デスマーチの一因、「ゴールを動かす」こと

日頃から、私の事業の定義のひとつに「ソフトウェア開発」をあげていて、ソフトウェア開発業を、その利用者の方々はもとより従事者の方々も含め、関わるすべての方がより充実し豊かになって、社会が発展するよう事業理念を掲げています。
事業管理者・責任者のシゴトの一環として、先日は中小企業庁の調査官もお見えになって「取り引きの適性化に向けて、経営者はもっと努力しろ」と言外のご指摘をいただいたところでもありますし、この日記を読んでいる方には私が以前から適正化はつねに心には留めているとはご承知かと思います。
今日は、先日引いた記事をとりあげて、そのことにちょっと触れたいと思います。

先日、「官製デスマーチ」という単語の使われている記事を引きました。
これは少々行政の方々には厳しいモノ言いだとは感じます。
行政は、法令等に定められた手順でのみ業務が行われるものなので一見システム化ソフトウェア化に向いているように見えます。
が、実際には「年に一度は細部のパラメータやその処理方法が見直され」たり、政令見直しや閣議決定などにより「唐突に」準拠元のレギュレーションそのものが変更になることもあって、実は「頻繁にゴールが動く」システム、というのが長くこの業界にいて行政関連のシステム開発について思うことです。
これは、そもそもの需要、”行政手続き”が「文字通りソフトウェア」なのだからしかたありません。ハードウェア的な資産形成に比べて要件の流動性が高いことに起因していて、宿命的なのでここをなんとかしようと思うのは本末転倒ですし、やめたほうがいい。

「発注」「受託」という関係性で開発を行う場合には契約にゴールを明確に定めることがごくごく一般的です。そうなると契約時点でゴールが決まっているのでウォーターフォール型になります。「頻繁にゴールが動く」ルールの下でウォーターフォール型の戦術は、まぁ、有利な戦術ではないんですが、かといって「アジャイル」などと言ってはいけません。これは持論ですが、アジャイルは「内製」に用いる開発手法です。しかも、アジャイルだってゴールは設定するんです、しなきゃまさにデスマーチ確約の開発手法です。

内製を委託、するならば「お抱え」開発組織が必要です。
これを外部組織(企業)に委託するなら、期限と、委託(就労)条件を厳格明瞭に定めた契約に基づいて「成果物にはゴールを定めない」開発体制を選ぶことになるでしょう。準委任契約などと呼ばれることがあります。
準委任契約、は「人材派遣」契約になりがちです。
こう言ってしまうのは何ですけれど、人材派遣業はソフトウェア開発業ではありません。事業の知見がまったくことなります。所管も厚労省と経産省とで異なりますし。
少なくとも、私にとっては私の携わる事業には、「成果物(コンピュータソフトウェアやシステム)の質を担保する」ということが重要な一部を構成しているのですが、人材派遣ではどのようになっているのか、寡聞にして知りません(派遣を依頼していたこともありますが、知らないことにしておきます 笑)。

行政とのお取引、は業界でも民間企業間取引のサンプルにもなる重要なものです。
「適正化」の指標、事例になって欲しい、というのが正直なところです。
「官製システム・ソフトウェア」に関しては、期間限定、外部組織への委託でも良いので「(準)内製」のチームを、しっかりとした身分・処遇を保証して構成するのが良いと考えています。
「(開発)業務」のみの切り出し委託ではちょっと無理があるかなぁと思います。
一言付け加えますと「頻繁にゴールが動く」というのは、ここにもたびたび記しているとおり、「保守がソフトウェア業の本質」ということでもあります。
サービスの寿命を見極めて「ゴールが動く」期間に応じた適切な「(内製)コスト」をみておくこと、ソフトウェア時代の社会で一般的に認識されて欲しいことだなぁと思います。

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