ソフトウェア的なものの分離について

日記に記しておきたいことが山積の一週間でした。まだ残っているのでタイトルだけでも書いておきます。

  • 下請法に基づいて日産自動車に行政指導(公取委勧告)

  • 新千歳空港でOpenRoaming

  • テレビ用OSの独禁法違反について公取委の指摘

これらの話題を後に回して今日は下記の話題の、日頃考えていることとの接点について記しておきたいと思います。ちょっと込み入っているような気がして書いておかないと忘れてしまいそうなので。

今朝、建設業界のITを用いた省力化(人手不足対策)を取り上げたニュースの中で、この仕組みについて初めて知りました。
日頃、こちらの日記に記している「ソフトウェア時代と旧来の経済・社会システムとのひずみ」の観点で、この仕組みの気になるところを、急ぎでこれもまた箇条書きで記しておきます。

  1. 「公共工事」の唯一の発注者である行政がその"受注"にとって「とても大きな優位性になる」”ポイント”の付与を介して、本来優位性形成のための企業努力の主軸ともいえる「開発投資」ひいては知財形成、またその原資の獲得に介入することは、正負いずれの効果を持つのか

  2. この仕組みは、取材時の建設業当事者のお話によれば「中小企業の、開発投資の難しさ」が背景にあるとのこと。つまり収益業務をこなしながら開発投資(とくにバックオフィス業務に近づくほど難しい、と感じます)を実施するには人手、時間、資金でたいへん苦しいのはわかります。ですが、これは中小企業に限った問題ではありません。大手はたしかに「開発部門」を持っていますが、それは「開発委託案件を管理している」部門で実際の開発は、おそらく過半を外部業者が行っていると見ています。ITなどソフトウェア分野ならなおさらです。つまるところ、この仕組みは本業にとっては「外部不経済」であるソフトウェア開発を「誰か」が負担しそれを共有するための仕組み、だとも言えます。では、資金的な負担はこの仕組みで担保されるとして実際の開発は誰が負うのか、という視点で考えられているのか

  3. 上記のとおり「ソフトウェア開発」は外部不経済として扱われているのですが、ソフトウェアはハードウェアよりも保守(日頃の更新)の手間のかかるものです(じゃぁ無きゃ無いでいいよ、というわけにはいかないのが「ソフトウェアの時代」です)。この仕組みで「開発(初期投資)」そのものを共有にして賄った場合、保守はどうするか、となれば「オープンソース」化が念頭に浮かびますが、この日記にも再々触れているようにオープンソースソフトウェアはそのコミュニティ形成や運営の手間など決して安価に済むものではありませんし、それらの主たる活動原資は「善意」に依存しているのが実情です。持続性をどう考えていくでしょうか

  4. 先日「運用の自動化」の件でも触れましたが、「本業」との分離・ソフトウェア的なモノのブラックボックス化を促進するということは「高度な抽象化」の方向です。これは「内製」しないと難しいことになります。さきほどの保守の話とも通じるのですけれども、重層的で役割が細分化している中でこのような抽象化を進めて、しかも外部化するのであれば、その「外部」の持続性にも業界全体が依存します。ならば結局「内製」「業界内部への取り込み」へ進んだ方が良いのではないか、という気もします。

望ましいのは本業をもつ事業体が「ソフトウェア的なもの」を本業価値として投資できる事業環境を整備すること、のように思われます。建設・土木業だと公共工事が事業に与える影響は小さくはないのでその受発注メカニズムに「ソフトウェア的なるもの」の評価が適正に組み込まれると良いのかもしれません。過渡的な経済政策といえばそうなのかもしれませんが、一度ついてしまった慣性というのはなかなか抜けないものではないでしょうか。ある日急に「今日から、ソフトウェア的なものに価値を認めて、評価に組み込んでいきます」とはならないような気がしますし、むしろ今日取り上げたような一面「分離」的副作用を持つ施策やその対応が浸透するとなおさらそうした「評価基準の転換」はしにくくなる、つまり「ソフトウェアを経済指標とする」社会への移行が遅れるかもと懸念します。

ところで。いやぁ、静岡県の県章、というのでしょうかロゴマーク、いいですね。
とくに駿河湾が波頭になっているように見えて、駿河湾や遠州灘の明るさを想起させる、地元愛が伝わる感じが良いですね。私も仕事や旅行で静岡に行くのはいつも楽しみです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?