やまとしうるはし

半年に一度の大会合のため奈良に滞在しています。
高校の修学旅行以来の滞在で、あちこち新鮮な驚きに満ちています。
とくに会場の奈良県コンベンションセンターとその周辺は、古都奈良の文化的な遺産をさらに未来につなげていこうとする意志のようなものが感じられて感心しました。
コンベンションセンターはとても素晴らしい建築なので建築好きの方はもし機会があればぜひ訪れてみたら良いと思います。
そういえば、昨年の長崎もそうでしたが地方都市の会議・宿泊複合施設の開発整備には目を見張るものが多いですね。当地にも中島公園付近に大規模な「MICE」再開発計画があったと聞いていましたが、市の専門部署や策定された戦略ってどうなったんでしたっけ。当地には、この会合を誘致できるだけの収容力のある施設がいまはないのですよねぇ。そうしたところに地域の経済力や経済振興の方針・政策のようなものが垣間見えます。

さて、JANOG54 Day1からのメモ。
1.
「CDN」がイマドキの伝送に欠かせない存在だということは言うまでもないことなのですが、それを知っていてなお、その影響力の大きさに驚かされます。
もう長く問題になっていて一部運営者は裁判で有罪にもなった「ある違法配信」にも、CDN層での対策がとても効きそう、という話がありました。
電気通信事業法の「壁」がありそうですが、一方で「越境」の話もあるので、一般的に「世界規模」展開のCDNが対策するということには「調整・制度整備・制度解釈」の余地がありそう、ということですが、とにかくCDNの影響力の大きさをあらためて痛感しました。ICT全体のUI/UXをデザインする際に考慮の欠かせない存在ですね。

2.
ここ数年、noteに日々雑感を記してきて、いわば考えが整理された範囲が広がった、深まった、みたいなところがあるのですが、そのひとつに「通信業界のソフトウェアエンジニアリングのありよう」があると個人的には思っています。こちらをつねづね読んでくださっている方にはおわかりとは思いますが、通信業界はソフトウェア開発に対して相対的に淡白です。そのため私たちのような「ソフト屋」から見ると、一部に「え?」と思うほど話が通じない分野があったりしてときどき驚きます。
今回「whois」という、元は「便利ツール」だったものがいつのまにか「レジストリサービスの一部」のような扱いを受けていて、そのため「問題」として話題にされてしまった話がありました。壇上から「whoisのプロトコルを知っているか?」と問われて、「え?プロトコルなんてあった?」とちょっと驚いたのですが、RFCもあるのだとお聞きしてさらに驚きました。中身は、whoisという、いくつか異なる実装のあるツールの「追認」RFCとのことで、ある意味予想通りでしたが、それくらい「草の根の、便利ツール」、それ以上でも以下でもないものだったのです。
だから、whoisにはそれを考慮した「データ構造」なんてハナから無いんです。そこがwhoisという「コマンドの、実行結果に期待できること」の限界なんです。
それを「レジストリサービス」にまで昇華させようとするなら、問題の根幹であるデータ構造の、まず定義から、しなきゃならないし、現在のレジストリのありようからそれが可能かどうかを論じたり、またwhoisに現場の業務をどこまで依存するかを考察すると良いと思うのです。
このセッションに集まった数百人の方々に、きっとプログラム委員から期待されていることは、レジストリコミュニティに対してそうした「データ構造の策定の要請」圧力をかけることなのでしょう。ソフト屋からすると、その「明瞭な文言」が示されないことにモヤモヤを感じました。

3.
感染症騒動明けからポジモのお引き合いが堅調です。騒動前同様アプリケーションはさまざまですが、明けてことの進め方はちょっと進歩していて、まずそれらの協働の様態をそれぞれ検討して明瞭にし、持続的なサービスとなる要件構造に要素を配分することをこれまでよりも重視しています。提供後も想定の持続性が保たれているかを見ながら、得られた知見を次の事案へフィードバックして「検討」方法や「構造」を更新することは当然です。
中に「フィールド(動画)カメラ」用途も根強いものがあるのですが、やはり進歩するもので騒動前とはかなり様相が変わってきて「ポジモを使ったシステムの適用範囲が広がっています」。そうなるといくつも改善要望が出てくるものです。
この会合にも少数ながら「IT屋、ソフト屋」の方々は居て、似た者どうし、大人数の中でも顔を合わせて話ができるのですが、この「改善点」について相談したところ、開発の検討をしてくださる由、また当方で取り組めそうなことを教えてくださって、たいへん有意義でした。もう、今回の会合はこれで収穫十分、と思えるほど(笑)。

「違法配信」対策のテーマで、この会合の、年に一度壇上に立たれる方は、当社の主力ソフトウェア製品の事業でもたいへんお世話になってきている方なのですが、慰労会のあと夜も深くなって宿に戻ろうとしていたところコンビニの前でばったり会いまして、違法配信周辺の会合では触れられていなかった話を教えていただきました。
「金融」なお話しでしたが、とにかく、あらゆる側面から「違法・権利侵害」の利用に対して向かわなければならない、という強い意志、使命感を感じました。
事業は、社会的なものだとあらためて思いました。

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