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【筋・筋肉系まとめ】運動、姿勢、体温…私たちの体を支える筋肉のしくみ

筋・筋肉系概論

筋肉系は、運動指導者やセラピストにとって重要な分野です。筋肉は体重の約4割を占め、400種類以上あり、骨格筋は約400個存在します。筋肉の構造や機能を理解することで、効果的な筋コンディショニングが可能になります。

ポイント:
筋肉は体重の約4割を占める
・種類は約400種類以上
・骨格筋は約400個存在
・筋肉の構造や機能を理解することで、効果的な筋コンディショニングが可能になる


1. 分類

筋肉は、解剖学的分類、組織学的分類、機能的分類の3つの方法で分類することができます。

表1. 筋の分類と特徴

ポイント
解剖学的分類:骨格筋、心筋、内臓(平滑)筋
・組織学的分類:横紋筋、平滑筋
・機能的分類:随意筋、不随意筋

2. 機能

骨格筋は、人体で最も大きな器官系であり、約400種類の筋肉から構成されています。主な機能は以下の7つです。

  1. 運動作用: 骨格筋の収縮により、体を動かします。

  2. 姿勢保持: 抗重力筋の収縮により、立位姿勢を維持します。

  3. 熱源作用: 体内の熱産生に大きく貢献します。

  4. 筋ポンプ作用: 血液やリンパ液の流れを促進します。

  5. 保護: 骨や内臓を衝撃から保護します。

  6. 内分泌作用: 脂肪の分解を促進したり、脳の神経細胞の減少を抑制したりする物質を分泌します。

  7. 器官系の出入り口の開閉: 嚥下、排便、排尿などの動作を行います。

その他、以下の点にも注目
骨格筋の密度は脂肪よりも約15%重い。
・20代をピークに徐々に減少していく。
・絶対筋力は、体積に比例する。
・骨格筋は、体全体の熱産生の約60%を占める。

【骨格筋名の覚え方】
骨格筋名を効率的に覚えるには、以下の5つのステップがポイントです。

  1. 機能を理解する: トレーニングとストレッチをセットで行うために、まず筋肉の機能を理解しましょう。

  2. 由来を理解する: 筋名の由来を知ることで、イメージがつきやすくなり、記憶に残りやすくなります。

  3. 部位を理解する: 筋肉がどこに存在するのかを正確に把握しましょう。

  4. 付着を理解する: 起始停止と走行を理解することで、トレーニングとストレッチの効果を高められます。

  5. 神経を理解する: 筋肉を支配する神経を知ることで、より深い理解につながります。

筋名の由来には、以下の6つのパターンがあります。

  1. 部位: 大胸筋、広背筋、腹直筋など

  2. 作用: 屈筋、伸筋、外転筋など

  3. 分離: 二頭筋、三頭筋など

  4. 外形状: 鋸筋、板状筋など

  5. 付着: 胸鎖乳突筋、茎突舌骨筋など

  6. 走行: 直筋、斜筋など

全身の骨格筋
骨格筋
は、体幹筋と体肢筋の2種類に大別できます。

1. 体幹筋
体幹を支え、運動時のバランスをとる役割を担う
・前体幹筋と後体幹筋に分類される
・前体幹筋は、頭部、頚部、胸部、腹部、骨盤部の筋にさらに分類される
・後体幹筋は、背部の筋に分類される

2. 体肢筋
上肢筋と下肢筋に分類される
・上肢筋は、上肢帯の筋、上腕の筋、前腕の筋、手の筋にさらに分類される
・下肢筋は、下肢帯の筋、大腿の筋、下腿の筋、足の筋にさらに分類される


3. 分類

骨格筋は、階層、機能、発生、支配神経など、様々な基準で分類できます。

1. 階層による分類

  • ローカルマッスル(深層筋): 関節の安定や姿勢保持に関わる筋肉。インナーマッスルとも呼ばれる。

    • プライマリーマッスル:姿勢保持の張力を発揮する筋肉。インナーユニットとも呼ばれる。

      • 例:横隔膜、腹横筋、表層腰部多裂筋、骨盤底筋群

    • セカンダリーマッスル:固有受容器が豊富で、脊柱の動きを脳に伝える筋肉。

      • 例:内腹斜筋、外腹斜筋の内側、腰方形筋、腸肋筋、最長筋(腰椎部)、回旋筋、棘間筋、横突間筋、深層多裂筋、菱形筋、中・下部僧帽筋、中殿筋、小殿筋、股関節深層外旋六筋など

