見出し画像

「#08 君の笑顔」 感想

毎回MIU404を見ながらモチーフを探すという作業をしてるんですが、
この回はこれかな…とピッタリ来る言葉が最初は見つからなかった。
「愛」と「思い出」と「信仰」かなと候補を出すがいまいちフィットしない。

ガマさんの奥さんの麗子がひまわり畑で笑顔になって写っている写真を見て
なんとなしにひまわりの花言葉を調べて見た。

◻︎ひまわりの花言葉

「あなただけを見つめる」
「愛慕」「崇拝」「情熱」
「あなたを幸せにします」「あなたは素晴らしい」

ヤダもうこれだけで泣ける…ガマさん。
めちゃくちゃガマさんの心を表しているじゃないか。
モチーフとして拾うとこのあたりかな。
「愛慕」「崇拝」「あなただけを見つめる」
「愛」だけじゃなく「愛慕」、「信仰」というか「崇拝」の方がしっくり来る。

【愛慕】愛して、懐かしみ慕うこと。
この「慕」という漢字には
「したう/思いをよせる/こいしく思う/しのぶなつかしむ
という意味があるらしい。

ホラ、やはり!こっちの方が8話の内容にピッタリ来る。

「慕う」
という動詞の意味。
1.恋しく思う。懐かしく思う。
⒉ 離れがたく思ってあとを追う。
⒊ 目上の人の人格・識見などにひかれる。憧れる。

3番目なんて伊吹のガマさんへの気持ちでもある。
そして注目したいのは2番目なんです。

※ここからDVD、Blu-rayBOX封入特典のブックレット“nogi note”よりネタバレがあります。ネタバレを避けたい方は上の目次より次に飛んで下さい。




ブックレットは脚本の野木さんの各話解説になってます。
8話の解説にて当初の案ではガマさんさんは最後に自決する予定だったそうです。
「慕う」の意味の2番目の解説。
「離れがたく思ってあとを追う」
ガマさんの自決は「辛すぎる」という新井プロデューサーの意見で回避されたとのこと。それは…その判断で本当に良かった。伊吹が壊れちゃうよ…。

何が言いたいのかというと、
表現を形にするときに選び取るものの精度が高すぎてすごい。
「ひまわり」を先に思いつくのか「愛慕」が先なのか。
出来上がったドラマを観てみると流れていた感情は「愛慕」「崇拝」の言葉でしか表現できないよなって思ってしまう。
「慕う」の意味の「懐かしむ」というのも過去の出来事に対して行うこと。
ガマさんさんの思い出、伊吹の思い出。8話の内容にピッタリすぎる。
モチーフのチョイスとそれに対する理解の深さと、それを的確に作劇する能力に感動で震えが止まらない…!

◻︎今回のモチーフ

今回は図解にしてみました。

◻︎志摩と伊吹

8話目にして志摩が伊吹をとうとう正面切って褒めるという。
なんて!なんて微笑ましい…!初見時は床をゴロゴロしました。
まあ、その後バッチリぶつかり合うんですが、
7話でバディとしてピッタリハマってた2人の激突。
1話の時とは違い、深く理解しあった故の激突。
伊吹を詰めていくけど志摩の声色は冷たくはないんだよね。

志摩は今回、とても伊吹を思い遣っている。
ガマさんが犯人だと自白した瞬間の待機中の志摩の顔。我が事のように傷ついた表情になってる。以前の志摩ならこんな顔はしなかったんだろうと思う。
連行されるガマさんに詰め寄る志摩。
ガマさんが「伊吹にできることは何もなかった」と伝言を託した時も
志摩は傷ついた顔になってた。
大事に思ってる相手の世界から排除されている事実。
縋るものを失い自分で自分の肩を抱いて泣く伊吹が痛ましい。
こんな伊吹に伝えるにはしんどすぎる。

この回の「たった一瞬」ポイントは
1回目はガマさんの家の中に1人残され慟哭する伊吹。
2回目は署の屋上で志摩の手を取る伊吹。

『感電』の最後の歌詞
「お前はどうしたい?返事はいらない」
無言で立ち上がる伊吹の肩を無言で志摩が支えるシーンが被るのにグッとくる。
無理に言葉を交わさなくても分かり合える関係になってるのがせめてもの救い。

