他人のフトコロに手を突っ込むような行い

「ゾンビ企業は潰れろ」に中小企業の社長が反論 「みんな安く買い叩くことしか考えてないくせに」 (msn.com)

刺激的な文言を表に出してビューを、インプレを稼ごうというのは「言論を他者に依存すること」とか「プラットフォーマーの社会的責任」とか「企業の社会的責任と、その応分の負担」とか、そういった「シンプルではない」課題の上で表に出る事柄なので、単に「目障りだ」と片付けるわけにもいかないことなのですが、引用した記事の取り上げている内容を考えると、このタイトルは不要なところで「理解と共感」を阻害して問題の解決を遠ざけるのではと危惧します。
「安く買う、から賃金が上がらない」のか「賃金が上がらない、から安く買う」のか、これはそれぞれの立場のひとが言い出したら水掛け論になってただ分断と対立を生むだけの不毛な議論の代表例だと思います。ですから、一方の”当事者”が(他方を指して)「安く買いたたく」と”言った”としてことさらに表に出すのは良くない、しかもこの記事では企業間取り引きのことを指しているわけで「みんな」と言うのも良くない。
こうした恣意的で煽情的な「バイアス」を読み手の方々が情報に触れる過程で修正して受け取ってくれていると期待したいです。

さて。この記事の中にある、発注元従業員の「うちの賃上げは今年3%なんだけど、おたくにそれを超える賃上げは許されないですよね?」という発言、もしこれが事実で「常識」だとすればとても恐ろしいことだと思います。私自身はこのようにはっきり言われたことはありませんが別な言い回しでは「人件費上昇は値上げの理由にはならない」とは何度も言われます。私個人としては「(一般論のような扱いで)おたくの人件費のことは値上げの理由にはならない」というのは、そう仰る方ご自身もそうしているなら一貫性のあることかとは思います(実際にはそんなことはないわけですけれど、監査のしようがない)が、前者をしかも被雇用者の立場の方が仰ることに恐ろしさを感じます。資本の親子関係か何かが存在してそういうならまだわかりますが、単にサービスを受ける/提供する、製品を購入する/供給するの関係に過ぎないのに「ウチが上げてから、おたくが上げる」「ウチの上げ幅を超えない」という、「経営専断事項」に踏み込んだ制限を要求する…所属する組織の経営・執行管理の立場にある方の承認を得てやっていることなのでしょうか。恐ろしい。

先日当社も行政機関の聞き取り調査を受けました。弱い立場にある「供給側」の実態を把握しその支援に資するものと期待してお受けしたのですが、実際には「中小企業のいっそうの経営努力(価格転嫁)を促す」もので少々がっかりしたことは記憶に新しい。
さて、前述「人件費は値上げの理由にはならない」はそう求める側も自身がそうしているなら一貫性がある、ということについて。
「とはいえ」ソフトウェアを事業の根幹とするものとして、この日記でも通して述べているように、イマを「ソフトウェア経済の時代」と見て「ソフトウェア的な支出(人件費)を”資産”だと認識する」ことが、この国の経済基調をこの30年の下降・停滞から発展に転換すると考えるなら「値上げの理由にはならない」という主張は受け入れられません。これまでも、これからも、お客様とは丁寧に対話して理解と共感を得て、少しずつだとしても着実に成果をあげていきたいと考えています。

「うちの賃上げは今年3%なんだけど、おたくにそれを超える賃上げは許されないですよね?」
理屈と膏薬はどこにでも引っ付く、とは言いますが上記のような理不尽な話が良質なものに相応の価格が付くこと(市場原理)を阻害しているように思われます。

こうしたことと向き合って、供給者側の努力はもちろんですが「応分の負担」をする社会通念を期待したいものです。

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