素敵な仕事なんだけど…

ひとに秀でた技能がある、ということとそれを生業にできる=稼げるということは違う、寝ても覚めてもそのことから逃れられないのが事業責任者の立場だと感じます。
グラフィックデザイナーの方とお話をする機会がありました。
グラフィックデザイナーという仕事もなかなか厳しいですね。

お話をしてあらためて気づかされたのですが、グラフィックデザインが「モノに美しさを与える」ことは直感的にわかるのですが、「無体物に像を与えられる」というのがグラフィックデザインのすごいところでした。もう少し簡単に言えば「コト」と図案を結び付けることができる、ということです。
たとえば、東京オリンピックのロゴマーク、1964年でも2020年でも「あ、これね」とすぐに思い浮かびます。社会に共通の図案を与えることで「モノやコト」が持っている価値に何倍ものレバーをかける、グラフィックデザインとはそういうこと、なんだなぁと。

ですが、何倍のレバーになるのか、が予測できるひとはなかなかおられない、とその方はお話されます。さらにそれを発注額として具体化できるひとにはほとんど出会わないとも。
その点、いわゆるコンピュータソフトウェアは「機能要件」があるので、発注主との間でまだ容易に共通理解になる部分があります。
いざ支出するとなると「できるだけ確かな見返り」を求めるのは自然なことだとは思います。「レバー比」が1でも問題だとは思いますが万一1を下回ってしまったら、やはり非難は免れないでしょう。そこへ持ってきて、それでなくてもソフトウェア業は「元手がかかってないくせに」と言われがちです。もう目も当てられません。

さらに「業界」となると、同じ業態の事業者の集合体が価値創造について社会から一定の評価を受けていることが成立の前提になる、と思います。
ブレが大きいと、それはそういう評価になってしまう。そこは事業者側が努力して信頼を得ていくしかないなぁとは思います。

「知っていただくために、まずは持ち出し気味に仕事を請けてます」とその方は仰います。「でも、そうすると、そういう相場、になっちゃうんですよね」と寂しく笑ってらっしゃいました。
あぁ、つらいですよね。

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