推しデッキでマジック・ザ・ギャザリングを遊べ

よく来たな。俺は野地海月だ。最初に言っておくが、俺は正直マジックに詳しい訳じゃない。このエントリに言う推しデッキとは、環境だとかそういう意味でお勧めするという事ではなく、単純に「推し」をテーマにデッキを作れという話だ。こう聞いてお前は、もしかすると「MtG お勧め」などの軟弱なワードで検索してたまたまここに来たお前は、なんだ有益な情報も一切無いゴミ溜めか、クソエントリめ、シケた酒場はビールと称してションベンしか出さんものだな!などと悪態をつきながら回れ右をして帰る事だろう。

帰りたければ帰れ。

だが、そういう近視眼的な奴には、チンピラムーブの果てに真にタフな男の前で為す術もなく死ぬような奴には、到底出来ない遊びの話を俺はする。回れ右をした奴らには得られない世界だ。俺は初心者だからこそ、初心者なりに面白くやろうという想いからこのエントリを書くに至ったし、書けるだけの熱意と情報の結晶がある。

新しい荒野を開拓しろ

俺が話をしようとしているのは、スタンダードだとかレガシーだとかモダンだとか、そういう一定のルールの中で強い(あるいは面白い)デッキを作っていくという、通常MtGプレイヤーが目指す世界とは別の、新しい世界を、荒野を開拓する話だ。だからこのエントリは今までのマジック・ザ・ギャザリングではあまり語られなかった話をする。もちろん、これは言ってしまえばファンデッキの類であり、オールバックでしけたスーツを着たインテリが「ファンデッキというものはMtGが出来た初期から存在し…」等と言ってくるだろう。だが、このインテリを右フックで殴り飛ばしながら言いなおすならば、これまでのファンデッキとはマジックのファン…マジック・ザ・ギャザリング上の概念を推していく事だったのに対して、俺が話をしようとしているのは「マジック・ザ・ギャザリング外の」概念を推す事を、マジック・ザ・ギャザリングに落とし込めという話だ。

だから、このエントリを読んだ後得意げにカードショップに行けば、店員の代わりにダニー・トレホが出てきてお前を殺すだろう。一方でお前も俺と同じ楽しさを知ることが出来れば、俺たちのマジック・ザ・ギャザリングという荒野には、必ずや感動的なバトルが待っているだろう。

タフになれ。愛を語れ。

2万の武器を携えろ

とは言え、だ。ここまで残っていてもまだお前たちは根本的な疑問を払拭できずにいる事を俺は理解している。マジック・ザ・ギャザリングで、あのよく分からないが怒ってるババアと目が光ったハゲばかりが出てくる、あるいは醜いゴブリンと愛想のないエルフばかりが出てくる、たまにサイバーパンクや中世のマーケットのような世界観はやりつつも基本はダークファンタジー丸出しのゲームで、推しを表現できるのか…?荒涼とした大地に可憐な花は咲かないのではないか?そういう疑問自体は理解できる。

だがこれは真の男のゲームだ。焦るお前に結論を先に言えば、全く問題はない。お前はクーラーの効いたレストランのマリアッチが目の前で歌う特等席で、ドレッシーな黒髪の美女から葉巻を受け取るような気持ちでデッキを作ることが出来るだろう。なぜならマジック・ザ・ギャザリングは今や2万種類に近いカードがあり、それはつまり、それだけのカード名があり、それだけのビジュアルがあるという事だ。

これだけ材料が揃っていて、2万の言葉と2万の絵があって、それだけの材料をもってして推しが表現できないなどと言い訳が出来るのか?2万種類の花を前に、お前は推しへの花束を作れないというのか?仕事で情けない英文メールを作っているお前が知っている英単語よりもはるかにマジックのカードは種類が多いのに、お前は恋文一つ書けないというのか?

落ち着け、慌てるな。深呼吸をして周りをよく見ろ。お前はスティーブ・ブシェミじゃない、2万の武器を携えているタフな男だ。バンデラスのように、相手から目を逸らさず愛を語れば、お前のその姿そのものがラブシーンだ。

パウパー+αで挑め

そうは言っても、いきなり無限の可能性を前にすれば誰しもが立ち尽くす事も俺は理解している。それに、2万種類の言葉・絵からお前が推しを表現することが出来ても、マジックのルールに照らし合わせてそれが十分に戦えるデッキかというのは当然お前たちが気にするところだろう。

実際その指摘は正しい。だから俺は真の男達の暗黙のルールとして「パウパー+α」をお前に授ける。つまり、基本はパウパーだが、どうしても推しを表現するのに必要な少数のレア・アンコモンは許容する、という事だ。

