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マーベルのAI創作の、その先にあるもの【『シークレット・インベージョン』のOPから】

先日、Disney+にて、マーベルの新作ドラマ『シークレット・インベージョン』が配信されました。

ドラマ『シークレット・インベージョン』

同作は、アベンジャーズをリクルートしたエージェント ニック・フューリーを主人公とし、彼がスクラル(擬態能力のある地球外生命体です)からの脅威に立ち向かうサスペンスドラマです。

私は何を隠そうマーベルの映画シリーズの大ファンで、それはドラマも例外ではありません。

2021年の『ワンダヴィジョン』に始まるドラマシリーズも、今作で12作品目(スペシャルプレゼンテーションを含む)になります。2話まで鑑賞したのですが、誰がスクラルかわからない緊張感のあるストーリーと、サミュエル・L・ジャクソン、ベン・メンデルソーンなどのベテラン俳優がもたらす作品としての重厚感が絶妙で、3話の配信が待ちきれません。

AIを使用したオープニング

さて、『シークレット・インベージョン』は、配信当初よりオープニング映像が物議を醸しています。それは、映像に生成AIが使用されているからです。

監督のアリ・セラムは、オープニングにAIを用いた理由について「あらゆる生命体に擬態できるスクラル人の特性や、ドラマのテーマ性を表現するため」と語ります。

今回の炎上には、全米脚本家連合による大規模なストライキが深く関連しています。脚本家の仕事がAIに奪われることを防ぐための話し合いが、ハリウッドで急加速しているのです。

議論の広まりを受け、制作のメソッド・スタジオは、以下のように声明を出しました。

この制作プロセスは、AI ツールセットの特定のアプリケーションに重点を置いた、高度に協力的かつ反復的なものでした。 これには、才能のあるアートディレクター、アニメーター (2Dと3Dの両方に精通)、アーティスト、開発者が、従来の技術を使用しつつ、プロジェクトのあらゆる側面を作成するための多大な努力が関わっています。 ただし、AI コンポーネントは最適な結果を提供しましたが、AI はアーティストが使用した多数のツールセットの中の 1 つのツールにすぎないことは、強調しておきたいポイントです。これらの新しいツールの導入によってアーティストの仕事が奪われることはありませんでした。 そうではなく、AIは私たちクリエイティブチームを補完し、支援してくれたのです。

The Hollywood Reporter

"アーティストの仕事は奪われていない"、スタジオ側はそう主張するのです。

未来のアーティスト

確かに、今回のオープニング映像においては、スタジオが語る通り、アーティストの仕事は奪われていないでしょう。しかし、将来クリエイティブデザインに携わる、未来のアーティストの仕事はどうでしょうか。

私はこう考えました。マーベルという業界最大手のスタジオがAIを用いた創作を大々的に行うことにより、他のスタジオがAI創作を行うハードルがグッと下がってしまうのではないか、と。

これにより、未来のアーティストの仕事が奪われ、素晴らしいアーティストが対価を得られなくなってしまう可能性は、否定できないように思います。

創作に関わる全てのアーティスト及び彼らの生み出す作品が尊重され、アーティストが相応の対価を得ることのできる未来を祈って、筆を置かせていただきます。

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