客体ではない、一緒につくる

経営者には、もしそうでなければ向き合わなくても済む困難がたくさんあります。経営者の先輩諸氏には経営・執行責任者を下りて被雇用者になった方々も多くいます。そこにはいくつもの経過・経緯があるのですが、ご本人はおしなべて肩の荷が下りたご様子なのが印象的です。

さて、起業家はたいてい事業家と経営者を兼ねているものですが起業家の動機としてよく言われることは「どういう世界を作りたいのか(What)」というもの。
誰しも起業家の胸にはそうしたものがあるでしょうけれども、それをどのように実現するか(How)には、それぞれにまったく異なるイメージがあったり、比較的頻繁に変化したり、執行組織の形成の初期段階から適切に扱われる例はそれほど多くないように思います。今日はそのHowのお話し。

起業家・事業家が思い描く「(新)世界」を生み出すために、絶対に必要なのは「顧客」です。企業というカタチを通じて新しい世界を生み出そうとする限り、商いとして成立してはじめて可能になるわけです。(もしかすると、企業を事業と置き換えてもあながち間違っていないかもしれません)
ご本人が知覚するか否かに関わらず、お客様も「事業家の思い描く世界」を生み出す最も当事者性の高いパートナーなのです。お客様と二人三脚で生み出していると言ってよい。
執行局面では顧客は文字通り「客体」として捉えられ、財を交換する姿からともすれば利害の向かい合う関係と考えられがちではないでしょうか。セールス(販売)の数字を積み増していこうと分析などしていくとどんどん自分たちから離れていってしまったりしませんか。

当社のサービスや製品を選んでくれて、利用してくださっている姿、それが社会に溢れる、あるいは少数でもその影響が周囲に波及して「思い描いていた姿(What)」に変えていく、結局のところ事業の目的はそのように(How)してしか達成されない。
意外とシンプルなことですが、忘れられがち、ではないでしょうか。

執行組織において「お客様だいじに」が軌道を外れて「主客転倒」を起こす、ということがママありがちです。むしろそのほうが「会社(執行組織)」は存続しやすいかもしれない。ですが、そこそこ長くなってしまった事業責任者・管理者の経験からすると、それは「What」を生み出すためには遠回りの場合が多いように思います。
まぁやむなく遠回りするということも経営上はあるわけですが…。
ですが、そうした場合にこそ、理想的なありようと遠回りが手段であることを忘れずに、より良い "How" で、目指す ”What” を生み出すよう、とくに管理者は視野を広く視界をクリアに持ちたいものです。

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