  • グローバルマッスル(浅層筋): 関節を大きく動かす筋肉。アウターマッスルとも呼ばれる。

    • 例:腹直筋、外腹斜筋の外側、大腰筋、脊柱起立筋群、腸肋筋(胸椎部)、上部僧帽筋、大胸筋、三角筋、広背筋、大殿筋、ハムストリングス、大腿直筋、股関節内転筋群、下腿三頭筋、胸鎖乳突筋など

この分類方法は、コアトレーニングや筋トレにおいて、筋肉の役割や重要性を理解するのに役立ちます。

2. その他の分類
代表的な分類方法を3つ紹介します。

  1. 横断している関節数による分類

    • 単関節筋:1つの関節だけをまたいで付着している筋

    • 2関節筋:2つの関節をまたいで付着している筋

    • 多関節筋:3つ以上関節をまたいで付着している筋

  2. 運動作用による分類

    • 作動筋:主動筋(agonist, prime mover):筋収縮によって主に関節運動を起こす筋

    • 協働筋:ある関節を中心として1つの運動を行う場合、主動筋に協力する筋

    • 拮抗筋:主動筋が関与する関節の反対側に位置し、関節に対して、主動筋と逆の働きをする筋

    • 固定筋:等尺性収縮によって、一定の姿位を保持・固定して姿勢維持をする筋

    • 中和筋:望ましくない動きを抑制・中和する筋

  3. 形状による分類

    • 平行筋:筋線維が長軸方向に対してほぼ平行に配列していて、中央が膨らみ、両端がすぼんでいる筋

    • 羽状筋:筋線維が腱に向かって斜めに走行する筋

    • 収束状筋:腱から複数の方向に筋肉が広がっている筋肉

    • 環状筋:楕円形をしている筋肉

    • 鋸筋:筋頭が多数に分かれ、鋸状に見える筋

これらの分類方法も、骨格筋を理解する上で重要です。


4. 構造
骨格筋は、筋線維と筋膜で構成されています。

筋膜は、筋肉を包み込み、保護、支持、滑らかな動きを促す役割を担っています。筋膜は、大きく5種類に分類されます。

  1. 骨膜:骨を包む膜

  2. 心膜:心臓を包む膜

  3. 内臓膜:内臓を包む膜

  4. 髄膜:脳を包む膜

  5. 筋筋膜:筋肉を包む膜

筋筋膜は、さらに3つの層に分けられます。

  1. 筋上膜:筋束を包む膜

  2. 筋周膜:筋線維束を包む膜

  3. 筋内膜:筋線維を包む膜

骨格筋の断面構造による分類


5. 収縮のメカニズム

骨格筋は、アクチンとミオシンというタンパク質フィラメントの滑り合いによって収縮します。
筋収縮には、以下のステップがあります。

  1. トロポミオシンがアクチンのミオシン結合部位を塞ぎ、筋肉を弛緩状態にします。

  2. 運動神経からの刺激により、カルシウムイオンが筋小胞体から放出されます。

  3. カルシウムイオンがトロポニン複合体に結合し、トロポミオシンがアクチンフィラメントから離れます。

  4. ミオシン頭部がアクチン上の結合部位に結合し、ATPをADPに加水分解してエネルギーを放出します。

  5. ミオシン頭部がADPを外れ、角度が変わることで、アクチンフィラメントをミオシンフィラメント側に引きずり込みます。

  6. ミオシン頭部に再度ATPが結合し、再びアクチンフィラメントに結合し、M線側に引っ張ります。

  7. この過程を繰り返すことで、筋収縮が行われます。

筋収縮には、エネルギーが必要であり、ATPがADPと無機リン酸に分解されることでエネルギーが供給されます。


筋収縮力は、サルコメア長とサルコメアの収縮速度によって変化します。

サルコメア長
静止長:最も筋力(張力)が発揮しやすい状態
・至適長:静止長の80~120%、最大筋力が発揮される
・至適長より短縮:架橋部が減少、筋張力も直線的に減少
・至適長より伸張:架橋部が増加、筋張力も減少

サルコメアの収縮速度
収縮速度が増加:筋張力は双曲線的に減少
・収縮速度が減少:筋張力は収縮速度0の時の発揮される張力よりも増加

力-速度関係
最大筋力(Fmax) の30~35%でパワーが最大になる
・速度が速くなるほど、発揮できる力は小さくなる
・速度が遅くなるほど、発揮できる力は大きくなる

