映画「枯れ葉」

ユーロスペースへ行き
アキ・カウリスマキ監督
「枯れ葉」を観た。

舞台はヘルシンキ。
理不尽な理由で突然解雇された女と、アルコールに溺れて日々楽しみを持たない男が知り合ってから、少しづつ、進んだり、後退したり、気持ちを秘めながら惹かれ合っていく。
会えないけれどなかなか思うようにならない、というもどかしいストーリーは一番観客の心を締め上げる(?)シンプルなラブストーリーでありながら、脇役や音楽、映像遊びの巧みさが素晴らしいの一言。
主人公の女、アンサは気晴らしに音楽を聴こうとスイッチを入れる。
ウクライナ戦争の悲惨なニュースが流れるラジオ、廃棄される食品で生活をつなぐ人々、そして人の孤独…重い人間の日常を繋ぎながらも、純粋に恋が芽生えて惹かれ合い出会った2人がデートで観る映画は、低級ゾンビ映画。何とも表情のない観客と、スクリーン越しにこのシュールなゾンビ映画をみてガックリして、こっちは吹き出しそうになる。このように、影のある設定と、真逆のユーモアをいともたくみに編み込んでいる絶妙なバランス感に、私はただただ心を任せて純粋に楽しんでしまった。

遊び心たっぷりな振り子の揺らし方により、私たちの心は気づくとこの映画、そしてアキ監督映画にからかわれるように虜になってしまう。

演出センスが抜群である。カメラの画面に収まる色や間の置き方ががいちいち計算されており、それが嫌味でもなくアクセントになっていて観るこちらもつい楽しくなる。
全てのカットに「赤」が収められている。洋服、壁、置物、そしてグラスの中の飲み物まで……
ストーリー設定は決して明るくはないにも関わらず、至るところに監督のこだわりが光っており、そしてフィンランドの人気姉妹アーティスト、マウステテュトットの軽やかで影もある、アンビエンスなニュアンスを無感情に歌い上げる演奏がこれまた心憎い。

そして耳がピンと立ったワンコの可愛いこと!(あーやっぱりいつか犬が欲しい。。。)

うっかり気づかず残念だったのが、主演女優のアンナ・ポウスティが挨拶に来日していたそうな…そして映画の中で演奏しているフィンランド人気姉妹デュオ、Maustetytöt (マウステテュトット)のアンナ・カルヤライネンさん、カイサ・カルヤライネンさんも来日…
行くことができず残念だった。

切なく甘酢っぱい後味が心地よい、素敵なラブストーリーだった。


「枯れ葉」

監督・脚本:アキ・カウリスマキ/出演:アルマ・ポウスティ、ユッシ・ヴァタネン、ヤンネ・フーティアイネン、ヌップ・コイヴほか
2023年/フィンランド・ドイツ/81分/1.85:1/DCP/ドルビー・デジタル5.1ch/フィンランド語/原題 KUOLLEET LEHDET 英題 FALLEN LEAVES
配給:ユーロスペース 提供:ユーロスペース、キングレコード 後援:フィンランド大使館

https://youtu.be/dGzwiUkFDVc?si=0mVuzbB-u9fa1v0c

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