この方法の良い所は、推しデッキ同士のパワーバランスが極端に乖離せず、推しデッキ同士でお互いの推しを表現しながらのバトルが出来る事、そして同時に推しデッキ自体の高額化がある程度抑制できることだ。

大前提としてこの「推しデッキ」は、お前が推しをどう表現し、どう戦うかというダンスだ。これは勝ち負けそのものよりも、いかに勝負を盛り上げる事が出来るかに全てが懸かっている。ストロングスタイルと言いつつその実しょっぱい打撃とヘッドロックを打つのではなく※、トペ・スイシーダやジャベを魅せるメキシコのプロレスだ。金に飽かしたり、パワーで蹂躙するのではなく、お互いが十分にデッキを回す華やかな試合である事。パウパーを前提とすることでアンバランスさを回避できるし、気軽に作る事が出来る。

※断っておくと「その実」と書いた通り、ちゃんとしたストロングスタイルをしているプロレスは素晴らしく、あくまで「ストロングスタイルと言いつつそうではない、その実しょっぱい打撃とヘッドロックだけのプロレス」を俺は批判している。そしてそれはそれとして、ストロングスタイルも真の男のプロレスだが、俺は今自由な翼をもつルチャ・リブレをマジックの世界に持ち込もうとしている。

しかし、そうは言っても「こんなにフィットする単語があるのに、パウパーでは使えないなんて!」という事はある。ライムとドリトスがあるのに、テキーラだけが無い夜に耐えられるか?後述するが俺はあにまーれの推しデッキを作ろうとして「風見明神」が使えなくて泣いた。限度はあるが、こういう事で泣くぐらいであれば、華やかさのために多少はパウパーの禁を破ってもいいのではないか。愛の前には全てが自由だ。だがもちろん、先ほどの通り、この推しデッキバトルは相手の事も立てるバトルであり、こうした解禁には限度と節度が求められる。メキシコの西部劇に戦車を持ってくるほどシケた事は無いが、ガトリングガンを使いながら欠けた歯を見せつけてくる体のデカい男はヴィランとして映える。そういうクールさをお前は身に着けるべきだ。

実例:キレるるかことクールな大浦

さて、俺がこの推しデッキというルチャ・リブレ、あるいはガンマンが睨み合うメキシコの華々しい戦いに持ってくるのは、当然大浦るかこだ。この女は知的でクールでありながら、時に激情を魅せる、真のいい女だ。お前たちも大浦るかこを知れば、メキシコの荒野を共に歩くなら大浦るかこ以外に他は無いと知る事だろう。

彼女はあにまーれ所属であり、梟モチーフのスパイだ。なんと…マジック推しデッキに愛されるヒロインとはこういう事だ…「空戦域の大梟」「月回路のハッカー」「魂刀のスパイ」などがすぐに頭をよぎる。青…ブルー…彼女を象徴する色だ…これをベースにデッキを作っていけばいい。時に魅せる激情は「猛り狂い」、後で後悔するほどの断捨離や作業量の見積もりの甘さは「向こう見ず」など、赤を入れる事も出来る。しかも赤のインスタントやエンチャントは「空戦域の大梟」と相性がいい。

もちろん裏ラジオウルナイトや、電脳図書館で魅せる落ち着いた知性も見逃してはならない。「高揚する書物」や「渦巻く知識」「物知りフクロウ」など青で統一しガンガンドローをしていくのも良いだろう。呪文妨害も「高尚な否定」だけではなく、時に見せる「取り繕い」や、「安全維持」(なんと梟がモチーフのイラストだ)などが使える。赤青パウパーの「キレるるかこ」と青単色の「クールな大浦」で2デッキ作り、戦わせることが出来そうだ。さぁ、始めよう。

キレるるかこデッキ
空戦域の大梟
護輪のフクロウ
月回路のハッカー
悲惨な群れ※
猛り狂い
向こう見ず
実例指導(梟面の魔導士がイラスト)
ショック(丸眼鏡のイラストのがある)
よろめきショック(大浦るかこはたまにコラボ配信で共演者のボケにツッコミを入れた話を翌日自分の配信で共演者不在のまま思い出しいじりをする事に由来する。主に湖南みあが被害者
針落とし(ダメージを与えた相手にもう一度ちくちくする。主に湖南みあが被害者
翼ある言葉
取り繕い
高尚な否定
一つの心に
※悲惨な群れは「リスナー」である。チャンネル登録者数がちょうど4万人なので、デッキに4枚入れて1枚1万人として悲惨な群れを召喚し、るかこを守らせているし、一つの心にを入れる理由としている。守備クリーチャーとして優秀でもある。

