ニンニクのアヒージョ

六時間前に食べた激辛タイ料理が腹に午前二十四時を告げる頃、ああ何か腹に優しいものは何かと思う。サフランのリゾットは見た目に反して優しい味がした。謝甜記のピータン粥も、飲んだ日の翌朝でだって早起きして食べに行きたくなる、美味しくて優しい料理だ。

さて、ただの今現在私の腹が痛いことはさておき、とにかくニンニクのアヒージョである。アヒージョとは、スペイン語のajillo。つまるところ、「ニンニク風味の」という意味らしい。

古今東西、昔からニンニクは強壮・強精のある種薬として、紀元前からその栽培が始まっていたという。その殺菌力も去ることながら、食べた後の臭いという意味では破壊的な殺傷力も持ち合わせている……というのは私の持論だ。

アヒージョがニンニク風味を意味するのなら、ニンニクのアヒージョはアヒージョと言えるのだろうか。そもそも、ニンニクのアヒージョという料理が存在するかどうかも私にはよく分からないが、これは作って(殺傷力という点において)損することもあるが、基本的には得することばかりなので是非とも皆様方に知っていただきたいと思い、紹介する。

オイルサーディンというものをご存知だろうか。
あれは地理を勉強していた頃だった。チリのあたりではイワシがよく獲れるので、それを塩漬けやオイルサーディンに加工している、という記述を見た。その時から私の脳内は、イワシと言えば、チリと言えば、オイルサーディンであった。

それからというもの、塩漬けにしたイワシをテキーラとオリーブオイル半々の液体で煮たものをオイルサーディンと称して作っていたのだが、その際に一緒に放り込んだのがニンニクで、イワシは出来上がり早々、飲み会早々に売り切れたものだが、ニンニクとオイルが残ってしまったのである。

捨てるなど言語道断、もちろん保管し、料理の度に愛おしく使っていたのだが、これがなかなか良かった。風邪のひき始めに一かけ。肉の付け合わせに一かけ。炒め物に一かけ。

何せオイルでじっくり煮込んでいるものだから、みじんにする必要もない。フライパンに放って、フォークなどで潰せばあっという間に材料に馴染むのだ。塩も馴染ませておけば、そのまま食べてももちろん美味しい。

用意するのはニンニク、オリーブオイル、バター(geeでも良い)、酒(テキーラだと尚良い)、塩。

ニンニクは皮を向いて洗ったら、水気をキッチンペーパーなどで除く。ここで 縦半分に切って芽を取っておけば、煮込み時間と苦味を少なくすることができる。面倒であればそのままで構わない。

鍋にオリーブオイルを注ぎ、ニンニクをとろ火で煮込む。香りがオイルに大体移ったら、塩・バター・酒を加え、ニンニクに焦げ目ができる程度まで続けて煮る。加減は自分の好みで構わない。

ここでお含みおきいただきたいのだが、これは大変高温になるため、味見には大変注意を払うこと!
塩加減なんてものは後からいくらでも調整できるので、少なくとも人としての知能を持ち合わせている諸君なら、料理が冷めるまで待つことは容易なはずだ。
私はそのようなものを持ち合わせていないので、よく舌を火傷する。

そしてこのニンニクのアヒージョ、五、六個食べた次の日には身体から生ゴミの臭いがするようになることで私の中では有名である。なぜそんなことが分かるのか。人に食わせたからである。

是非臭いものは愛する人と一緒に食べるように。

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