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回文〆ショートショート#7 かりうどの年賀状
また歳末がやってきた。
年賀状でも書くか。
来年は辰年か。
ということは
今年は卯年だったのか。
干支のことなど
年末年始しか意識しないものだな。
ごく親しい数人に出すだけだから、
枚数はたいしたことない。
パソコンも印刷機も持ってないし、
かといって
市販の印刷済み年賀はがきは味気ないので、
見栄えはよくないが、毎年、
白はがきに手書きすることにしている。
挨拶の文字と、干支の絵。
卯年はよかった。
兎は耳さえ長く描けばそれなりに見える。
辰年は悩ましい。
十二支の中で最も描きにくいのを
苦労して描く羽目になる。
しかも
今、手近には、
参考にできる龍の絵がない。
龍という生き物は
いったいどんな姿をしていたか…。
記憶の中の龍を呼び起こし、
ためしに描いてみる。
![](https://assets.st-note.com/img/1703313417026-fhmUlKOblL.png)
描いた絵をじっと眺める。
![](https://assets.st-note.com/img/1703313465278-zrUdebrJRL.png)
絶対に違う。
「長い」ことしか合っていない。
今日はもうあきらめて、
明日、公民館の図書コーナーで
カット集を見ることにする。
外は雪が止んだ様子、
ちょっと狩りに出てみるか。
ワシは防寒着をはおり、
散弾銃を持って外へ出る。
すると、近所に住む寅司に出くわす。
「狩りに出るなら連れてってもらえませんか?」
寅司は農家の若者だが、
狩猟免許を取ったばかりなので、
狩りに行きたくてうずうずしている。
そうだな、
連れてってやるかな。
ワシが昔、先達の猟師に育ててもらったように、
今ワシは、若い猟師を育てていかねばならない。
身支度をしてきた寅司と、
雪の上を歩き始める。
雪が積もると、
くもり空の下でも
景色はぐんと明るい。
少し行き、
立ち止まって振り返ると、
まっさらな積雪の上にくっきりと
二人分の足跡がついている。
![](https://assets.st-note.com/img/1703313670827-Ci0nHQqzC2.png)
寅司を待たせ、それを
しばらくじっと眺める。
あらためて見ると
足跡というのは
おもしろい形をしているな。
人生の軌跡、を連想できるのもいい。
年賀状に描く絵、
今回は
干支でなくてもいいな。
![](https://assets.st-note.com/img/1703313794174-EQ3wvzzRCj.png)
よく、我が絵、ガン見。卯の年は辰へ。狩り。ふと足跡、振り返った、ワシと農民が。絵が湧くよ。
→よくわがえがんみうのとしわたつえかりふとあしあとふりかえつたわしとのうみんがえがわくよ←
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