最近読んだ本:きらめく拍手の音

この本も最近観た映画「きこえなかったあの日」と同じく、仕事の関係で聾について知りたく手に取った。

著者は韓国で活動する映画監督・作家。わたしとちょうど同世代の彼女は、自身は耳がきこえる「聴者」であるが、ろう者の両親のもとに生まれ育ったコーダ=Children of Deaf Adults だ。口ではなく手で、目で、語らう両親の世界を他のどんな言葉より美しいと感じていた。幼い頃から両親ときこえる人の世界の橋渡しをしてきた著者は、周囲の誰よりも早く世の中のことを知り、大人にならざるをえなかった。彼女の葛藤とろうの世界への愛、そしてコーダとしての自らのアイデンティティが語られている。

これまでテレビで手話ニュースを見るたび、なぜ手話が必要なのだろう?字幕のほうが過不足ないのでは?と思っていた。ところが、先天的にきこえない人にとってきこえる人の使用する言語の習得はむずかしく、特に昔のろう学校では手話を禁じ口話で意思疎通をさせようとしていたために、高齢のろう者の中には日本語の読み書きがままならない人もいるそうだ。(この本では韓国の様子が描かれているが、同じような状況のようだ。)彼ら/彼女らは言葉が使えないのではなく、きこえる人とは異なる言語を使う人たちなのである。

ろうは文化。手話は、手で、目で、微細な表情で語る言語。口で話す言葉とは異なる言語なのだ。このことはわたしにとって大きな衝撃で、ろう者というのは障害者というより、同じ国に住んでいる別の言語を話す人なんだと思った。

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