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Illustratorで長文を組んで面付けする

少し前の話になりますが、小説家の一原みう(https://twitter.com/miu1hara)先生のご協力をいただきまして、Illustratorで長文を組んでネットプリントで配布する、というこころみをやってみました。こういうこと、前からやってみたくて、どこかに出版社や版権が絡まないテキストをお持ちの方いないかなーと思っていたところ、一原さんがnoteでオリジナル小説の連載を始めていたので、「もしかして、これの外伝とかショートストーリーなどないでしょうか…?」と声をかけてみたところ、二つ返事でOKいただきました。一原さん、わたしの作業が早いとおっしゃってましたが、一原さんのほうもAIか、ってくらい早かったです…。正味2日もかからずに全作業が終わった感じ。

一原先生の連載『青の緞帳が下りるまで』はこちらです。noteのアカウントをお持ちでなければ、ふつうにブクマして定期的に見にいくと、何かしら更新されてますよ。

Illustratorのテキストフレームに流し込む

1枚両面で16ページの面付けは慣れているというか、もう自分でフォーマットをつくって持っているのでそれに合わせて作業するだけなんですが、縦書き用の右綴じはやったことがなかったので、今回、右綴じ用のフォーマットもつくりました。印刷できない範囲や、印刷できるけど小口を裁ち落とすと消える範囲などは、過去に何度かつくった原稿でだいたい予想がついているので、そこにガイドをひいています。
小説を文庫本みたいにレイアウトするには、テキストフレームをリンクでつなげていくスレッドテキストが最適だと思います。Illustratorを、イラストや図を描く用途にしか使っていないと、そういうことができることになかなか気づかないかもしれないと思います。わたしもInDesignを使う前は、Illustratorにもすでに高度な文字組み機能があることに気づいていなかったです。


文字の間隔を設定で一括操作

「文字組みアキ量設定」は、かな漢字類+括弧類とか、かな漢字類の間の中黒とか、そういった特定の組み合わせになったとき、文字の隙間をどのくらいとるか、ということを一括で調整できる便利な機能です。これを知ってしまうと、気になるところにカーソル入れてカーニングで調整していたのはなんだったんだろう、という気持ちになります。調整しきれないところはそうしますが。

このメニュー、[文字組みアキ量設定の作成・編集]みたいだったら存在に気付きやすいんですけどね。


最終行の処理

最後の行の扱いについては、これが気になるか気にならないかだけだと思います。が、いっぺん気になり始めると調整したくなるんですよね。ほんとは設定して流し込んだら手を加えない、で済むのが一番いいんですが。文中に英単語やURLが入るときも、すごく悩みますね。自動でいい感じになってくれるのがいちばんいいんですけどね。
ちなみに、句読点はぶら下がりに設定しています。これも好みで、今回はそのほうが文字を多く入れられるのではと思って。


スレッドのリンクを解除の使い所

テキストをフレームに残したままリンクを解除、最初は便利そうと思ったんですけど、使い所がなかなか難しそうです。次のツイートに書いたように、字下げを設定でやっていると、テキストフレームの最初の行は独立した段落扱いになるので、これを使うなら字下げは実際のスペースでやって、設定ではしない、みたいにやり方を変えないといけないかも。そうすると、原始的だけど字下げスペース入りのテキストのほうがよかったりしますね。
同じファイル内ならテキストフレームのリンクは切れないので、好きなところに移動はできるんですよね。テキストフレームごとにファイルを分けて作業したいときなどには、使える手なんでしょうか。ちなみにこれ、InDesignにはないです。

ポイント文字(クリックしたら入力モードになるもの)とか、パスに沿って流し込む文字あたりは、基本だし映えるのでデザインレシピ中にも出てきやすいのですが、テキストフレームとか、文字間隔の設定などの細かいところまではなかなか説明する機会がない(だいたいページが足りない)ので、興味がありましたらこちらの本おすすめします。テキストフレームの操作などもけっこう細かく書いています。InDesignよりやれることが少ないぶん、因果関係がわかりやすく、大海で溺れる感じになりにくいと思います。InDesignは大海です…溺れます…

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これ紙版の在庫が少ないそうです。重版するかどうかはわからない(もともと電子オンリーだったものを紙化したというところもあり)ので、おはやめに。

InDesignの使い方覚えたいというかたはこちらをどうぞ。これは最初から電子書籍のみで、紙バージョンはありません。電子で見やすいように文字サイズなど調整しているので、紙の電子版みたいなみづらさはないと思います。InDesignの機能は多すぎるので、とにかく1冊本がつくれるように、ということに絞って解説しています。



テキストフレームとアピアランスの相性

仕様なのか一時的な問題なのかわからないですが、テキストフレームに変形効果などのアピアランスを設定すると、見た目が変わってしまうことがあるんですよね。スレッドテキストの場合は、リンクがなかったことになるみたいで、フレームにテキストを残したままリンクを解除したときと同じ見た目になりました。アピアランスを適用すると、一応テキストはリンクしているけど、内部的には独立したオブジェクトとして扱われるようになるんでしょうか。アピアランス消去すると元に戻るので、なんか変だなと思ったら消去するといいと思います。

このほかにも、「テキストフレーム」のほうに[塗り]や[線]を設定して、「テキスト全体」に何かアピアランスを設定すると、[塗り]や[線]が消える、みたいな現象もあります。アピアランスを重ねがけしていくと、いつのまにか最初にやった設定が消えてる…といったことになるので、見た目がいつの間にか変わっていないか、よく確認したほうがいいです。気づかなかったりするので…。
テキストフレームに[塗り]や[線]を設定しなければいいんですけど、現状、[グループ選択ツール]で選択したらそれができてしまうので、そういうこともある、というの知っておいたほうがびっくりしないかな、と思います。知らないと、文字の色を変えるつもりで、うっかりフレームのほうを選択してしまって背景に色がついた、どうして? みたいなことになります。
InDesignだと、テキストフレームに色を設定したり角丸を設定したりはふつうにできるので、同じ感覚で使えると便利なのですが、こういう事情で、あとあとアピアランスを適用する予定があるものは、テキストフレームと背景の長方形に分けて作業しています。やぼったいけどなんだかんだで分けてつくっておく、が安全なんですよね。

変形パネルの方を使うと、クリッピングマスクで覆い隠されている範囲を無視して回転できるというメリットがあります。ページサイズの透明な枠をつくって、それとグループ化して、中心をページの中心に固定して180度回転する、というしくみです。
ところがアピアランスの変形効果の場合は、覆い隠されている範囲も含めて中心位置が決められてしまうので、ページサイズでなく、それより大きい透明枠をつくって基準を指定しないと、位置がずれてしまうんですね。

ページの装飾にどうぞ

今回やってみたかったことのひとつが、ページの装飾です。作品中に出てくるブルースターで飾り罫をつくりました。かさばるうえに入れられる文字数が減ってしまうんですけど(そのために当初の原稿を大幅に短縮していただくことに…)、わたしは時祷書や聖書みたいな、基本的に昔の装飾ばりばりのページに憧れがあるみたいです。『花花オフィーリア』とか、同人誌版のほうにこういう素材をいろいろ入れていますので、同じようなことをやってみたい方どうぞ。ページ内に何を配置しても印刷カロリーは変わらないので、同人誌など紙面を好きにできる場合は楽しいと思います。


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