クールな大浦デッキ
空戦域の大梟
護輪のフクロウ
物知りフクロウ
魂刀のスパイ(イラストが図書館なのもグッド)
渦の走者(正直、顔が似てる)
翼ある言葉
取り繕い
高尚な否定
錯乱プロトコル(「とにかく、それを落としましょうか」というフレーバーテキスト、あまりにるかこ過ぎる)
安全維持
渦巻く知識
情報収集
眠りの秘薬(安眠ゲームズ、という配信シリーズがある)
ゴーグル・オブ・ナイト

マジックの経験者なら、パウパーとして、メタが取れるほどではないが弱すぎもしない…という塩梅な事が分かるのではないだろうか。

そして同時に、大浦るかこを知る者ならすぐに気づくだろうが、このデッキでプレイしていると、呪文を唱えるたびに一言二言つい遊んでしまう。「高尚な否定」を唱える時には「そもそも…」と大浦るかこの口癖を真似ながら相手の呪文を打ち消すロジックを言い出すだろうし、「情報収集」を使う時にはツイッターのトレンドの話を始めだすだろう(大浦るかこは朝枠ではツイッターのトレンドの話をよくする)。バンデラスを思い出せ、引き金はクールに引くだけじゃなく、時に魅せるために舞いながら引くのだ。

ちなみに、推しデッキで俺とルチャ・リブレをしてくれているA氏は、「結魂」(結婚)を中心とした湖南みあデッキを作っていた。今はA氏も俺もツキノテブクロ(マジックに出てくる植物)のカードを用いて月野木ちろるデッキを作る事を検討している。また、どうせなら(偽)あにまーれデッキも作ろうと構築中だ。この時に風見明神がレアで俺は泣いた。

愛を語り、奇跡を起こせ

このデッキを作るにあたって、二つのシネマがあった。俺が本気で挑んだことで起こせた奇跡が、メキシコの伝説があった。

一つは、このデッキを完成させた翌日、大浦るかこその人が「冷静な過去浦が、キレる今浦を封印した」という内容の配信をしたことである。

そんなことがあるのか?あっていいのか?俺は静かにテキーラをあおった後、人知れず泣いた。通りにはマリアッチがギターを弾きながら歩いていた。だがここまで読んだ真の男には言うまでもないが、俺が泣いたのはタイミングが良かったからじゃない。マフィアに殴り込みに行くバンデラスがギターケースの中に入れる武器を厳選するように、俺が、マジックを通じて彼女を理解しようとした結果、60枚の中に彼女を表現し彼女が舞う姿をイメージするために策を練り続けた結果、二つのデッキという、本人の表現に近い解に辿り着いた事に俺は泣いているのだ。通りにいるマリアッチも同じだ、ギターの音を上手く鳴らす事を意識しているのではなく、亡き友や分かれた恋人を想う音が乾いた空気を震わせている。マジックで推しデッキを作るという事は、同人作品を作るのと同様の、推しを理解し表現する事として成立していると確信できた事に、俺は泣いたのだ。マリアッチも分かって外の通りに出てきてくれた。

もう一つのシネマは、A氏の存在である。A氏は俺が大浦るかこデッキを作り始めたのを受け、大浦るかこの同期である湖南みあデッキを作る事を決意し、ネタ集めのために湖南みあの配信を聞いてハマり、最終的に湖南みあのメンバーシップに入っていた。元来A氏はマジックプレイヤーであったが、推しデッキというものを作るのは初めてに近かったかと思う(それはそうだろう)。推しデッキ作り自体も楽しんでくれたし、結果的に774incにしっかりハマった。真の楽しみを理解する男は774incを観る、なぜなら774incもルチャ・リブレと無法の国メキシコだからだという事は、バンデラスだけでなくキアヌも言っていたから間違いがない。つまりA氏も真の男だ。

振り返るに、A氏の件は間違いなく推しデッキバトルの魅力そのものの結果だ。マジックという共通ツールを使う事で、楽しみながら推しをお互いに語ることが出来るという、非の打ちどころのないフォーマットによって愛が深まるのだ。この荒涼とした現代で、ならず者が闊歩するメキシコで、それでもタフな男が愛を語る事で迎えられる一つの楽園。お互いを認め合いながら殴り合う事で見えてくる、セクシーで、タフで、美しい世界。

さぁお前も推しデッキでマジック・ザ・ギャザリングを遊べ。俺も愛を以って受けて立つ。

※文体の都合敬称略しましたが、大浦るかこ様、湖南みあ様、アントニオ・バンデラス様、ダニー・トレホ様、スティーブ・ブシェミ様、キアヌ・リーブス様、大変失礼いたしました。

続編出来ました。

https://note.com/nojikurage/n/n084e84f3782a

A氏の記事もあります。


るかこさん記事はこちら。


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