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玉手箱

春先の涼しい風を感じると
流れゆく季節の早さに目が眩みます
桜が散って蒼が芽吹くと
不器用に閉じ込められた記憶が蘇ります

正解なんて分からない人生で
あなたという人に出会った
自分を見失いそうになった時
あなたという「正解」に救われた

思い出す度に胸が痛むので
心の奥底に靄(もや)をかけて置いてある
ふとした弾みに出てくるから
開けてはいけないけど消すのも名残惜しい
そんな玉手箱みたいな思い出


1年間あなたと過ごしたから
結局どの季節でもあなたを思い出せます
でもわたしは強くありたいので
吹っ切れたフリを続けています

今ではあなたは私の「誤答」で
あなたみたいにならないように
あなたと対照的な人を
私の「正解」にしています

思い出す度に傷がつくので
綺麗なままにして置いておきたい
ふとした弾みに出てくるから
玉手箱はもう傷だらけ

私だけに向けられた笑顔
私だけに向けられた歌声
私しか知らないあなたの過去
私しか知らないあなたの弱さ
全部全部ひとつ残らず玉手箱に入れておきます
私は 私は 
あなたの傷になりたかった

思い出す度に胸が痛むので
靄がかった記憶をさらにぼかしておきます
いつか いつの日か
綺麗さっぱり忘れることを望みながら
ずっと思い出として残したいとも思います
天邪鬼なところも含めて
愛されてると思っていた
あぁこの気持ちも 痛み苦しさでさえも
玉手箱に入れて 絶対に開けないでね

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