当時の感想。


◻︎ガマさんと伊吹

伊吹は心を寄せる相手を無条件に信じてしまう。
加々見の時もそうだったように。
ガマさんが伊吹にとって大事な人だと2話あたりから長きに渡って知らされていたから、この結末は辛かった。

さらに残酷なのはガマさんにとって伊吹はカヤの外の人間だったということ。
4話「ミリオンダラー・ガール」の中であった台詞。

「そいつの本性を見るには生死のかかった瞬間を見るといい」

ガマさんの本性は刑事より妻を愛する人だった。
刑事じゃない余生を妻と歩んでいくことを選んで妻の勧めで外国人支援センターに登録した。心の中心にいた人は麗子さんだった。
刑事である自分よりも大事だった。というより自分そのものよりも大事だった。

ガマさんに助けられた伊吹は刑事としてガマさんを崇拝していたし
刑事になった自分に誇りを持ってただろうし
1人で暮らせない状態なら一緒に暮らして支えたいくらい愛慕してた。
でも、麗子さんを失ったガマさんにとって刑事としての自分は
もう今更、要らないものだった。
伊吹を教え導いたかつての自分と伊吹との関係は歯止めにならなかった。
刑事としての矜持はもはや失って、殺人の知識と技術を堀内に使ってしまった。

自白したガマさんに対して伊吹は問いかける。
「俺はどこで止められた?いつならガマさんを止められた?」
ガマさんはそれには答えない。そんな可能性はそもそもなかった。
伊吹が呼びかけて泣きじゃくってもガマさんは伊吹には向き合わず
妻の写真を見つめて妻に声をかけるだけだった。

こんなに一方通行なの本当に悲しい…。
伊吹をこれ以上なく拒絶することが、自分以外の誰かを支えに生きていけという言葉にしないガマさんの伊吹への情けだったと思いたい。
こうなってしまった自分に伊吹が心を寄せるのは危険だから。

◻︎演出の話

竹村謙太郎監督の演出回。
塚原あゆ子監督の時は情緒たっぷりの印象的な止め絵があるのが特徴。
竹村監督の時は空間を感じるカメラの動きがカッコいい。

メモリアルブックで野木さんがこの回の印象的だった演出の1つに挙げてた
このシーン。

話の流れから
ガマさんが堀内を殺した犯人なのではということが薄々わかってくる。
脚本で野木さんは「ガマさん、戸棚に向かい手を合わせる」とだけ書いたそう。
実際出来上がった映像ではガマさんは目を見開く。
カメラが下から上がってガマさんの表情を捉える。

初見の時に、この全ての感情が抜け落ちたような表情に寒気がした。
ガマさんが犯人なんだという予想がついて受け止める準備はできてたのに想像してたどの表情とも違った。心のよくわからない部分が抉られた。
この演出をつけるのも、オーダーに応えて演技するのも本当に凄い。
この時の小日向さんの顔が忘れられずに居た。
モヤモヤを昇華するために描いた。でも違うんだよな〜生気がもっと無い。

もう一つ印象に残った、素晴らしくて心を抉る演出。
赤い傘。
思い出しただけで「やーめーてー!」ってなる。
赤い傘で見えないようにしているけど、一度轢いた人間に再度乗り上げたことがわかる車が上下に揺れる動き。
マジころしてえ堀内。…ってなるよ。

◻︎今回の萌ポイント

今回たくさんありましたよ。でもあれだよね。
「いっぱいぶん殴るから飴ちゃんもいっぱいあげとくね!」って感じだよね。

UDI!UDI!
坂本さん中堂神倉さん!嬉しかったよ本当に。
アンナチュラルの気配を感じるだけで寿命が3年延びる。
6話の感想で書き忘れたけど「三澄ミコト」の署名だけで免疫力が跳ね上がった体感があったからね!

伊吹の部屋!
「伊吹っぽい」を具現化してくれてありがとうございます。
押入れ開放した収納とかタイダイの布とかスニーカーディスプレイとか。
伊吹自身の「好き」で満たされてる感じがらしい。
新井Pがドコかで、「志摩の部屋はコンクリート打ちっぱなしの壁で家具が黒いのがいい」って鼻息荒く言って「わかる」と思った。
それと自室に居る伊吹の雰囲気が緩くてそこはかとなくセクシーでした。
初めて休日に会う伊吹くん❤️なドキドキがあったのにすぐに不穏なドキドキにとって変わられたね…。

今回明るく終わるのは無理だわ〜


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?