カネは恐ろしい…

シリコンバレーバンク(SVB)破綻の報道が目立つこの頃です。
これを1997年の北海道拓殖銀行破綻が北海道経済に及ぼした影響になぞらえて特定業種に限ったものではなく地域に広範な影響があると警告するひともいるようです。
スタートアップ企業あるいはテックベンチャーにとって資金調達はたいへん重要だということは身に染みてわかるのですが、事業家にとっては決して好ましい話ばかりではないのはもちろん、「呉越同舟」「同床異夢」でなんなら「食うか食われるか」だなぁと思うのです。

出資、ではありませんが融資にしても、経験上、する側される側は「同床異夢」です。
融資も出資も同様ですが、する側も収益事業でやってますからされる側はする側にとって利益になることが条件ですし、利益にならなさそうになると根も葉もすべて刈り取っていきます。決して「支援」といったキレイゴトではありません。

2000年代、当社にもVCの方がみえて「上場と出資の話」をしていかれました。
当時彼らは同様の「インターネットスタートアップ」を回ってらしたようです。いまと異なり当時のインターネットスタートアップは「サービス」ではなくて伝送関連がほとんどだったように思います。サービスを事業化するにはそもそもインターネットのユーザー数が少なかったのでしょう。まだ普及期にあって「インターネット」そのものを商品のように扱ってひとりでも多くの人に届ける、という時期でした。駅前で「ADSLモデム」を「インターネット、要りませんかー!」と言って無償で配っていた時期です。
ですからVCの方も当社の事業内容なんか全然ご存じなかった。とにかく「上場してEXITする意思があるのかないのか」それを確認するためだけに回っていたような感があったころです。
そのころ私は志向していた事業に最速で資金を集め最短距離・全速力で立ち上げる、とは思っていませんでした。通信業界と資本の関係がまだ十分にわかっていない未熟者で事業プランの構想と業界の様子見をしながら通信業のソフトウェア開発をしていました。ソフトウェア開発の商売はそこそこ順調でしたが、そちらは資金を調達して「食うか食われるか」を背負う事業なのかは見通し切れずにいました。

2010年代になって、いよいよ通信業界の立ち位置として事業の姿が見えるようになってきたとき、VCの方々の関心は「サービス」に移っていました。インターネットという国境のない新しい事業環境は、文字通り「フロンティア」である意味「なんでもあり」でした。いまとなってはコンプライアンス的に難しいことも当時は法整備が追いついておらず、雨後の筍のようにいろいろなビジネスが興りました。毎週のように「ピッチ」会が行われて、世界の著名な投資家・VCが地方都市の小さなピッチにも訪れていました。
当時私は資金調達意欲があったのでそこでいくらか彼らとも直接話をしたものですが、その時期は彼らの方が当社の志向する事業には関心がなくなっていました。
私の姿勢もちょっと前のめりで、もしあの時に運よく資金調達できていたら、かえって危険だったかもしれません。

いまは、「カネ」の恐ろしさが身に染みているので(笑)無闇に資金を集めようとは思いませんが、」この方となら、食うか食われるか、でも後悔しないだろう」と思える方の「カネ」を求めて、つくってみたい未来はあります。
ちょっと言葉にするのが難しいですが、もちろん以前のような逡巡はありませんし、危険と正対することができる気がします。

事業にとって、カネは恐ろしいものです。
SVBの件、とくに乱脈融資といったことではなく、利上げ政策から試算表の悪化そして取付騒動による破綻と聞いています。
連鎖も懸念されます。過失のない方々が救済されると良いなと思います。

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