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最愛の人に寄り添うために

以前に著者の講演を仕事で聞く機会があった。明快な回答の中に、患者さんを第一に想う姿勢に虜になった。

私は本書を介護をする側の視点で読み、3つの視点で振り返りたいと思う。

【本書で感じたこと】
1. 病と同居する当事者の辛さ
2. 介護者の葛藤
3. 本人と自身の葛藤に向き合うために

1. 病と同居する当事者の辛さ
・小さな失敗の積み重ねが、自己肯定感を下げ本人を追い詰める。
・これまで人生の支えになってきたことが、本人の重荷になる。
・足手まといになりたくない想いに反し、自信を失う不安や孤独から助けを求める。
・会話ができる喜び(環境的、機能的、情緒的)

中核・周辺症状に限らず、本人の言動には辛さと本能的な意思表示を包含している。


2. 介護者の葛藤
・愛情を注いでくれた親に対し「認知症の人」として客観的で冷めた目で接する葛藤。
・これまで育て慈しんでくれた最愛の人を、簡単に人手に委ねることへの葛藤。
・現実を受け入れたくない葛藤(希望や明るい未来を信じて)

不公平で残酷な現実の一方、介護者が今を生きるためには、いかに自分らしさ失わないことが肝心になるはずだ。


3. 本人と自身の葛藤に向き合うために
・家族を信頼する
認知機能の低下にかかわらず、お互いが善くありたい願う気持ちが家族の根底にある。
・単色の役割を見つめ直す
介護すべきは子の努め。など親に全力で向き合うあまり役割が1つだけになりがちだ。
私たちの役割は子供であり、親であり、会社員(または自営業者)や、妻(または夫)の最愛の人など。つまり彩り豊かであり、親もその人生を後押しするに違いありません。


著者は日本を代表する老年精神医学の第一人者。
にもかかわらず、母であり1人の認知症患者へ正面から向き合うことに難儀された。
介護、すなわち「寄り添う」ことがそれだけ難しいこと。将来多くの方がこの大きな壁と対峙する。
本書は医師の目線ながら、介護者・当事者の目線でも精細に書かれた一冊でした。

私はこの春に義父を天国へ見送った。
短い期間ながら義父に寄り添う経験から、より家族の絆が結束した。
一方、本書で度々書かれた介護者の葛藤も味わった。その1つに義母の精神的なダメージによる心身の変化、そして私たち世代には未知で出口が見えない不安でした。

最愛の親に寄り添うことを犠牲に、自身の彩りを失わない社会を目指して。
そんなサポートができるように、これからも見識を広げ準備していきます。

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