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金澤的郷土四川料理、酸辣麺。

【今日の一麺】
四川料理「鳳凰」(金沢市武蔵ヶ辻 ANAホリディ・イン金沢スカイ 17f)

《酸辣麺》Suān Là Miàntiáo

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「スカイホテル中華の《スワン・ラーメン》は、絶品ですよ!」

(白鳥ラーメン??)

いまから8年前。

金沢に来てまもなくの頃、たまたまBARで隣合わせた方からの情報だった。

中華料理、とくに”激辛四川”に目がない私。

さっそく翌日の昼にいそいそと、金沢スカイホテルの四川料理「鳳凰」(ほうおう)を訪ねた。


18階建ホテルの17階。

文字通り「スカイレストラン」である。

開業は1974(昭和49)年と云うから、もう半世紀近い歴史を持つことになる。

高度経済成長の中期から後期にかけ、日本全国の地方都市にも競って高層ビルが建設された。

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都市型ホテルはビルヂングのメインテナントとなり、スカイレストランでの食事は人々の憧れの的となった。

その後のオイルショックがちょうど、私が10歳だった1973年。

だから、金沢スカイホテルは高度経済成長期に建設が計画され、その終焉のタイミングに開業したこととなる。

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話がすこし脱線した。

「あの、人から教えて頂いたのですが、《スワン・ラーメン》って、ありますか?」

「ああ、スゥワン・ラア・ミンシャオ、酸辣麺ですね。ございますよ。」

ピシッと黒服に身を包んだ、女性マネージャーがハキハキと応えてくれた。

なんのことはない。

《酸》の中国語読み《スゥワン》の私の聞き違いだったのだ。

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しかも名物料理《酸辣麺》の味は、私の想像していた激辛味とはまた、違ったものだった。

鶏がらベースの湯(タン)に特製の辣油が香るスープは、人肌に近い温めの温度で、かつ胃腸に優しいピリ辛味。

赤唐辛子や豆板醤はもちろん、八角やナツメなど複数の香辛料が熟成の芳香を放つ。

細打ちストレートの玉子麺も、適度なコシを持ちつつ、口の中でほどけるあっさりとした食感。

そしてトッピングの具材は、極細の白鬚葱とパクチー一葉のみ。

四川料理と云うより、むしろ《薬膳料理》に近いのだ。

が、旨いこと、この上なし。

そう云えば、BARで出会ったかの御仁は

「二日酔いにお薦めです」

と教えてくださったっけ。。

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金沢スカイホテル四川料理「鳳凰」。

偶然の出会いからの私の倖せな《スワン・ラーメン》デビューだった。

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日本に四川料理を初めて伝えたのは、横浜に開業した陳建民(ちんけんみん)の「四川飯店」といわれている。

ここから多くの中華料理人が育ち、熊本の「桃花源」、札幌の「桃源郷」など四川の名店が全国に生まれていった。

しかし鳳凰の《スワン・ラーメン》は、四川飯店の流れとは少し違う気がしている。

スープも麺も具材も、全体的に見た目は質素な佇まいであるにかかわらず、内にとても奥深さと力強さ持つ。

「質実剛健」というのだろうか。

どことなく、“武家好み”なのである。

だから《スワン・ラーメン》は、ここ金沢で生まれ、独自に進化してきた“金沢的郷土四川料理”なのだと私は思う。

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〆はもちろん、白飯に搾菜と沢庵をのせ、酸辣スープをぶっかけた《スワン・メシ》である。

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じつはこれも8年前にピシッと黒服に身を包んだ女性マネージャーから、

「一番、美味しいんですよ♪」

と、教えて頂いたものだけれど。