は、1位/16組で決勝の舞台へ。
6.マユリカ
彼らのことがツボすぎるのでフラットな目で見ることが少し難しいのだが、会場もとても盛り上がっているように感じた。構成はシンプルでありながら、ひとつひとつのボケにパンチが、挙動にはキモさがつまりまくっている。
中谷さんは準決勝終了後に「へんてこしっこ」でパブサをしていたらしいが、その気持ちも理解できるくらい「へんてこしっこ」はパワーワードだ。
最終的な順位は、6位/16組。あと、ご存じない方に伝えておくと、彼らは最近ビキニ写真集を出して、それが1000冊売れた。
7.ヨネダ2000
この大会が本戦まで全部終わって、最初にYouTubeでネタを見返したくなったのはヨネダ2000。とにかくめちゃくちゃ笑った。(権利関係で)準決勝動画を観ることが叶わなかったことも関係しているだろうが、「Def Techの下ハモリの外国人」と、「ちくしょう」の応酬に信じられないくらい笑った。
明らかに変なことをしているのに、当たり前のように進んでいくルール無用の世界観と面白さ。たぶんこれから、彼女たちを観るために神保町に行くようになってしまう気がしている。
最終的な順位は、10位/16組。
8.ヘンダーソン
最初はただのコント漫才のように見えて、人間らしさの見える独特なシステムを持つヘンダーソンのネタ。
ちょうどいい塩梅の卑屈さとコミカルさで、コンビ自体が積み重ねた魅力のようなものを再認識した。
最終的な順位は、13位/16組。
9.アルコ&ピース
もうこれは完全に好みになるのだが、私はメタ的な発言や設定を含む漫才があまり好きではなく、そういう意味であまり楽しめなかったのが悔しい。
しかし、彼らにしか出せない雰囲気を基盤とした独特の漫才は、風格がある。そしてその風格をまといながらも鳥として地を羽ばたく様子にはだいぶ笑ってしまった。
最終的な順位は、11位/16組。
10.カベポスター
いつも「見てるほうがちょっと頭使うね」みたいな評価を下されるカベポスターだが、私は彼らのネタのそういうところがとても好きだ。今日のネタも同様に。
また、結局ネタ自体がすごいのだから、つかみだけに言及するのは少し嫌だけど、やっぱりつかみは褒めざるを得ない。糸電話は本当にゴミ。
彼らはいつどのネタを見ても同じくらい完成度が高い印象があり、決勝進出も時間の問題だと思う。一方で敗者復活に必要な「圧」みたいなものを出すのが得意な印象はないため、そろそろストレートで行ってしまってほしい。
最終的な順位は、15位/16組。
11.ニューヨーク
変わった設定で暴れる嶋佐さんを一貫して押し出したニューヨーク。後半にかましてきた「暴れ」の畳み掛けは、もう笑わざるを得ない。
個人的には、彼らの悪意がより一般的な部分に向けられている方が好みかもしれないと思ったり。
最終的な順位は、8位/16組。
12.男性ブランコ
男性ブランコが今年のキングオブコントで残した功績により、視聴者が彼らの独特な言い回しを受け入れる体制はかなり整っていたのではないだろうか。
全治癒とか、ベスト10から漏れ漏れとか、すぐ言いたくなるようなパワーワードが盛りだくさんで、ただただ好みだった。
もはや、彼らは33期の“隠れた”エリートではない。34万票集まったことで市長への立候補も考えている平井さん、めちゃくちゃ良かった。
最終的な順位は、3位/16組。
13.東京ホテイソン
ここはいつもめちゃくちゃ笑ってしまう。パワーがすごい。パワーがすごいのに、毎度毎度新しいシステムを作ってくるのも本当にすごいことだと思う。
昨年の決勝の舞台ではちょっと難しいネタみたいな扱いにされていたが、彼らのネタはいつもだいぶバカバカしくて爆発力がある。
また若干ニュアンスな話になるが、ワードのひとつひとつがだいぶ「インターネット」に寄ってきている気がして、ここに関しては好みが分かれる気もしたりしなかったり。
最終的な順位は、5位/16組。
14.金属バット
媚びがボケになるのは、つくづく彼らがこれまで積み重ねたパブリックイメージ諸々の賜物だと思う。
もちろんネタ自体は彼らの持ち味が存分に生かされていてとても良いものだと感じたが、それ以上に感じたのは「投票したい」と思わせる力。こんなコンビが上がったら面白いだろう、決勝で見てみたい、と感じさせられる一部始終だった。
最終的な順位は、2位/16組。
15.からし蓮根
からし蓮根は、いつでも安定感のある王道コント漫才スタイルを見せてくれるので安心する。ヤバいことを無自覚にできちゃう人、伊織さんがやることで本当に自然に仕上がっているのがすごい部分だと思う。
