クリスマス前の平日に

―12月22日午後5時30分― 終業までもう少しだ。時計をチラリと見て和木タケシは一息ついた。町の卸問屋に勤めているのでこの時間になると上がりの雰囲気になる。
「あーあ、もうすぐクリスマスか。」
先輩の井下さんが退屈そうに呟いた。
「しかも土日かー。家にいても暇だけど外出もなぁ。」
タケシも遠目でうんうんと頷いてみせる。以前より街中のクリスマスも落ち着いてはいるが、それでもなんとはなしに出づらい感じは否めない。
「男性だとケーキとか食べない人も多いものねぇ。」
事務の須野さんが片付けをしながら話す。
「うちも週末はどうしよう。最近の子ってヘルシー志向よねぇ。簡単にサラダと肉料理だけ用意しようかしら。」
「須野さん家ちゃんと準備して偉いですよ。うちはたぶん通常通りで終わりかな。」
クリスマスに茶漬けとか食いたくなーい、と井下さんがカレンダーを眺めて言った。
「和木君はどうするの。野暮かしら。」
須野さんがうふふと笑いながら話を振ってきた。
「いやー、僕も通常通りですよ。家でゆっくり。クリスマスの行事に倣って今年はケーキでも買おうかと思います。」
やー現代の若者だなー、と井下さんが年長者みたいなことを言う。
ケーキと言えば、と須野さんが続ける
「うちは誰も食べないから用意しないけど、私は自分が好きだからケーキは一つ買うの。」
自分へのご褒美というやつか好物なのか。
今年はモンブラ〜ンと言いながら帰り支度を始めている。
「和木くーん、晩酌もしとけよ。」
と、井下さんが楽しそうに言い上がりとなった。


「お疲れ様でーす。」


外に出ると真っ暗だ。この間までまだ空が薄ら明るかった気がする。もう年末だ。

寒いなぁと心の中で呟く。

先程の世間話を思い出す。クリスマスと言ってもたいして予定もないが社会人になると皆そういったものだ。年末に飲み会の予定はあるが以前程ではない。

「そうだ。」

近くのコンビニに入る。


晩酌用にお酒とアテに野菜のマリネを買った。ややヘルシーか。それと小さめのショートケーキも購入した。完全に先程の会話の影響だ。それらをそっと鞄に忍ばせた。

帰ってどうしようか。たまにはニュース以外の番組でも見てみようか。晩酌もできるしケーキもある。

「あ、クリスマスは24日だったか。」

まぁいいか。そういったものか。



少し笑いそうになりながらタケシは思ったのだ。





閲覧ありがとうございます。タグもお借りしました。初めて小説を書いたのですが学生時代の読書感想文以来なのでかなり拙いです。また機会があれば挑戦したいです。