見出し画像

2050住宅部門カーボンニュートラル推考④太陽光発電、総合評価

前回は太陽光発電を除いた省エネ量の計算について述べた。そもそも国交省の住宅部門の省エネ量計算は太陽光発電を加味したものではないからだ。しかし当然ながら実際には、太陽光発電の評価を加味した上で2050年に住宅部門の一次エネルギー消費量がどうなるかを見る必要がある。ということで、今回はそのあたりから始める。

太陽光発電の評価計算

ご存知のように、国は新築戸建て住宅への太陽光発電の設置割合を60%にすると言っている。ツールでは、まずはこうした評価ができるようにし、それ以外に新築戸建て住宅への設置義務化年を設定できるようにした。その部分が以下だ。黄色のセルに比率や義務化設定年を入力する。

新築戸建て住宅への太陽光発電の設置に関する入力部分

そうして入力すれば、次のような結果(2030年時点の結果)が出てくるようになっている。なお最終評価(総合結果表示)のために、1)もしくは2)の選択ができる。

入力内容に基づく省エネ量の計算結果

ちなみに2)の場合というのは、先に画像で示した「2025年に設置義務化」とした場合の結果になる。やはり早いうちに義務化すれば、太陽光発電による省エネ量は大幅に増えること(176.3万kL→306.8万kL)がわかる。

そして次に2030年以降~2050年の評価を行う。そのための入力は以下。ここでは新築戸建てだけではなく既存戸建ての設置戸数も評価できるようにしている。

2050年での評価を行うための入力

そうすると、次のような結果が出てくる。2030年時点での設置容量は、先ほどの2030年までの新築戸建ての設置に関する入力において「経産省の想定」を選択した場合の結果を示している。その上で、先の設定(入力)をすれば、2050年には大幅に設置容量が増えることがわかる。

2050年での太陽光発電の評価

2050年時点での結果

これまでの入力内容に従って、次のような結果が得られる。

2050年時点での結果

念のため、これまでの入力内容を確認しておこう。
■2022年~2030年における一次エネ消費量計算
 国の計画通り
■2031年~2050年における一次エネ消費量計算
 新築戸建て住宅→平均でBEI=0.65
 改修戸建て住宅→BEI=1.0以下の住宅をすべてBEI=0.9に改修
 新築共同住宅→平均でBEI=0.7
 改修共同住宅→s55レベル以下の住宅をすべてBEI=1.0に改修
■2022年~2030年における太陽光発電の新築戸建て設置率
 国の計画通り(2030年で60%)
■2030年~2050年における太陽光発電の新築戸建て設置率
 90%
■2022年~2050年における太陽光発電の既存戸建て設置戸数 
 15万戸/年(現状の3倍)

こうした想定で、消費量と創エネ量との差が24.8億GJになるというわけだ。私はこの数値に注目して住宅部門2050年カーボンニュートラルを評価すればよいのではないかと考えた。そのあたりを次に述べる。

住宅部門2050年カーボンニュートラルの評価(野池私案)

まず大前提として、2050年では国全体がカーボンニュートラルになることを目指すので、エネルギー供給はほぼすべて再生可能エネルギーになっていると考えるのが妥当だろう。そしてその再生可能エネルギーのほとんどは電力として供給されるはずだ。
だから当然、住宅で使うエネルギーも再生可能エネルギーによる電力になる。ということは、先の24.8億GJがこの電力供給によって賄われることになる。

一方、現時点の住宅部門全体の電力消費量は23.5億GJだ。日本全体の発電量のうち23.5億GJ分だけ住宅部門にあてがわれているということになる。
これから発電方法を再生可能エネルギーによるものに転換していくことになるわけだが、2050年で住宅部門全体で23.5億GJ分を超える電力が必要になれば、それを賄うために再生可能エネルギー発電所の増設(転換ではなくて増設)が必要になってくる。
またそのために再生可能エネルギー発電所の増設をしないのなら、他の部門(産業、業務、運輸など)へのさらなる省エネの負担が増えることになってしまう。先の結果で言えば、1.3億GJ(24.8億GJ-23.5億GJ)の差分によって、住宅部門が日本全体に負担をかけることになるわけだ。。

ということで、「消費量-創エネ量≦23.5億GJ」となることが、住宅部門2050年カーボンニュートラルの条件になると私は考えた。

ちなみに、現時点での住宅部門全体の一次エネルギー消費量は46.5億GJになっている。だからこの消費量を2050年までに約半分にしなければならないわけで簡単ではない。省エネをしっかり進め、太陽光発電をしっかり載せていかなけばならない。

次回はこの考え方に従って、戸建て住宅分野ではどんな実践が必要になるのかを探っていこう。

なお、以上の考え方や根拠にした数値(現時点での住宅部門全体の電力消費量や一次エネルギー消費量)に関して、意見や指摘があればぜひお寄せいただきたい。「住まいと環境社」で検索してもらえばそのサイトに行き当たって、トップページの一番下にある「contact」をクリックすればメールアドレスがわかるようになっている。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?