しかし、ここまででかなりあらゆる種類の漫才を見せられて、超終盤の登場となったシンプルなコント漫才はサラリと通り過ぎてしまったような印象も。
最終的な順位は、9位/16組。
16.さや香
異様なインパクトでトリを飾ったさや香。喋りでも「熱量」が持ち味の彼らが、その持ち味を全面に出す形で持ってきていて、意味がわからなすぎて、笑ってしまった。
笑う部分が合っていたのかどうかは、いまだにわかっていない。
最終的な順位は、12位/16組。
敗者復活戦全体を通して
まだ本戦も始まっていないというのに、全組面白すぎる。そして毎度のことだが、こんな猛者たちに勝って本戦に出場する9組のネタを見るのが一層楽しみになる敗者復活戦だった。
私が最終的に投票したのは「マユリカ」「ヨネダ2000」「男性ブランコ」の3組だった。とにかくたくさん笑ったし、本能的に「好きすぎる!!」と感じたからである。迷ったのは「ダイタク」「東京ホテイソン」。
そして、上記の3組に投票しつつ、インターネットなどの様子を見ていて、男性ブランコと金属バットのどちらかが決勝に行くのだろうなあ…とふんわり予想していたが、世界は広かった。
また余談だが、戦いのシステムで毎年気になってしまうのは、採点の途中経過発表についてである。
おそらく2年前から行われている、全国の視聴者によるこの採点システム、「途中経過を発表してしまうのってあまり良くないのでは?」といつも思ってしまう。
ネタを見ていない人間が同調圧力のようなもので高得点の人に高得点を、そうでもない人には低い点数を、適当に入れるのではないか……という考え方もできるから。
まあ実際には途中経過を見るどころか、とりあえず好きな人に票だけ入れる層もたくさんいると思うので、こんな問題提起以前の話なんですがね。
■1stラウンド
ここからは、決勝本戦の感想を、ネタ披露順に書いていこうと思う。やっと、やっとこれから本戦の感想だ。
ネタに入る前の部分でいうと、審査員の登場の仕方が異常に格好良かったのが印象的。
また、ネタ前にはいつも通り激アツの煽りV。「俺たちが 一番 面白い!!」の部分、最後の「面白い!!」枠を勝ち取ったのはゆにばーす川瀬名人だった。
1.モグライダー(637点/8位)
ネタ「美川憲一」
大会終了後に「トップバッターじゃなかったら……」とこれだけ言われるのも納得してしまう。めちゃくちゃ笑った。美川憲一さんを「気の毒」とするところから、最高すぎる。
終わり方もハッピーで、客席もトップバッターとは思えないほど盛り上がっていたのではないだろうか。
私はネタの途中から、ともしげさんの様子が常におかしいことに対して、笑いが止まらなくなった。そしてネタ終了後にじんわり噛み締めたのは、突然実践に入るところに違和感を持たせない芝さんの上手さ。
予選の動画の音声がカットされていたことにより、個人的にかなり新鮮な気持ちで放送を楽しむことができたという点においては、ヨネダ2000と共通している。
また、実は今年のM-1予選開始まで彼らのネタをほとんど見たことがなかった私は、この4分でモグライダーを完全に大好きにさせられてしまった。
2.ランジャタイ(628点/10位)
ネタ「風猫」
波乱の中心人物として注目されていたランジャタイ。「後半で見たい」という意見も多く見かけた彼らだが、かなり序盤での登場となった。
待機場所からの移動、採点中の立振舞い、点数発表後の反応、敗退時のコメント全部含め彼らの持ち味が存分に出ていたことは確かである。ネタの終わりがわかりづらくて効果音が流れずに会場全体が戸惑っていた時間、好きだった。
あれだけ審査員を唸らせて、「きちんと」最下位も取ったわけだし。
わけがわからないようでわかるようで、やっぱりわからない唯一無二な彼らのネタはきっと多くの中毒者を出しただろう。
またモグライダー、ランジャタイが1番手、2番手を務めたことで「今までの自分が知っているような漫才で安心させてくれ」というような空気感がじわじわと広がり始めていたような気もする。
3.ゆにばーす(638点/6位)
ネタ「ディベート」
ここで返り咲き組のゆにばーす。3番手は、はらさんが望んでいた出番順だったらしい。
圧倒的な喋りの仕上がりと、台本の完成度は誰もが感じ取ったはずだ。正論をかましあいながら、立場状況がみるみる移り変わっていくさまは痛快すぎる。
採点終了後の審査コメントでも、その圧倒的な完成度を褒められていたものの、いまいち合計点は伸びなかったのは、”笑わせるために練り上げた”部分が見え隠れしていたからなのだろうか。つくづく、M-1って一筋縄ではいかない。
4.ハライチ(636点/9位)
