見出し画像

活版印刷とその原稿のヒント

画像10

重ねて揃えると小口の金がつながって金塊みたい。
紙meさんのこだわりカード企画でオーダーしたカードです。
「天金加工」という技術で、小口に箔が転写されています。加工は聖書製本の星共社さん。
小口を磨いてから箔を転写するそうで、完全な長方形とはならず、辺にわずかな丸みが加わっているのも味わいがあります。

画像2

印刷はまんまるさんによる活版印刷です。線がまんべんなくごちゃごちゃしているので、間にゴミつまって大変だったんじゃないかなあと(小さな活版印刷機扱ってみるとなんかわかる)。すっごいきれいに仕上げてくださいました。

画像3

版がもらえるというのもこの企画の醍醐味です。というか活版印刷は版代がかさむ印刷なんですよ…だけど一回つくっておくとそれでまた印刷できるので、汎用性の高いデザインにしておくといいと思います。わたしがあえて名前しか入れなかったのもそのため。印刷の勉強にもなります。

線が細いので真鍮版でオーダーしました。大きく分けて樹脂版と金属版があって、均等なドットなどをきれいに出したければ樹脂、細い線をシャープに出したいときは金属、みたいに使い分けできる(場合によっては選択肢が限られる)みたいです。材質の特性考えると、なんとなく予想つくというか。

https://letterpresslabo.com/2019/04/22/wacoo-column-ikitahan27/

画像4

版だけ見てるとそんな細い線がでてくるような感じもしないですが、この版が転写されてあれになっているのです。

画像4

わたしがやったら3枚めくらいでゴミを詰まらせそうです。

残念ながら今年は開催を見送られていた活版TOKYOですが、こういうところで活字をひとつふたつでも買って、インキつけて押してみると、なんとなく仕組みがわかります。去年は台湾から何店か来日してくださったんですよね。平和だったな…。

あと、「ちいさな活版印刷機」扱ってみると、はんこと活版印刷の違いもわかります。均等に圧をかけることの意味が。

活版印刷用の原稿をフリーデザインでつくるとき、線幅の下限は0.5ptくらいにしてくださいね、ってことなんですが

画像5

この原稿、太線と細線で構成されているんですが、細線が0.35pt(下限破り)。現物見ると、細い線もしっかり出ていますが、太い方との差が原稿よりは縮まっている感じなので、結果的に細い線が若干太るのかもしれない(そういう意味での下限だと思われます。まんまるさんの印刷物を見ていると、実際のところ、丸ペンでひっかいたような細かい線もきれいに出しているので、ぜったい無理、っていうわけではなさそうです。要相談だと思いますが。わたしもめっちゃ相談するし)。この線、出るか出ないかわかんないけど、あるとないとでは大違いだから入れとけ、は今までにもけっこうやってた記憶があります。色とかも。でも細線がきもーち太線に寄ることでデジタル感が薄まって、ちょうどマイルドな差になった感あります。この差をつけてないと、のっぺりした仕上がりになった可能性も。

線はイラレのパスそのままで、等幅の線なんですが、線が密集したところにできるわずかな墨溜まりと、金属に彫られた線にインキがついて圧かけて紙に転写、という工程を経ることで、程よくゆらぎがでてます。極細線の場合は、なんちゃってレトロ加工(線に強弱つけるとか、わざとかすれさせるとか)は、むしろしないほうがよさそうです。昔の活版印刷時代の文庫本とか見ると、1行読めないとか、行の途中の文字がかすれて見えないとかざらなので、おおらかな時代だなと思う(今だとクレームきますね)。

画像6

活版の線を見ていると楽しいので、机の前に貼って眺めてます。いいですよ名刺サイズのポスター。

画像7

この企画ではおまけで違う紙に刷ったものも入ってました。版が元気なうちに(物理だから永遠ではないからね、欠けることもあるし)、違う紙にも刷ってみたい。

画像8

以前別の企画でサンプル提供したときの版を、この企画のサンプルにも使っていただいたので(ややこしい)、そのサンプルも天金で少しいただきました。この原稿は下限を守った優等生的な原稿で、『入稿データのつくりかた』にも掲載しています。

https://www.amazon.co.jp/dp/4844367803/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_wq7tFbKEA0F9R

画像9

鹿のほうのカードは、現在(2020.8.24-9.20)開催中のカミメマーケットで販売中の『diablogue.』にノベルティでつけています。

画像11

インキの色が金と黒の2種類あるので、裏返しでどっちかわかんないようにしてます。これ事情を知らないと白いカード?ってなるだろうな。

画像12

原価の段階で売り物のポストカードの価格を超えます…貴重です…

画像13

昼間ツイートしたんですが、とらやの箱(たぶん「羊羹・最中詰合せ 3号」)が、名刺とハガキをいっしょにしまうのにぴったりサイズです。あとぴったりシリーズとしては、チェルシーの箱が名刺サイズです。

ハガキは販売用につくっても在庫をはかすのがたいへんなので、もう年賀状兼ノベルティとしてつくることにしてます(年号を入れない年賀状を毎年つくってて、その残りをノベルティに運用)。カミメマーケットで販売してる本にもついてたりすると思います(ただし、数が残り少なくてランダムでつけてるので、ないのもあります)。ハガキほしいかたはこういう機会に。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?