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初めて触れる現代声楽曲(ソロ編その2)

その1では現代声楽曲の歴史的名曲を中心にお届けしましたが今回はもう少し新しい作品を中心に。楽器もエレクトロニクスも使わないどソロでもこれだけのことが声にはできるんだという驚きがどの曲にもあります。お気に入りが見つかりますように!

Der Turm zu Babel(2002)/Mauricio Kagel

Musiktheaterの祖、カーゲルが残した作品。旧約聖書の同じテクストの18もの異なる言語訳に、それぞれ異なるメロディーがついた作品となっています。なんと9番は日本語。知っている言語の作品から取り組めるので初めて現代曲を歌うぞという方も取り組みやすいでしょう。動画はドイツ語。そういえば日本語ソロだと早坂文雄の「うぐいす」も美しいですよね、この曲は日本の門下の先輩である宮地江奈さんの素敵な演奏動画があったのでこちらも貼っておきます。

Me belle,si tu voulais...(1997)/Philippe Leroux

今となってはラップも音声芸術の一つとして認められていますが、現代音楽の楽譜でラップのようにという指示が初めて書かれた曲の一つ。しかも元々は13世紀の民謡からメロディーは取られています(原曲も見つけたので貼っておきます)。ルルーの声楽曲は完成度が高くどの曲もフランス語の美しさが実に生きた作品になっています。私もストラスブールの卒業試験ではこの曲に挑戦しました。早口はゆっくり練習するのがコツ。また彼のもう一つのソロ曲、Je brûle, dit-elle un jour, à un camaradeも最高に格好良くいつか歌うのが私の夢です。

Jenseits der Sicherheit(1977)/Vinko Globokar

最近日本でも演奏が増えてきていて嬉しい限りのグロボカール。彼は2曲の声楽ソロ作品Jenseits der Sicherheit(安全の向こう側)、Second Thoughts(再考)を書いています。特にこちらの作品は口笛、ホーミー、叫び声、さらにそれらの合わせ技など声の限界に挑戦している作品と言えるでしょう。2014年に両国門天ホールにてフランス在住の声楽家、林千恵子さんが両曲(+レシタシオン全曲も)演奏されていて呆気に取られたのを今でも覚えています。映像はハンブルクを中心に大活躍のパフォーマーFrauke Aulbertによる演奏です。

Die Alte(2001)/Carola Bauckholt

最近ドイツ周辺で大人気の女性作曲家Carola Bauckholt。飽きさせない楽曲構成とユーモアも忘れないセンスが両立した作風が愛されています。そんな彼女もたくさんの声楽曲を書いているのですが今回はどソロに特化したDie Alteを。この曲ではグロボカールのような(しかしさらに叙情的な)特殊唱法のオンパレードとなっています。歌いこなすSalome Kammerもさすがです。

G.L.O.R.I(2005)/Jennifer Walshe

2010年代のパフォーマンス音楽界を席巻した作曲家ジェニファー・ウォルシュによるソロ作品は数々のポップソングを短くコラージュした1人シャッフル曲です。時々知っている曲が出てくるとおおっ!となる楽しみもあります。上述した歌手のFraukeはこの曲の全てのコラージュの本作品を調べ上げてテクストにまとめるという偉業も達成しています。作曲家自身によるパワフルな演奏でどうぞ。

番外編: アーロンのための悲歌(1974)/松平頼暁

邦人作品がないぞ!!!と言われそうなのでどソロの素晴らしい作品を紹介させてください。先日、声楽作品集CDも発売になった松平頼暁による作品「アーロンのための悲歌」。こちらはシェーンベルクのオペラ「モーゼとアロン」の作曲されなかった第三幕のテキストに作曲された非常に力強い作品です。モーゼとアロンを中心にテクストに出てくる様々な人物の語りを様々な唱法をともに(時に足踏みや口笛なども含め)すすめていくのがとても面白いです。

まとめ

駆け足で10(+1)曲ほど紹介してみました。今回は声のみで勝負をかける作品を集めてみました。他にもエレクトロニクスや小物を含む声ソロ作品、リートやアリア、室内歌曲、合唱など様々なジャンルがあります。これらも別機会に少しずつ紹介したいなと思います。皆さんもおすすめあればぜひ一報ください!

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