ネタ「スポーツがしたい」
敗者復活を勝ち抜き、決勝の場にやってきたハライチ。
不条理の繰り返しがとにかくずっと面白いこと、敗者復活と違うネタを持ってきたことに感服でしかなかった。
これまでの彼らを知っていて、なおかつ繰り返しにハマるともう笑いが止まらなくなるのではないだろうか。
大会終了後の打ち上げ配信では「やりたいネタができた」と語った彼らの、暫定ボックスからの敗退が決まったときの清々しい様子も印象に残った。
5.真空ジェシカ(638点/6位)
ネタ「1日市長」
今年こそは準決勝にくるだろうと2-3年以上にわたって言われていた真空ジェシカ。初の準決勝と同時に初の決勝も勝ち取った。
ひとつひとつのワード、大喜利が怖いほどの超絶クオリティ。
メチャクチャなように見えて「市長の1日」であるという軸と細々した伏線回収が常に進んでいて、まとまりすら感じた。
(敗者復活の東京ホテイソンの部分でも書いたが)ニュアンス的に「インターネット」の色が濃いワードは、客席には確実にハマっていたが、好みや世代を選ぶのかもしれない。
そういった部分が点数に影響してしまったのだろうと思ったり。
また大会終了後、私の身の回りに「これまで知らなかったけど、真空ジェシカがとても面白かった」という人がたくさんいて嬉しい気持ちになった。
6.オズワルド(665点/1位)
ネタ「友だちが欲しい」
GYAOの三連単予想企画では大本命、多くの人の期待を背負ったオズワルドが「6番手」というなんか優勝しそうな出番順で登場。
「友だちが欲しい」という軸に沿って、ワード、緩急、裏切り、伏線回収全部詰まった圧巻のネタで納得の高得点をマークした。
これまで「どう評価したらいいのか難しい」ような漫才がたくさん登場した中で、3回目の決勝進出者が登場したという安心感もあっただろう。「喋り」だけで魅せる部分も審査員には評価されていた。
サイコパス的な怖さがあそこまで自然に面白くなるのは、素の畠中さんに若干のサイコパスっぽい雰囲気があるからではないだろうか。
グラウンドに解き放つところも、ビッグピースも、好きだった。
7.ロングコートダディ(649点/4位)
ネタ「ワニになりたい」
コント師としての顔も持つロングコートダディが7番手。兎さんは放送開始前、笑神籤に向けて「7」の指で祈りを掲げていたようなので、見事願いがかなっている。
2順目の転生の時、視聴者は「ワニ」に間に合わなかったことにただ落胆してしまっていて、ワニが「ニ」で終わっていることなんてすっかり忘れている。そこでぶち込まれる「肉うどん」に笑わない人なんて、いるのだろうか。
ただのシステムとも違う超独特な設定・構成と、2人の表現力が大きく活きたネタだったように感じる。2本目が見たかった。
しかし、オズワルドに近いゆったりとしたテンポ感、そしてオズワルドと真逆で「喋り」以外の部分で笑わせるスタイルの彼らがこの出番順で登場しなくてはならなかったことは、順位に多少の影響があったのではないだろうか。
暫定ボックスから敗退するシーンでは「正解」とすら思えるボケを繰り出してくれたこと、きっと忘れないと思う。
8.錦鯉(655点/2位)
ネタ「合コン」
まず「50歳おバカの大冒険」とかいうキャッチコピーが良すぎる。2年連続ファイナリストの錦鯉が8番手で登場した。
これは笑ってしまう。最後の方のバカの畳み掛け、ものすっごい笑ってしまった。カサカサのかかとは見たくないし、電気椅子は嫌。
「合コンの練習」というよく見る設定も、「50歳のバカが行く予定の、合コンの練習」となってしまえばオンリーワンだ。しかも演者が本当に50歳のバカだからこそ、説得力しかない設定の中で漫才が展開されていったように感じる。
9.インディアンス(655点/2位)
ネタ「怖い動画」
続いても昨年のファイナリストであるインディアンスが登場。もう9番目だと言うのに、暫定ボックスに誰が残るのかさっぱりわからない。
最後に首の取れた人形に「インディアンスでーーす」と挨拶をして爆笑と拍手に包まれながらネタが終わっていく様子がとにかく印象的だった。
一応テーマは「怖い動画」なのに、テンポ、明るさ、楽しさが広がるネタ。客席の盛り上がり、そして自然な「上手さ」で納得の高得点。2年前に初進出した決勝で「人柄が見えない」と評されていたのが嘘のようだ。
10.もも(645点/5位)
ネタ「欲しい物」
結成4年目で初の決勝進出、M-1に懸けまくっているももがトリを飾ることに。
ずっと聞いていたくなる言葉の応酬と、中毒性のあるテンポ感は圧巻だったと思う。
