”不便さ”にも価値がある

最近、ネットやテレビ、新聞では、“AI”のことが日々ニュースになっています。
「ChatGPT」の登場や、マイクロソフのoffice365にチャットAIが搭載されることによって、一般的なビジネスでもAIが使われる場面が増えていくのは間違いないでしょう。
 
AIに限らず、技術は進歩して、世の中はどんどん便利になっています。
スマホ一台で何でもできてしまう時代は、もはや“便利すぎる”と言っても良いくらいです。
 
人々の生活が便利になっていくことは喜ばしいですが、一方で、暮らしやすく、効率的な世の中になるほど、何か物足りなさを感じることもあります。
技術が発展し、世の中が便利になればなるほど、「不便さ」が減り、その際に感じる喜びも減っていきます。
 
京都先端科学大学教授の川上浩司さんが提唱されている「不便益」という言葉があります。
読んで字の如く、「不便(手間がかかる、時間がかかる)」がもたらしてくれる利益・価値のことです。
 
有名な例でいうと、「富士山」がそうです。
富士山は5合目までは車で行けますが、そこから先は歩いて登る必要があり、かなり不便です。
ただ、だからといって、富士山の頂上まで続く便利なエスカレーターができたらどうでしょうか?
富士山の面白みは消えて、「山小屋で休憩する」というエンタメもなくなり、登頂時の達成感もなくなってしまいます。「5合目から先は歩かなくちゃいけない」という不便が、登山者に大きな価値をもたらしていることが分かります。
 
BBQも同じです。
BBQをする際に、会場のスタッフが食材を用意し、炭に火をつけ、肉を焼いてくれたらどうでしょうか? 皆さんはそのような会場にまた行きたいと思うでしょうか?
BBQも自分たちで炭に火をつけて、自分たちで肉を焼くという面倒なところに価値を感じる人が多いと思います。
 
組み立てられたプラモデルや完成しているパズルを買う人もいません。
音楽も、ダウンロードをすればスマホでも聴くことができるのに、わざわざレコードで聞く人もいます。
写真も、スマホやデジタルカメラで撮れば、その場で写真を見ることもできるのに、フィルムのカメラで写真を撮る人もいます。
 
このように、人は昔から「不便」に価値を感じ、好んで買っています。
もう少し具体的に話すと、世の中には、「必要な不便」と「不必要な不便」があり、「必要な不便」には価値を感じ、お金を支払うということが分かります。
また、「必要な不便」には「一人で楽しむ不便」と「複数人で楽しむ不便」があります。
1人で楽しむ不便によって得られる価値は「成長の確認」や「達成感」等です。
複数人で楽しむ不便によって得られる価値は「達成感の共有」や「コミュニケーション」等です。
 
ぜひ皆さんも一度、「不便さ」にも価値があるという視点で世の中を見てはいかがでしょうか?皆さんの中で「不便さ」に価値を感じていたものを発見したり、新しい気づきがあると思います。
 
日々便利になっていく世の中において、「不便さ」にも価値を見出し、皆様の商品・サービスの中にも、ぜひ戦略的に「不便さ」をデザインしてみてはいかがでしょうか?
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?