トレーニングへの応用
目的に合わせて、必要なパワー発揮ゾーンでのトレーニングを行う

  • 例:
    ラグビー:Maximum Strength、Strength-Speed
    陸上短距離:Speed-Strength、Maximum Speed
    個人個人の力-速度曲線を分析し、それに合ったトレーニングプログラムを作成する


6. 筋の付着

骨格筋の起始と停止を理解することは、運動指導やセラピーにおいて重要です。

起始と停止
起始:近位側、安定している側の筋と骨の結合部分
・停止:遠位側、可動性のある側の筋と骨の結合部分

起始と停止の役割
起始と停止を近づける:筋力トレーニング
・起始と停止を遠ざける:ストレッチング

起始と停止の構成要素
起始腱:起始と筋頭の間の線維状組織
・筋頭:起始腱と筋腹の間の膨らみ
・筋腹:筋中央の膨らみ
・筋尾:筋腹と停止腱の間の線維状組織
・停止腱:筋の端の停止に近い部分

骨格筋の部分による分類


7. 筋の補助装置

筋の機能を補助する装置には、筋紡錘、腱、筋支帯などがあります。

  • 筋紡錘は筋の長さや伸張速度を感知し、過剰な伸張を抑制する反射に関与します。

  • は筋の力を骨に伝え、腱紡錘やゴルジ腱器官で力や負荷を感知します。

  • 筋支帯は筋が走行する溝を覆い、筋が浮き上がらないように支えます。

これらの装置は、筋の協調的な運動や、怪我の防止に重要な役割を果たしています。

詳細
・筋紡錘
:Ia線維とII線維があり、それぞれ速い反射と遅い調節に関与します。
:コラーゲン線維で構成され、腱鞘によって摩擦を軽減します。
筋支帯:主に四肢の筋を支持し、滑車を形成することもあります。

筋の補助装置に関する知識は、運動指導やリハビリテーション、スポーツトレーニングなどに役立ちます。


8. 筋体積と筋線維比率

筋力は筋の体積と筋線維比率によって決まります。
筋体積は、筋の横断面積よりも筋力を正確に反映します。体積が大きいほど筋力は大きくなります。
筋線維比率は、筋線維の種類によって異なります。速筋線維が多いほど筋力は大きくなります。

体積が大きい筋
大腿四頭筋
・下腿三頭筋
・腸腰筋
・大殿筋
・三角筋

筋線維比率が高い筋
速筋線維が多い筋

筋力トレーニングは、筋体積と筋線維比率を向上させることで筋力を増強することができます。

各関節の機能別筋力は、関節の動きや身体全体の運動能力に大きく影響します。
関節運動時の最大筋力は、以下の通りです。

  1. 股関節伸展(200-230Nm)

  2. 膝関節伸展(190-220Nm)

  3. 足関節底屈(120-160Nm)

これらの関節運動は、立ち上がったり、歩いたりする際に重要です。
筋力トレーニングは、筋力不足による関節痛や運動機能障害の予防・改善に効果的です。


9. 収縮の形態

筋収縮には、動的収縮と静的収縮の2種類があります。

動的収縮は、筋の長さを変えながら張力を発揮する収縮形態です。

  • 等張性収縮:負荷が一定の状態で筋が短縮または伸張する収縮

    • 短縮性収縮(求心性収縮):筋が自発的に短縮しながら張力を発揮

    • 伸張性収縮(遠心性収縮):筋が負荷によって受動的に伸長しながら張力を発揮

  • 等速性収縮:速度が一定の状態で筋が短縮または伸張する収縮

  • 伸張-短縮サイクル:伸張性収縮と短縮性収縮を組み合わせた運動

静的収縮は、外力に抵抗して筋収縮するが筋の長さが一定で、関節運動が起きない運動です。

  • 等尺性収縮:筋の長さを変えずに張力を発揮する収縮

それぞれの収縮形態には、筋肥大、エネルギー消費量、血液循環、安全性、血圧への影響などの特徴があります。

筋力トレーニングでは、目的に応じて適切な収縮形態を選択することが重要です。


まとめ

筋肉系は、運動、姿勢保持、熱産生など、生命活動において重要な役割を果たすシステムです。筋の構造、機能、収縮メカニズムなどを理解することで、運動能力の向上や筋力トレーニングの効果的な方法を理解することができます。

筋肉は、最高のアクセサリー。自信と輝きを、自分自身に与えよう。



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