「最初からテンポを上げて、ワードを詰めたほうが良かったのでは」といった指摘が審査員からあったが、今回の状態もそれはそれで最高だったのではないだろうか。
最初が丁寧だからこそ、後半にかけてのヒートアップが際立つ。多分、最初から詰めていたら、それはそれで「単調、緩急がほしい」みたいなことを言われていたのだろうということは想像に難くない。
彼らは主人公顔だと勝手に感じていたため、2本目を見ることができなかったのは残念だったが、来年優勝顔の2人に今後も期待したい。
■ファイナルラウンド
1.インディアンス(1票/2位)
ネタ「もっと売れたい」
2本目のトップバッターでも変わらぬ安定感を見せつけたインディアンス。
ネタのテーマに一貫して沿っていたのは1本目の方だったと感じたが、こちらでも異常な手数と、その中に仕込んだ重いパンチが効きまくっていた。
そういえばインディアンスは、よく周りの芸人から「努力しすぎ」といういじりを受けていた印象もある。異常なほどの努力量で、やっと実現される彼らの喋りに圧倒されるばかりだった。
2.錦鯉(5票/優勝)
ネタ「猿」
2番目に登場した錦鯉、相変わらずのバカバカしさとパワー。
正直、途中もはや何が起こっているのかわからない時間帯もあったが、そういうの全部含めて面白かった。笑わざるを得ない。
そして最後に残された「ライフイズビューティフル」という言葉は多くの人の印象に残っただろう。
そして、まさのりさんは「ライフイズビューティフル」の意味を分からずに語感だけで言っていたというエピソードも強すぎる。
3.オズワルド(1票/2位)
ネタ「割り込み」
オズワルドが、挨拶から自分たちだけの空気感を作る力って本当にすごいと感じている。ただ、この最終決戦に限っては、ここまでの空気に乗っかって全部を飛び越えていく必要があったのかなと思ったり。
1本目に比べてサイコパスというより「バカ」に寄っていたからなのか、「テンポのある畳み掛け」が特徴的だったからか、唯一無二な感覚が少し薄れた気もしたが、どんどん揺さぶられて引き込まれるネタだった。
3組とも、この2本目まで圧倒的な貫禄と面白さで、私はもう笑いすぎてくたくたになっている。そしてもう誰が優勝になってもいいという気持ちで優勝発表を待つこととなった。
■M-1グランプリ2021で、まだ見ぬ「大好き」を発掘しようよ
優勝者発表
お決まりのCMを挟み、行われた優勝者発表。
7人中5人の投票により、M-1グランプリ2021の優勝者は錦鯉となった。多くの人に愛された50歳と43歳の芸人が優勝して抱き合っている周囲で、芸人も審査員も泣いたり笑ったり、とにかく良い表情をしている光景が忘れられない。
そんな様子を画面越しに見て、とにかく「めでたい、めでたい」とつぶやくことしかできなかった。
「人生、変えてくれ」という本大会のキャッチコピーにふさわしいドラマが巻き起こったのではないだろうか。錦鯉、本当に優勝おめでとうございます。
大会全体を通して
「波乱」が予想されていた大会のファイナルラウンドに残った3組は、奇しくもM-1グランプリ2020からの連続ファイナリストたち。
順番や流れ、タイミングなど、いろいろな要素が折重なって、より”漫才らしい”漫才に軍配が上がったような部分もあると感じている。
しかし、惜しくも優勝や2本目のネタ披露を逃した芸人も、みんな間違いなく面白くて最高であることが証明された大会だったのではないだろうか。実際、本大会で10位となったランジャタイは、歴代の最下位コンビの中で最も高い得点をマークしている。
また、10位、9位となったランジャタイ、ハライチは順位的には振るわなかったが、それぞれ1名ずつの審査員から、その人の採点の中での最高得点をもらっているのだ。
きっと優勝したコンビだけでなく10組全員が確実に、どこかの誰かにとっての1位をたくさん獲得しているだろう。
多くのダークホースを孕んだファイナリスト、セミファイナリストのメンバーが見せつけた漫才は確実に、視聴者が今まで知りえなかった芸人の面白さを知らしめ、まだ見ぬ「大好き」を発掘する機会を作りだしてくれた。
私はというと、本大会でこれまで追ってこなかったモグライダーとヨネダ2000にかなり心奪われてしまった。人生において、「面白い」と感じられる対象が増えることって本当に幸せなことだ。
こうして芸人たちの人生はもちろんのこと、視聴者の人生にも少しだけ素敵な変化をもたらしてくれたM-1グランプリ2021に感謝しつつ、M-1グランプリ2022を楽しみにしたいと思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?