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住宅部門2050カーボンニュートラル推考③ツールの紹介と国交省の省エネ計算

さて今回からは実際にシミュレーションをやっていこう。今回はツール(住宅部門2050エネルギーシミュレーション)の全体をご紹介しながら、国交省の省エネ量の計算方法や結果を確認する。

戸建て住宅の入力と計算

次の画像は「戸建て住宅の計算」のシートの最初のところだ。このシートには改修による省エネ量の計算も含まれているが、まずここでは新築の計算を行う。

戸建て住宅の計算の冒頭部

新築の計算を行うために、まず新築住宅の性能を設定するのだが、このツールでは「1)国交省の想定による方法」と「2)新たなパターンをつくる方法」の2つの選択ができるようにしている。今回は国交省の計算を確認するのが目的なので1)で進む。2)については次回以降でご紹介する。

次の画像は2025年と2030年の性能別の新築戸数の割合を入力する箇所。黄色のセルのところにその数値を入れる。BEIは国交省が想定しているエネルギー性能。それぞれの入力箇所の下に「国交省想定(参考)」という欄があるが、これが前回ご紹介した国交省が想定している数値になる。

新築割合を入力する

今回は国交省の想定での計算結果を確認するので、国交省の想定と同じ数値が入力されている。

次はその想定での計算結果を示しているところ。国交省があり方検討会で示した試算である165万kLと計算結果が同じになっていることがわかる。

新築/戸建ての計算結果

これだけを見ると「はい、そうですか」という話なのだが、これを一致させる計算条件というか計算ロジックをつくるのに膨大な時間がかかったというわけだ。苦労話をしてもしょーがないが、次にその計算方法の一部をご紹介しておこう。これは最終形の計算シートの一部で、ここに至るまでの過程でエクセルのシートを100枚ほどつくって試行錯誤した。

実際の計算シート。そのときの苦労を思い出すなあ。

話を戻せば、当然ながら新築割合の入力を変えれば結果も変わる。ちょっとやってみよう。

2030年にはBEI0.65の新築が100%になると入力
そうすると、省エネ量が165万kLから173.7万kLに増えた!

次は改修だ。

改修/戸建ての入力欄

改修で入力するところは3カ所。2022年以降の年あたり改修戸数、改修の想定、改修比率になる。今回は国交省の想定通りの入力になっている。ちなみに、国交省計算資料(前回ご紹介した資料)には「改修戸数:25万戸/年」とは記載されているが、戸建て住宅と共同住宅の比率の記載もないし、エネルギー性能別の比率の記載もない。なので、ここがどうなっているかを考えるのにものすごく苦労した。結果的には、戸建て住宅と共同住宅の比率は「94.8%:5.2%」、戸建て住宅での性能別の比率は上の画像で掲載されている通りになった。
そんなこんなで計算条件を読み解いた結果、次のように国交省の省エネ量と一致するロジックをつくることができた。

国交省の計算結果と一致!

共同住宅の計算

このツールでは、以上(戸建て住宅)と同じような計算シートを共同住宅でもつくっている。ただし、私は仕事上の立場が戸建て住宅チーム担当なので、戸建て住宅のように独自に性能を設定できるようなプログラムにはしていない。共同住宅に関しては、結果が合っているところだけ確認してもらおう。

新築/共同住宅の結果
改修/共同住宅の結果

2031年~2050年までの計算

国交省の計算条件を読み解き、結果と一致するようなツールができたよという話は以上。次はこのロジック(ここまでの計算は2030年まで)を2031年以降にも適用して、2050年までの計算ができるツールになっているという話に移る。

2050年時点での一次エネ消費量(戸建て)の計算

その冒頭部分の画像が上。新築/戸建て住宅の計算を最初にやる。国交省は2031年以降の計画を発表していないので、2031年以降の新築/戸建ての性能を設定する必要があり、このツールでは「BEI=0.65」「BEI=0.5」「BEI=0.4」の3つを設定することにした(上の画像ではBEI=0.4の説明は切れていて読めない)。ざっくりとした状況(結果)を見ることが目的なので、これで十分と考えたわけだ。

新築/戸建て住宅の棟数割合を入力

そして2031年~2050年までの新築棟数割合を入力する。ここではBEI=0.65の新築だけが建っていくという入力にしている。

最後は改修の入力。改修の想定は上の画像でわかるように2通りのパターンをつくった。
そして新築と改修の入力内容に基づいて計算された結果が以下。

読みにくくて申し訳ないが、このようにエネルギー性能別の2050年時点でのストック数が出てきて、一次エネ消費量(ここでは16.3億GJ)も計算される。2021年時点での一次エネ消費量が30億GJなので、かなり減ることがわかる。

今回はここまで。これ以外に、当然このツールでは太陽光発電の評価ができるようにもなっているし、2050年住宅部門カーボンニュートラルの評価(これが本丸だ!)もできる。次回はそこまで進もう。

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